21話 侵攻
今日も今日とて、屋敷の中庭の花達はいい季節感を俺達に知らせてくれる。まあこの国年中春なんですけどね。この世界は地軸のズレがないのかも。
「あれは得難い経験でしたわ。あの血の感触。興奮してあの夜は眠れませんでした……」
「あ…、え…はい……」
「今度は貴方も一緒にやりましょうね!」
ぽかぽかとした気温の中、俺の耳に入ってくるのは『あそこに美味しいお店ができたの♡』みたいなノリで繰り出されるグログロの話題だった。
「…機会があれば」
「そう? なんだか乗り気じゃないのね。大丈夫よ貴方なら。私達でこの周囲の盗賊を皆殺しにしてやりましょう」
「っす……」
この女やべぇよ……。あのナヨナヨヤンバトを返してくれよ…。
最近仕入れた“自慢話”を聞かせてくるのは久しぶりにやってきたヴィクトリアだ。
俺のお出掛けとカメレオン襲撃がいろいろと重なり、俺の体調もやばかったのでここしばらくは会っていなかったのだ。
ちょっと会わない間に、吹っ切れすぎだろ。夏の間に卒業しちまったか。
「あの絶望顔……。また見たい……」
「もう帰ってくれる?」
「えっ…?」
トリップし始めたので帰宅を要求。驚いた顔で固まるヴィクトリア。ちなみに俺の態度は命令を解除されてないので、フツーに接している。なんか気にしてないみたいだし。
一回恭しくしたら、すんごい泣きそうな顔されたからな。
「病み上がりでそんな話題聞かせんなよ。吸血令嬢」
「面白い表現ですわね。吸血令嬢ヴィクトリア……ふふふ」
「嘘だろお前」
喜ぶのかよ。もうコイツ逮捕しとこうぜ。はい逮捕ー。
「なんですのコレ」
土で作った手錠を嵌めて座らせる。気分は刑事だ。向かい側に座った俺はシリアスな表情を作る。
「お前さんにも理由はあるんだろうさ…。まあコレ飲め」
「またなんか始まりましたわね……」
すっといつもの茶を差し出すと、普通にヴィクトリアは飲んだ。ちげぇだろ!!
「お前にもカミさんがいるんだろう…。そんなことしてちゃ親が泣くぜぃ?」
「どういうお話……? どうして私につ、妻が? 親は…まあ嬉し泣きはしてくれるでしょうけど」
あっ…そうですか。流石にまずいので即手錠を解除。いそいそとバッグに戻した。
「なんだったの……。というか…いつ言おうか迷っていたのですけど、よろしいでしょうか」
そう言ってヴィクトリアは俺の後ろに立つ存在に初めて触れる。
つまらなそうに突っ立って、もてなしの一つもしていないポンコツメイド、フィフである。
「誰ですの?」
「生き別れてた姉」
「──は?」
「名前はフィフ」
「えっあの……ちょっと待ちなさい…」
「一番苦手な家事は料理です」
いてっ。後ろから蹴って来やがった。
「姉妹共々この屋敷でお世話になっております」
「えぇ……?」
脳の処理が追いついていないようだ。フィフは無愛想を貫いている。なんか喋れや。
「ええと…フィフ?」
「…………」
「? フィフ?」
「…………」
おい、何してんだこの無機物。
困惑して俺に助けを求めるような視線をヴィクトリアは向けてくる。
『おい馬鹿。なに無視してんだよ。お貴族様やぞ。媚びっとけよ』
『意味がわからない。そもそもこの女は何? 気安い』
『俺のダチでこの国で偉いヤツのお嬢さんなの。頼むよ表面上は仲良くして! 無礼討ちされちゃう』
溜息をついて、仕方ねえなみたいな態度でやっとフィフは喋った。
「フィフです。よろしく」
「よろしく、フィフ。まさかリエーニに姉がいたとは思わなくて驚いてしまったわ」
「そう」
「リ、リエーニ……?」
飛び出してきたのはとんでもねえ態度と言葉使いだった。ババア! 全然教育できてねえぞ!
なんでこんなに冷てえんだよ。カーティスさんとかには一応は話してたじゃん…。
「姉ちゃんは、絶賛修行中でね…? 大目に見てくれると…嬉しいなって……」
「さすがは貴方の姉ですわね……」
えっ。なんかすごい納得されたんだけど。
「生き別れたと言っていたけど、どうやって再会したのかしら。そう言えばリエーニがどこ出身なのかも知らないわ。ちょうどいい機会だからお、教えて欲しいわね」
うわ。めんどくせえな…。
『どうする? 姉ちゃん』
『こんな獣みたいな妹はいらない』
『あ?』
『テキトーに話を合わせる。なんでもいい』
お。じゃあ好きにしーちゃお。
『……やっぱり私が言う』
は?
「私とコイツは武帝国の戦闘奴隷出身。父親が違う」
「ああ…」
えっ、設定結構エグくない? ヴィクトリアの視線がめっちゃ優しくなったぞ。
「父親は知らない。戦争中のゴタゴタで脱走した母親がこの国まで逃げてきた。そして死んだ」
武帝国はかなりのカースト社会らしい。その分力があれば成り上がりもしやすいようだが。
……なんかリアルでやだな。
「脱出する時に私は逸れたけど、この屋敷の人のおかげでリエーニと合流した」
「そうだったのですね……」
『どうすんだよこの空気』
『どうもしない。このまま黙っていればいい』
安売りゾーンにずっといたお前と一緒にすんなよ。こちとら会話の間がだいっ嫌いなタイプなんじゃい。
「まあ聞かされるまで俺は知らんかったけどね。母ちゃんの顔も覚えてないし」
「リエーニ…」
その顔やめてよ~。俺の一番キライな顔だよ~。
「うっぜえな。テメエに憐れみの視線を浮かべられんのクソむかつく。棒読み音痴が」
「なッ!? 貴方フィフのこと言えませんよ!? よく“コイツは大目に見てくれ”なんて言えましたわね?!」
たまにカラオケを一緒にするのだが、コイツめっちゃ下手。いやまあ練習すりゃあ上手くはなるだろうが、この世界には同じような歌がないようなので上達は難しい。
「フフ……。音痴が貴族を名乗っている。滑稽」
「姉も姉で……ッ!? 不味いですわね……。私の精神が保つかどうか…」
愉快そうに煽るフィフ。ちなみにコイツは試しに歌わせてみたらクソ上手かった。なんでやねん。
なので、結構歌唱会を寝る前にやってる。楽しい。
「そんなに言うのでしたら、歌ってみてはどうかしら? 私よりも歌えるの!?」
そんな叫んでたら喉死ぬぞヴィクトリアちゃん。
「嫌。貴方に聞かせる必要性を感じない」
馬鹿野郎。だからなんでそんなに今日は反抗的なんだよ…。
「……。あらそう。なら貴方はずっとそこで立っていなさい。ではリエーニ、一緒に歌いましょう」
えっ、いいの? いつもはあんまりやりたがらないのに。上機嫌か?
なあに歌おっかなあ。
「ふふふ…。後から出てきて生意気ですのよ」
「…………。このメス…」
近所迷惑にならないように遮音魔法を展開。疑似ミラーボールと雰囲気だけのマイクセット!
今からなら10曲はいけるな。
「それになんですかその無様な剣は? 護衛のつもり? 奴隷ごときがあの子を守れるとでも?」
「雑魚がいくら吠えても空の月の耳に届くことはない」
歌詞の翻訳は済ませてあるぜ。俺の言語能力もだいぶ上達したな。まずは一回歌って見せて覚えてもらいますか。
なんならフィフにはエアギターしてもらうか?
「…………これからよろしくね? フィフ?」
「…………不要。先程その挨拶は終えた。記憶能力に乏しい貴方とは違う」
「────」
「────」
おっしゃ。やるか。
久しぶりに平和なんじゃ~。
◆
彼女は処理をする。
それを詳しく説明するのなら、移動して対象の近くに寄って剣を振る。それだけだ。
それが通用しないモノには魔法を使う。といっても細かい作業は苦手なので、純粋に集めた魔素を叩きつけるだけだ。それだけで大抵の魔物が壊れていく。
群れている魔物がいればそれらを巻き込むように魔法を撃ち込む。負傷した魔物程度なら他の騎士に任せても問題無い。
粗方処理を終え、次の場所へ飛ぶ。その方法も重力に魔力で無理矢理干渉する乱暴な魔法。
到着しその場の魔物を処理していく。
それらに種族はあるし、個体による違いもあるが、もうそれを意識する事はない。
「助かります! さすがはエルヴァリス様!」
必死に魔物の襲撃を抑えていた兵士の一人から声を掛けられる。それに笑顔で返すと、エルヴァリスは次の場所へ飛んだ。
(止まない。今夜はいつにも増して敵兵の数が多い。嫌がらせの範疇を超えてる)
視界に広がる戦場の光景は、先の大戦には及ばないものの充分軍と軍の争いであった。向かおうとしている砦が落とされかけている。
(あちゃー。指揮官逃げちゃったかな)
残った兵士が砦内に侵入した軽装の魔族を倒し終えると、絶望の表情を浮かべる。何故なら、遠くから更に敵の増援がやってきたからだ。
(キリがないなぁ……)
魔物は基本的に魔族に従う。そして、魔物を作ったのは魔族だ。
自己繁殖能力に優れ、群れとしての強さは人間に引けを取らない。違うのは魔物は思考能力が低く、魔族が強制的に操っていることだろう。
その違いについては“どちらも変わらない”とエルヴァリスは常々思っているが、どうでもいいことだ。
着地と同時に魔力を破裂させ、やってきた敵の援軍を吹き飛ばす。魔物の統率個体、人間で言えば部隊長にあたる個体を処理し、混乱した他の個体は一斉に焼き払った。
「私が掃討します! 負傷兵の手当を優先してください!」
「エルヴァリス! 英雄だ!」
「助かった!」
「やっちまってくだせえ!」
教会より与えられた“剣”を掲げ、激を飛ばせば人間達の士気が回復する。
『神尾ナムンカーラ』。四選英エルヴァリスだけが所持を許される神芸品である。その刀身から放たれる魔力の輝きは、人間であれば誰もが知っている。だからこそそれを持つエルヴァリス個人の証明となる。
一々名乗る面倒を省略できるので、エルヴァリスはこうして無駄に光らせることが多い。
まだ、敵の数は減らない。エルヴァリスが担当する場所は、交戦箇所全土。それを疑問に思われることはない。そういう働きを彼女はしてきたのだ。
(間に合わないなあコレは…)
エルヴァリスは当たり前だが、一人の人間だ。彼女が百を処理する間に、他の場所にはそれ以上の敵がやってくる。
全人類が彼女のように強くは無いのだ。
その夜は、今までの攻勢とは何かが違った。境界線に居座る魔族は何か考えがあるのだろうかと疑問に思う。
次の場所では人間の兵士がほぼ壊滅していた。進む魔物を処理していく。
相手の動きは考えなしの突撃。このままでは全戦力を失うだけだ。
確かにこちらに大打撃を与えることはできるだろう。しかし、あくまで人間領域の三カ国にダメージを与えるだけだ。これらの国も境界線を守るだけあって強大だが、列強は他にいくらでもいる。
消耗した三カ国をその隣の国が吸収し、また領土を魔族から奪い返して終わりだ。喜ぶ人間の方が多いかもしれない。
兵士達の悲鳴が聞こえる。可哀想に。戦場を知らぬ新兵ばかりだったろうに。エルヴァリスは膨大な魔力を消費し、大斬撃を飛ばし兵士達の退路を確保する。
「撤退を! 南の砦は落ちていません!」
エルヴァリスは防衛戦が嫌いだった。好きに動けない上に、全て自分のせいにされる。文句があるならどうぞこの手に持つ剣を使ってほしい。
こんな破壊するだけの力で何を守れと言うのか。
(やっぱいやだなあ…最近の戦いは)
少し大きな個体を両断する。それは百年に一度誕生する相手の種族の王だったが、エルヴァリスに違いがわかるわけもなかった。
「わあー……。本当にどういうこと?」
思わず声に出る。次の場所に向かおうと思い、先に広がる敵戦力を見てのことだった。
今まで処理してきた反対側にも敵の増援だ。
獣人、爬虫類人、四脚型、蟲型。魔族の地上戦力と呼べる種族たちがゆっくりと進軍している。その表情にはなんの覇気も無い。
「本当に全滅する気? 特攻?」
相手の魔族の指示は明らかな玉砕。今この状況でそれを行う意味が推測できなかった。
エルヴァリス以外の兵士達には絶望が広がっていた。呆然と若者たちはその光景を見つめた。
大戦を生き残った者達が必死に命令を飛ばすが、体が動かない。
「また戦争が始まったのか……?」
「どういうことだ!? 魔王は争いを好まないんじゃなかったのか!?」
「コンタキドルク卿! どこへ!?」
「私は首都に戻り、指示を仰ぐ! 諸君らは引き続き防衛を続けよ!」
作戦本部の城ではいつものくだらない風景が広がっていた。
「“一部の過激派が暴走したことを謝罪する”と、そう言っていたんだぞ!? なんとかしてくれるんじゃなかったのか!?」
魔王を、魔族を頼る。
こうした考え方は一部の人々に広がっていた。
『戦争を終わらせたのは魔王アルテである』というものだ。彼女が交渉の席を設けなければ人間と魔族は共倒れしていたと、そう認識している人々は戦いを経験していない市民達に多かった。
皆、戦争で貧乏になるのが嫌だったのだ。
「何を言っている! 魔族の言葉なぞ信じてどうするのだ! 指揮を取れ!」
「うるさいッ!! ええい! 最後の四選英とやらは何をしている! ここを守るように言えッ!!」
戦場ではなく遠くの一室で争い始める男達。そうしている間にも魔物の大群の進行は止まらない。
(……『解放』、は駄目よね…)
また百以上の処理をしながら、エルヴァリスは前線で思考する。
彼女の持つ剣の力を解放すれば、余裕でこの状況を打破できるだろう。しかし、その力はこの土地そのものに被害を与え、永い間人間が住めなくなってしまう。そういう力だった。
──また楽しめない。
考えるのは他人のことばかり。ただ敵を倒すための算段をして、相手の命を終わらせる。それだけの戦いができない。
それに怒りが湧く。
周りに人間のいない独壇場。まさに主役だ。味方も敵もいない。本当にくだらない戦いだ。
「!」
突如として、魔物達の悲鳴が別方向から響いてきた。人間のいない方向からだ。魔物達は自分たちの“後ろ”から攻撃されたのだ。
(あぶなっ!?)
その方向を爆心地として、突然熱風が吹き荒れた。
【ローゲンス・エクスバーグ】と呼ばれる爆発魔法だ。水系統の、扱うのが危険な『教継禁止』に属する魔法である。
そして、それを扱えるのは今の世界に一人だけ。
「久しい感覚だ」
爆発の後には、舞い踊る血肉と水蒸気があった。その向こうから響いてくるのはエルヴァリスの知っている声。
「……やっぱり生きていたのね」
「“やはり”? くくく、四選英にそう評価してもらえるのは喜ばしい」
現れたのは軍服の女性。その軍服は武帝国で戦時中に使われた特注品。そして、もう二度と使われることのないものだ。
「そう警戒するなと言っても無理な話か?」
「…………」
エルヴァリスは剣をその女性に向ける。何故なら彼女は“敵”だからだ。
かつて、『十五傑』に数えられながら、魔族に従うことを選んだ裏切り者。
「安心しろ。私の標的は魔物だ」
「どういうこと?」
聞き返すと、その女性は顎で“向こうを見ろ”とジェスチャーをした。警戒はやめずにその方向を見ると、蹂躙される魔物達の姿があった。
「な、なんだ……?」
「援軍……?」
他の兵士たちも気付き始める。誰かが自分達を助けてくれていることに。
こんな絶望的な状況で一体誰が。そんな考えが彼らによぎる。
「ハアアアアアアアアアアッ!!」
巻き上げられた魔物の体が次々地に落ちていく。魔物の群れを力で突っ切っていくのは蟲人型の魔物だった。
魔物が魔物を殺していく光景は異様だ。兵士達は呆然としてその場に立ち尽くしてしまう。
「撃ち方始め!」
戦場に似合わない子供の声が響く。その指示に合わせて銃撃の音が聞こえ、また魔物たちが苦しみの声を上げながら倒れていく。
そんな子供が陣取っているのは落ちたはずの人間の砦。その城壁には騎士鎧達によって構成される狙撃兵の軍隊が並んでいた。
その騎士達の手に握られているのは、聖芸品として知られていた特殊な武器。人間達が使用したものを鹵獲し解析、量産したものだ。
それらが空洞の騎士鎧の魔物によって使用され、次々と遠距離から魔物を仕留めていく。
「聞けッ!! 人間達よ!」
エルヴァリスと向かい合っていた女性は、魔物の集団を再び爆殺したあと声を張り上げた。
「我らは諸君らを襲う魔族軍とは別である! 我らはこの地で暴走する魔族を処断するためにやってきた者!」
圧倒的な力で魔物たちを蹂躙する彼女らを、兵士達は黙って見ているだけだった。それしかできなかった。
普通の人間の入り込めない戦いだったのだ。
「そう判断を下したのは『魔王アルテ・リルージュ』であるッ!! 我ら魔王直属の幹部はこれより諸君らと共に逆賊を討つ!! 戦えぬ者、臆病者は下がっていろッ!!」
激震が戦場を駆け巡った。
今まで敵対していた魔王軍が人間の味方をしている。
今まで味方だった魔王軍が魔物を殺している。
混乱が支配する戦場を駆け巡り、蹂躙するのは魔王軍の中でも指折りの者達。全員魔族ではない。
元武帝国十五傑第七席『銀澪壊オフィーティトナ・ヒヤーヴォレジア』。人間。
『黒耀軀プラツム』。蟲人型の魔物。
『喰心歯モードス』。精を喰らう人間に似た魔物。
それらは間違いなく魔物達を破壊し尽くす。
魔物達は先程とは違った悲鳴を上げ始めた。
“なぜ魔王様が我々を殺す?” “我々は裏切られたのか?”
人間達には先程とは違った歓声が上がり始めた。
“あの魔王が我々を助けてくれる?” “あの噂はほんとうだったのか?”
「おお、やはりアルテは平和主義者なのだ! お前達彼らを援護せよ!」
「何を言っている。魔物同士戦わせておけばいいだろ」
「何!? 助けに来てくれた者に対する態度か!? 我らの誇りはどこに言ったのだ!?」
人間達に再び“活気”が戻ってきた。
エルヴァリスはいいようの無い不安に襲われる。そもそもの原因は相手側の襲撃だったはずだ。
それがどうして相手に助けられているのか。
(あれー? これって、やられてる?)
「くくく…」
再び向き直った先にいる幹部オフィーティトナは怪しく笑っていた。
「これがあの子の狙い?」
「そういうことだ。アレは無駄な争いを好まん。残念ながら貴様との勝負はお預けだな」
「……貴方はそれでいいの? オフィーティトナ」
エルヴァリスはけっして剣を下ろすことは無い。その切っ先は常に相手に向けられている。
それを見たオフィーティトナは睨むように告げるだけだった。
「貴様と一緒にするなバケモノ。未だに戦場に生きる老兵め」
境界線での争いは人間側の勝利で終わった。──“終わらされた”。




