97話 揃いゆく役者たち
「【コンル・クリアランス】!」
教師陣がすぐさま出来上がった不浄なるもの全てに浄化魔法をかけていく。
勿論、それらは消えない。
最初の黒き槍から出来上がった不死騎士たちは教師陣の浄化魔法使いに向かって一斉に歩みを進めた。
「!?」
「チームを組め、浄化魔法を続けよ!」
雷の猛攻を受けながら、グスタフが指示を飛ばした。
そして目の前のかつては誇り高い騎士だった老人に問いを投げかける。
「あれを見て何も思わぬのか?」
「……今更のこと。元より人間なぞ惨めな存在。あれこそ我らの怒りの具現よッ!」
「よかろう。もう何も言わぬ」
その雷鳴の進みをゴーレムナイトによって相殺し、大鎚による打撃を振るう。
何度でも当たるまでその攻撃を繰り返す。
お互いに全盛期をとうに過ぎた老いぼれだ。
次第に体力勝負になる。その間に他の戦力に差が付けば、多い方が勝つ。
そんな単純な勝負になっていた。
しかし、それを崩す一撃が放たれた。
「────な、に?」
グスタフの作り出すゴーレムナイト。そして、数々の魔法陣が一瞬で解除され、塵となって消えたのである。
「カァッ!!」
「ぐっ!!」
雷撃を受け損ね、グスタフの厚い皮膚に多少の火傷が入った。
魔法の解除は不可能ではない。
誰でもできることだ。
しかし、目の前の雷を操る騎士はそんな器用な真似はできない。
さらに言えば、魔法を解除するにはその魔法を理解し、同じ技量を有する必要がある。
つまり、“この戦場にグスタフと同レベルの魔法使いがいる”ということだ。
「…………。あれか……。まったく面倒な……」
グスタフが見るのは、動かない二体の不死騎士、その内の一体。
その見た目が通常と変わらない不死騎士は、少し離れた距離からグスタフだけを見ていた。
不動のまま草原にただ立つその騎士は不気味だった。
試しにもう一度ゴーレムナイトを生成してみるが、その不死騎士が剣を前へ突き出すと、その魔法が綺麗に解除された。
「…………!!」
その間もクルモンドの攻撃は続く。
グスタフだけを見る不死騎士はそれを見守るように立っている。
人間のような動きをしていて、本当に気色が悪かった。
クルモンドと友人だとでも言うようにその不死騎士は綺麗な援護を繰り返す。
「ハハハハハッ!! 消えよ!! 古き体制め!!」
「馬鹿者が……っ!」
わかっているのか、いないのか。クルモンドはその瞳を輝かせグスタフを狙い続けた。
「グスタフ様……!」
遠くからその状況を見ていたアンリーネが支援に向かおうとする。
螺旋槍を構え、クルモンドに放った。
空気を裂き、ねじれるような破壊の一撃が向かっていく。
だが────それを斬り落とされた。
「────……」
それを斬り落としたのは騎士だ。
赤と黒の鎧。不浄の穢らわしい存在。
それは剣を構え直し、アンリーネに向かってきた。
「そんな……まさか……!」
アンリーネの混乱は正当なものだ。
なぜなら、その不死騎士は浮いているからだ。
アンリーネと同じように空を駆け、不死騎士の剣がその身に迫る。
「……っ!! なんて、ことでしょう……ッ!」
矢筒から抜き放った螺旋槍でその剣をアンリーネは受けた。
大地を離れた“空中で二人の騎士が近接戦を行っている”。
空中に浮くのなんて簡単だ。重力を操ればいい。
だがそれを実践できる者が少ないからこそ、アンリーネという戦力は機能していた。
目の前の魔物がそれを会得した時点で、アンリーネという支援砲台は役割を失う。
「この……っ!」
それがわかっているからこそ、アンリーネはその状況を抜け出したかった。
そしてそれをその不死騎士も理解しているようだった。一切距離を離すことなくアンリーネを追いかける。
実はアンリーネは元々槍使いである。
アンリーネにとって螺旋槍とは投げ槍の延長だった。
その槍捌きも並ではない。
しかし、相手の不死騎士も並ではなかった。
アンリーネのリーチのある槍にも怯まず手慣れたように対応してきた。
不死騎士のくせに綺麗な剣技を持っている。
アンリーネにとって屈辱だった。近接戦に於いて魔物と互角だという事実が。
「……っ! ……ッ!」
倒せないことはわかっている。
相手は不死騎士だ。アンリーネに浄化魔法は使えない。
だが少しでもいい。他の場所に支援を送ることができれば、それだけで大勢を立て直せる。
しかし、それすらさせてもらえなかった。
「がはっ!」
「下がって!」
やがて、一人、また一人と教師陣が傷ついていく。
敵の騎士たちはまた勢いを増していく。
「……! まずい! あの不死騎士を止めろ!」
「くそ……!」
しかもあることに気付く。
グスタフを見ていた不死騎士が仲間を増やしているのだ。
「え……? やめ、ぎゃああああっ!!」
その不死騎士は倒れた反王軍の騎士の胸に剣を突き刺し、その肉体から通常の不死騎士を作成していた。
グスタフが土からゴーレムナイトを作り出すように、人間から不死騎士を作り出している。
それは命のストックが一つしかない“雑兵”である。
しかし、浄化魔法を受けなければその命のストックは無限に等しい。
──“戦力の均衡は崩れた”。
ここから始まるのは如何に散るのかというドラマ作りだけだ。
「うっ……く……!」
純粋に強い不死騎士の剣がアンリーネを追い詰めていく。
彼女の焦りがその動きを弱くしているのだ。
あともう一つ、大きな戦力が味方に欲しい。
「取ったッ!!」
「ちっ……!」
遠方でも、アンリーネの親しい人が、父のように思っている人物が追い詰められている。
防御魔法を使えずに雷撃を受け続け、その両腕は皮がめくれ、真っ赤な火傷を負っていた。
「グスタフ様……ッ!!」
彼まで失えば、本当にアンリーネはかつての主に顔向けできなくなる。
『あのクソおっさんを戦場じゃなく、ちゃんとしたベッドの上で殺してやる』
それがあの皮肉屋である王子の口癖だった。
「…………ッ!」
「天誅!!」
雷撃でとうとうバランスを崩し、右足の一部が消し炭となったグスタフに青白い光とともに幼稚な怒りの一刀が振り下ろされる。
すぐさま防御魔法と土で防ごうとするが、グスタフの魔法は無機質に解除される。
遠くから眺める空洞の鎧が、剣をただこちらに向けているだけでグスタフは“ただの力持ち”になってしまう。
「…………ふっ」
グスタフは笑うだけだった。
人の最後なんて、ましてや殺人を繰り返した自分の最後なんてそんなものだと思ったからだ。
狂った社会にも秩序はあり、生まれる命がある。
ただ嘆いて破壊するだけでは駄目なのだ。
それが分からぬ目の前の哀れな男を責めることはない。
悔いがもしあるのならば、もっと変わっていく魔法の使い方を見たかったことくらいだろうか。
『今の馬鹿弟子』がやったことのように、いつかこの世界にもあんな幸福だけをもたらす魔法が増えていくのだろう。
そんな『前の馬鹿弟子』が望んだ景色を笑いながら見たかった。
「────……」
そんなことを思っていた死に際の老いぼれは────無事だった。
「むっ!? ……なんだ?!」
何処かから放たれた一撃が、クルモンドの剣を弾いたのだ。
それは距離を無視した“斬撃”だった。
クルモンドがそれが放たれた方向を見ると、そこには“門”があった。
「……転移魔法か」
魔族でも一部しか使えない転移魔法。しかもその転移魔法は魔法陣すら使わないものだった。
通常は設置された魔法陣から魔法陣への移動しかできず、あらかじめ設置する必要がある。
だが、それは一切の小細工のないただの空間の移動だった。
その門は空間に空いた穴であり、その奥は暗闇と冷気しかないように感じた。
「──お初お目にかかります」
そして、そこから歩いてきた人物は状況把握をなんとなく終えると、騎士としての礼を取った。
刃を上にし、柄部分を顔の正面に置く。
明るく力強いその髪の毛と瞳、暗い雰囲気の黒と紅紫色のドレス。
剣のベルトと薔薇をモチーフとした柄、拵は黄金が使われ、刀身には綺麗な銀色が光っている。
戦場において覇気を感じさせる少女は堂々とその名を名乗った。
「我は『最愛の王』に仕えし騎士! ヴィクトリア・ブレイブハート!
──どうぞ、よろしくお願い致しますわ?」
その凛とした声は、それまでの空気を一変させた。
◆◇
学園都市、壁内では生徒連合が三体の不死騎士と対峙していた。
「……魔物?」
「不死騎士です! 迂闊に近づかないで下さい!」
「こちらの魔法を真似するという情報もあります! 牽制攻撃は禁止です!」
知識のある生徒が声を出して、他の生徒と情報を共有する。
『こちらミゼリアです!! 街中、中央の五番通りに不死騎士が三体出現しました!! 戦えぬ者は近寄らぬように!!』
そして、王女の声が都市に響き渡った。
それは住民に恐怖を伝播してしまうが、何も知らぬ人が巻き込まれないようにする方を優先した。
伝わったかギリギリだが、北と南にいる教師陣にも状況を知らせる目的もあった。
しかし、その声は学園中に伝わったと同時に、そこにいる魔物にも聞こえた。
「弓……?」
「一体が武器を変換しました! 遠距離攻撃にお気をつけを!」
三体の内一体が、その武器を遠距離仕様に変換。そして、一体が直進を始めた。
その場にいる生徒を無視して、進んだのである。その動きは素早く、離れた位置にいた生徒たちは見送るしかなかった。
「え……?」
「あれ……?」
素早く離れていた生徒たちだが、それに違和感を覚える。
魔物が人間を無視して、行動を始めたのだ。
重たい鎧を着ていないかのように街を駆ける不死騎士の進む方向を生徒たちが見た。
──その先には王女がいる。
「──ッ!! ミゼリア様!! 不死騎士が一体向かっております!!」
「ミゼリア様!! お逃げ下さい!!」
それに気付き、声を上げたのは『シニストラ・アモリス』と『ヴァリアント・ローズ』のナンバー2の少女たちだった。
『!! わかったわ!』
その声を聞いて、ミゼリアと本陣の生徒たちは学園の校舎の中へ避難する。
しかし、不死騎士の速度はそれに追いつきそうだった。
「ッ!! 阻止を!!」
「────! 危ない!!」
「……きゃっ!?」
飛び道具がナンバー2の二人に飛んできた。
それは弓を持った不死騎士が放ったものである。
そして、『目標』を定めた三体目が動き始めた。
その空洞の兜の向きは、一体目の動きを読みミゼリアへ伝えた二人に固定されている。
不死騎士たちの優先順位が決定されたのである。
「……ッ!!」
『ヴァリアント・ローズ』のナンバー2『ブラルタ』が向かってきた不死騎士の剣を受ける。
「速く動ける者は、ミゼリア様へ向かうアレを阻止しなさい!! 恐怖している者は無理をしないように!! 誰も責めたりはしません!!」
そして、『シニストラ・アモリス』のナンバー2である『クシャルナ』が混乱する生徒たちに指示を出した。
ここからはミゼリアの指示は使えず、命のかかったものになる可能性があるからだ。
「!! 正確な射撃ですね……」
そして、自分に向かってきた矢を防御魔法で撃ち落とした。
不死騎士たちはまず指揮官を潰そうとしているようだった。
指揮系統を識別し判断できる魔物というだけで恐ろしい。
加えて、その不死性が一番の武器である。
サフィレーヌは浄化魔法を使えるが、『シニストラ・アモリス』のメンバーに使える者はいない。
訓練中であり、学園で習うのは二年生になってからだった。
クシャルナは自分の不勉強を恥じた。
「ブラルタ様、私たちはどうやらこのまま囮を務めねばならないようです」
「上等です!!」
すでに街の広場へ誘導し、不死騎士と斬り合うブラルタに声をかけ、クシャルナも集中する。
屋根の上を飛び回りながら、不死騎士の弓を避け続ける。
「どんな対応をされるかわかりません! 援護は私たちが危なくなったら行いなさい!」
そして、こちらに残り周囲で構えるメンバーたちに声をかける。
彼女たちの判断は正しかった。
その戦い方のおかげで、不死騎士のそれ以上の攻撃方法の増加はないからだ。
しかし、それは彼女たちも同じだ。
そして肝心のミゼリアを守り切ることはできない。
不死騎士たちもそれが狙いだ。
伝令を潰し、指揮官を行動不能にし、最大戦力を釘付けにする。
そして最終的には人間が負けるのだ。
「……!」
「上手い……!」
魔物とは思えぬほどの腕前だった。
不死騎士たちは彼女たちの動きを学習していく。
それは彼女たちも同じだが、対応力、そして戦闘可能時間が違うのだ。
「うっ……!?」
「ブラルタ!!」
ブラルタが崩れたところに、別のメンバーたちが援護を行う。
それを受け流した騎士が彼女たちを攻撃するが、すぐに再びブラルタがカバーに入った。
──全員が冷や汗を流した。
援護したメンバーは死を覚悟したほどだ。
おそらくブラルタ以外が打ち合えば、五手ほどで詰まされる。
クシャルナの方も同じような状況だった。
絶対に一対一になってはいけない。
彼女たちは今だけはミゼリアの援護を考えている余裕が無かった。
「くっ……! 駄目です! 止められません!」
「前!! 危ない!!」
「うぐっ……!!」
また魔力の爆発に巻き込まれ、生徒が一人倒れた。
ミゼリアへ向かって走る不死騎士を追う生徒連合のメンバーたちは、何もできないでいた。
その魔物はミゼリアのいる学園の校舎の中に入っていた。圧倒的な性能だった。
破壊を撒き散らしながら、その剣が王女に迫る。
それを防ぐために一般生徒たちが攻撃する。
止めようとして放った炎の魔法が返ってきた。
止めようとして打ち込んだ一刀が容易く受け流され、危うく殺されるところだった。
その攻撃を受けた生徒たちは次第に恐怖で脱落していった。
それを責める余裕すらない。
自分の命を優先するのは当たり前だ。
ではなぜ彼女たちはあの不死騎士を止めようとしているのか。
それは王女を守るためだ。
くだらない歴史を作るためだ。
あの王女の言葉に心を動かされたから、皆、この戦いに参加した。
出世欲も、名誉欲も勿論あった。
しかし、誰かのために戦っていることに代わりはなく、それが心地よかった。
そんなことを考え、油断していたからだろうか。
『危ない!!』
王女の声が響いた。
一人の生徒に魔法が直撃した。
『サーラ!!』
木っ端貴族である自分の名前を呼んでもらえて、その少女は微笑んだ。
自分を心配そうに見た王女の顔が印象的だった。
それは風の魔法であったため、彼女は学園の窓から外へ放り出された。
──落下すれば即死の高さだ。諦めたように少女は目を閉じる。
「────?」
しかし、いつまでも体がぐちゃぐちゃになるような音はせずに、ちょっとした浮遊感の後に彼女は地面に着地した。
「しばらく休んでいて下さいねー? 近寄っちゃ駄目ですからね?」
その少女を抱えていたのは、浄化魔法の教師であるトーリアだった。
一般人が拒否するような服装をした女性だった。
親からその宗教を嫌うように教えられた少女はトーリアのしている首飾りを見て、少し身を引いた反応をしてしまった。
それを気にせずにトーリアは少女を丁寧に地面に立たせると、自分は魔力を使って跳躍した。
向かうのは学園校舎の三階だ。
その先には因縁のある魔物がいた。
そして、今まさに親愛なる姉妹を傷つけようとしていた。
無言で浄化魔法をその不浄なるものに放つ。
不死騎士の反応速度は異常だった。
浄化魔法が向かっているのを感じ取った瞬間に、その場から退避し優先順位を変えたのだ。
「先生……!」
「ごめんなさい。いろいろ手間取っちゃいました」
緊張がほどけた顔でミゼリアがトーリアを見た。
それに笑顔で答え、トーリアは構える。
その手に持つのは小さな円形の盾と特殊な杖だった。
最優先事項である浄化魔法使いを認識した不死騎士がトーリアに突進してくる。
大きな縦振りだ。
避けられること前提の攻撃だ。
だが、弱い者はそれだけで真っ二つになる。
そして、ある程度の実力があっても、鎧騎士の全力の一撃を受けては反撃は遅れてしまう。
カウンターは無意味だ。相手は不死の魔物なのだ。
カウンターごと押しつぶしてくる。
それを全て知った上でトーリアはその一撃を小さな盾で受けた。
「【ギャハ・ベクトー】」
そして、特殊な魔法を使った。
それは力を反転する魔法。
その中でも向かってくる力の向きと、大きさを完璧に把握していないと使えない高度なものだった。
“完璧なカウンター”が決まった。
不死騎士は自分の放った剣の一撃のエネルギーをそのまま返されたのだ。
その剣を持つ腕が後ろに大きく弾き飛ばされた。
「【ボック・ベクトー】! よいしょっ!」
そしてそこに──強烈な“打撃”が打ち込まれた。
トーリアは手に持つ杖で殴ったのだ。
その武器はメイスと呼ばれる打撃武器だ。
しかし、彼女にとっては杖だった。
今度は作用するエネルギーが倍となる魔法を付与して、放たれた打撃は“白い光を放ちながら”不死騎士を吹き飛ばした。
「ほいっ!」
胸部の鎧を思い切り凹ませながら、無様に転がる不死騎士をトーリアは追撃した。
その走りは速度を増幅されたものだった。
小さな盾を前に出しながら突進をする彼女の周囲には白い光が広がっている。
その突進に対応しようとした不死騎士が魔法を放つが、それはまたカウンター魔法によって不死騎士自身に返っていった。
凄まじい衝突音がした。
トーリアの突進はそのまま不死騎士を学園の外まで追い出したのだ。
柱を壊し、壁を壊し、トーリアと魔物は校舎の外に着地する。
完璧な着地をしたトーリアと、関節の向きがバラバラになりながら転がる不死騎士。
上から見えるその光景は圧巻だった。
「……すごい」
思わずミゼリアの口からはそんな感想がこぼれた。
凹みだらけになった不死騎士の鎧が再生成されながら、その魔物は立ち上がる。
その再生力が不死騎士の特性だ。
しかし、不死騎士の動きが最初よりも鈍くなっていた。
それは当然だ。
──あれだけ浄化魔法を受けたのだから。
“白い光”がトーリアのメイスから常に放たれている。
そう、彼女の攻撃は全て浄化魔法を纏っていた。
それだけでなく、彼女の周囲には浄化魔法と同じ効果のある光が常に存在している。
彼女の近くに寄るだけで浄化魔法を受けるのだ。
「なかなかの魂の数ですね?」
武器を構え、トーリアが笑顔で話す。
歴戦の者。
女神より数々ある候補の中から『戦士』と定められた人形。
大戦争時に不浄を生み出す大魔族を討伐する任を受け、そのリーダーとなった実力者。
「ですが、一体で来てくれるのはかなり楽です」
その任務を任された理由は明白だ。
それは単純に──彼女が適任だったからだ。
浄化魔法使いでその名を知らぬ者はいない。
彼女以上に魔を祓った戦士はいない。
彼女はかつてこう呼ばれた。
────『聖騎士』と。
持つ武器が全て【コンル・クリアランス】の効果を持つネトス教徒のエリートだ。
白き光が黒き闇より顕れたモノを打ち払う。
彼女こそ『聖騎士・浄棍のトーリア』である。




