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プリミティブ・プライメイツ ~暴君転生~  作者: 翠碧緑
2章:思春・王都動乱編

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95話 制圧


 学園都市の街中には少年たちの声が響いていた。


「おーい! そこなにしてんだ! さっさと避難しろ!」


 いつものように過ごそうとする年配を誘導する。


「マスター殿! このあたりの住民は全部逃げましたかな?」


「まだあっちの家のばあさんとその娘さんを見てねえ! 娘さんが出かけてたら、ばあさんがまだ家にいるかもしれん!」


「了解ですぞ!」


 エリアごとの住民の避難を確認し、見逃しを防ぐ。


「アホ! そんなに運べるわけねえだろ!」


「……でも、亡くなった家族の形見が入っていて……」


「だあぁ~~ッ!! おら、こっちで運ぶから、アンタは先に行ってろ!」


 大荷物を抱える子供のその荷物を奪い取るようにして、背に抱える。


「先生!! まだあっちを見てない! 行ってきます!」


「お願いします!」


 教師に言われ、走り出す。


 彼らは50人もいかない弱小派閥「遊興楽団」の面々だった。


 彼らの世間を騒がせることが大得意なリーダーは、その姿を見せていない。


 普段の行いからして、“どうせそのうち帰ってくるだろ”と彼らは思っていた。

 心配していないわけではなかったが、ある種の信頼があった。


 闘技大会をあれだけ荒らしたのだから、どこかで穴埋めはするはずだ。


 それが彼らの信頼するリーダー、そして友人であるルクス・フォノスだ。


 遊興楽団は彼の望む世界のあり方を色濃く映した活動をしていた。


 それは楽しみを誰かと共有すること。


 イベントの準備をする運営側の彼らと、そのイベントに実際に訪れる客人。

 その両方を楽しませるように、楽しめるように動くのが遊興楽団だ。


 ならば、こんなときに自分たちがすることは何か。


 そんなことは決まっている。


 次の楽しみまで、“()()()()()()()()()()()()()


「ランザス! そちらは?!」


「完了だ! ……おい、あそこ!」


 ミゲルとランザスも自分たちが避難する前に住民の避難を助けていた。


 現在は朝方。彼らが避難を指示されたのも朝食中だった。

 そして、その道中、自分たちの住む貧相な寮から学園まで続く道。

 そのまわりぐらいには気を配っておこうと思ったのだ。


「大丈夫ですか?」

「……ああ、ありがとうね。足が悪くて……」

「いえ……ええと、お名前は?」

「クラーサだよ。本当にありがとう……」


 ランザスが指さしたのは、足の悪い女性を抱えて誘導するまた別の女性の姿だった。


「大丈夫ですか! 手伝いますぞ!」


「道はわかりますか?」


 二人が駆け寄ると助けている方の女性が驚いた顔をした。少年たちが逃げずに手助けしに来たことに驚愕したのかもしれない。

 見る人が見れば二人が貴族であることはわかる。


 それに見た目じゃなくとも、雰囲気でわかってしまうものだ。

 

 それは話し方や、皮肉なことに腐っていない彼らの精神性がそう思わせるのかもしれない。


「ありがとうございます。……私だけでもこの人を抱えるくらいはできます。なのでお気になさらず」


「いえいえ、僕たちが代わりますぞ! これでも鍛えておりますからな!」

「そうだ! なんだったらお姉さんも運んでやります!」


 なぜか強がる女性を二人は説得する。しかし、その女性は微笑むだけだ。


「うーん……ここで意地を張り合ってもしょうがないですね。なら、別のお願いをしてもいいでしょうか?」


「どうぞ!」

「なんだ!」


 そう言って女性は自分たちがやってきた方向を指さした。


「私はこの人を見つけてすぐにここまで来てしまったので、あちらの方にもしかするとまだ逃げ遅れている人がいるかもしれないのです。……お願いしてもいいでしょうか?」


「お安い御用ですぞ!」

「おっしゃ! 任された!」


「そこまで元気なら大丈夫そうですね。申し訳ありませんが、よろしくお願いします」

「……みんな優しい子で、泣いちまいそうだよ」


 本当に申し訳ないようにその女性はお礼を言った。

 そして、涙ぐむ足の悪い女性をなだめながら避難所の方へ歩いていった。


 二人はすぐさま女性の言った方へ駆け出した。


「…………」

「? どうしたミゲル?」


 走りながら、後ろを振り返るミゲルにランザスが質問する。

 ミゲルは自分でもわからぬ違和感の正体を探っているようだった。


「いえ……今の女性、なんだか──ッ!?」

「──!?」


 だが、その言葉を途切れさせる事態が彼らの目の前に現れる。


「……先生?」


 そこにいたのは、いやあったのは彼らが通う学園の教師の無惨な姿だった。


 穴の空いた腹。飛び散った中身。

 そして、物言わぬ骸となった教師だったもの。


 それが道の真ん中にあった。


「あれ? ……あ、良かった。貴族でしょ? 君たち」


 そして、こちらを見ながら喋るのは、何故か愉快そうに笑う男。


「グルウルルル……」


 そしてその男の足元──教師の死体の隣には『魔物』がいた。


 犬のようだが、その体は大きく、口元には赤い液体を付けて牙を見せている。

 その凶暴な目がミゲルとランザスの二人を見ていた。


 そんなものはこの街にいないはずだ。いてはいけないものだった。


 つまり、その男は持ち込んだ。


 人間の敵であるはずのその種族を飼い慣らすようにして、自分の武器であるのだと勘違いをして、その男は嗤っている。


 そして、二人が貴族であることに安心している。


 なぜなら、男は反王軍だからだ。貴族は全て傷つけて良い存在なのである。


 勿論、彼がこの学園都市に住んでいたはずがない。


 つまり────()()()()()()()()()


「……うわぁ」

「マジかよ……」


 固まる二人を笑い、男は魔物に指示を出した。


 唸り声を上げて、魔物が二人に向かって走ってくる。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

「ぐああああああああああああああああっ!!」


 気の抜けた反応だが、走って逃げる二人の表情は必死だった。


 死を目撃した。

 知っている顔が物のように転がる姿を見た。


 もしかしたら次あのようになるのは自分たちかもしれない。

 それは言いようのない恐怖だった。


 もう少しで、どちらかが捕まる。

 

 それがどちらでも結果は変わらない気がした。


 片方が捕まって、もう片方に“逃げろ”と言う。そして、もう片方が逃げずに助けようとして、結局両方とも死ぬのだ。


 ルクスの考えた物語にも出てきそうな阿呆らしい死に方だ。


 でも、笑い話になるのなら、良いかもしれないと二人は思った。


「──ギャンッ!?」


 だが現実にそんな笑い話は起こることはなく、響いたのは悲痛な鳴き声と、吹き飛ばされる魔物の姿だった。


「おうおう、誰のシマで魔物が生きてやがんだ?」


「兄貴の許可も無しに、んなことしやがってよォ……」


 そして、現れたのはガラの悪い集団だった。


「はあ? なにやられてんだよ。おら、さっさと……うごっ!! がはっ!?」


 魔物に指示を出していた男は後ろから別の人物たちの襲撃を受け、気絶するまで暴行を受けた。


「んだよ……大したことねえなぁ……」


 彼らは学園の不良集団。

 ヤンバトールとリエーニを勝手にリーダーにしている問題児たちである。


「おお、助かりましたぞ!」

「やるなぁ!」


「おう、いいってことよ。リエーニの姉貴にはお世話になってるからな!」


 不良集団に助けてもらったミゲルとランザスが礼を言う。


 遊興楽団と彼らはリエーニを通じて少しだけ繋がりがあった。


 ライブ中に押しかけてくる不良集団を見て、リエーニは少し困った顔を毎回していた。

 しかし、彼らは拒むことはせずに付き合いは続けていたのだ。


 ちなみにヤンバトールという謎の学生は、未だに彼らを拒絶し続けている。


「ギャッ!!」


「うらっ!!」

「んなろォ!!」


 魔物の方も彼らが簡単に囲んで制圧してしまった。

 少しも怯えない不良集団の方が怖いとミゲルとランザスは少しだけ思った。


「……最初はただの火事場泥棒かとも思ったんだけどよ。変なのが混じってやがるって聞いて来たんだ」


「おそらくは反王軍です。僕たちを見てすぐに殺しにかかってきましたから。一体どこから……」


「わからん。他にも二人くらい魔物操ってたのがいたぜ。ボコったがよ」


「そ、そうですか……。この街で魔物を隠しておけるとは思えませんが……」


 しばらく考え込むが、彼らには答えがわからない。


 なぜならそれはまともな方法ではないからだ。


 街を囲う壁を乗り越えたわけでも、内通者が元からいたわけでもない。


 やろうと思ってもやり遂げられる者がいないから、通常はやらない方法だった。


「……また出たぞ! ぐあっ!?」


「!!」


 不良集団の一人が声を上げたと思ったら、うめき声がした。

 その人物が足を噛まれたのである。


「『エガクヴォルフ』だ! 日向に逃げろ!! なるべく影を作るな!」


 今度出現したのは、影に潜む能力を持った魔物だった。


「こっちにもいる! 気をつけろ!」


 しかもそれらは群れで現れた。今度は操る人間も見当たらない。


「……っ!?」


 不良集団も弱いわけではない。しかし、特殊な能力を持つ種族に対しては不利だった。


 次々と被害が増えていく。

 命は失わずとも、怪我をし、戦闘不能になっていく。


 敵は全てを終えた後でじっくり姿を現して、処理すればいいのだ。


 少しだけ笑えぬ状況になってきたことを、ミゲルとランザスも理解しているが彼らこそ手段が無かった。

 なんとか状況の把握を続けるが、傷つく学生たちを見ることしかできなかった。


「……!!」


「ガアアアアアアッ!?」

「グウォオオオオオッ!!」


 そこへ、魔法が放たれた。


 まばゆい閃光が彼らを包む。


 その光の魔法は一切の影を消し去り、そのままエガクヴォルフも消滅させた。


「……貴方たちは、遊興楽団と、問題児たちですか……」


「うげっ!?」


「げげっ!」


 彼らの危機を救ったのは、魔法使いのエリート集団の学生たち。


 サフィレーヌ・カルクルールを長とする左の青色の腕輪が特徴の集団、『シニストラ・アモリス』のメンバーであった。


「目標、そこですわ」


「わかりました。……貴方たち、離れていないと危ないですわよ」


 困惑しながら、遊興楽団と不良集団が離れると彼女たちは一斉に近くの建物に向かって魔法を放った。


「うわっ!?」

「ひょえええええっ!」


 魔法使い達の威力を重視した魔力の攻撃により、その建物は大きな音を立てながら崩れていく。


「……ぐ」

「くそ……なんでここがバレた」


 そこそこの大きさの宿屋らしき建物が崩壊し、その先には痛みに呻く人間たちの姿があった。


「無力化を!」


「ふん! 言われなくても!」


 『シニストラ・アモリス』の一人が指示を出すと、さらに飛び出す集団があった。


 それはヴィクトリア・ブレイブハートのお気に入りの少女たち。『ヴァリアント・ローズ』のメンバーだった。


 その中でも選りすぐりの実力者たちが剣を抜いて、崩壊した建物で怯んだままの敵に突っ込んでいった。


「くそおおおお!! 貴族のガキどもが!!」


「殺せ!!」


 魔物を失った貧弱な反王軍の侵入者たちは激昂して抵抗する。


 彼らは混乱していた。


 なぜこの場所を突き止められたのか。

 不意打ちは成功するはずだった。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()


 彼らを指揮する『不吉な鎧』が立てた人道に反する効率的な攻撃だった。


「うおおおおおおお!! 負けてられるか! オレたちも行くぞ!!」

「おっしゃ!」

「ういーっす」


 不良集団も突っ込んでいく。

 魔物だよりだった素人の反王軍たちは次々と制圧されていく。


「余計なことを……」


 それに呆れる『シニストラ・アモリス』の指揮者だったが、人手が欲しいのは事実だった。


 この場所以外にもおそらく『出口』が存在している。

 まだここは1つ目に過ぎない。


「……ありました!」


「!! 了解しました」


 建物の内部にそれはあった。


 簡単な話だった。


 壁を登ることなく、門を開けることなく街に侵入する方法。

 それは地下からの侵入だ。


 この大地に人間が生き、生活する以上避けられない絶対の方法だ。


「地下へ続く穴……?」


 ミゲルもそれを見て、驚いた。


「はい。……南と北からの挟み撃ち。そして、下からの第三の攻撃。それが()()()()の予測です」


 大地を掘り、道を作り、準備を続ける。

 その地下の道は王都へ続いている。


 それが『グリムプレート』の作戦だった。

 グリムプレートは少し前の王都への攻撃の際に、その通路を一度作り終えている。


 だから今回のクルモンドの暴走も、地下通路を学園へ繋げばすぐに対応できた。


 クルモンドに奇襲をかけられて、混乱する住民をさらに怯えさせたい。


 丁寧に住民を虐殺し、苦労して学園都市にやってきたクルモンドに民が死んだ姿を見せつけてびっくりさせたい。


 そして──勝手なことをしたクルモンドをそんな絶望に陥れながら処刑したい。


 そんな欲望に満ちた作戦だったが、グリムプレートの思惑通りにはいかなかった。


 なぜならそこには『王の耳』があったからだ。


 教師陣が準備に追われ、北と南の戦いが始まってから、地下から響く足音があった。

 それを少女は聞いていた。


 そして、この学園都市にはいくつかの遮音魔法がかけられている施設があることも彼女は把握していた。騒音に悩まされた時はその場所に集中したり、実際に行って静かな空間を堪能したことがあるからだ。


 だからこそ、出口が作られる場所は限られている。


「ミゼリア様! こちらで発見しました! いかがしますか!」


 突然、空に向かって『シニストラ・アモリス』の令嬢が大きな声で話し始めた。


 その光景に目を剥くミゲルとランザスだが、それは彼女たちにとっては当然の行動だったようだ。

 二人と不良集団以外は気にしていない様子だった。


 空がその令嬢の声に答えるはずがない。

 しかし、その広い空から声が届いた。


『よくやったわ、アンリ。そこは塞がずに罠を仕掛けなさい。他の場所から逃げた敵をそこに誘導するわ』


「……今の声は、ミゼリア様?」

「すげえ……どこから?」


 『王の声』が彼女たちには届けられた。


 それを聞いた魔法使いたちが次々に大穴の周りに魔法陣を仕掛けていく。


 他の班も出口を探している。

 もし、他にも発見されればそこを塞ぎ、敵をこの場所に追い込み一網打尽にするのだ。


「ミゼリア様は安全な場所からこの作戦を指示しています。

 ああ、そう言えば……。ミゼリア様! 遊興楽団の者とよくわからない不良集団とも合流いたしました! いかがしましょう!」


 二人の質問に答えたアンリが、ついでに他の集団の扱いを空へ尋ねた。


『……ああー……人手が多くて困ることはないわ。無理のない範囲で手伝わせなさい。……死ぬ覚悟ができてるようならね』


「畏まりました! ……というわけで、手伝いなさいな」


 王からの指示を受けたアンリは有無を言わせぬ笑顔で二人に命令した。


「ええ……? 僕たち何も言っていませぬぞ……」

「マジかよ……。いや、まあいいけど」


「…………ふふ」


 無理矢理なその要求にしぶしぶ二人は従った。

 しかし、『死ぬ覚悟』の部分には突っ込みを入れなかった男二人に、アンリは少しだけ好印象を抱いた。



 やがて、他の場所でも出口が発見され、街へ侵入した反王軍が鎮圧されていく。

 学園の外の騎士で構成された軍隊と違い、彼らは素人に毛が生えただけの刻印持ちである。


 たとえ学生が相手だったとしても、力の差は歴然だった。


 学園の教育とそれぞれのリーダーから受けた鍛錬の結果、彼ら、彼女らの連携は素晴らしいものであった。

 まさに未来の勝利である。


 『不吉な鎧』が企てた遊びは『王女』によって阻止された。


 だが、まだ戦いが終わったわけではない。


 そもそも学生だけの集団が増えたところで、北と南の戦力には影響しない。


 どちらかが破られれば、学園都市は占領されるのである。

 その後に待つのは、支配階級に対する粛清だ。


 結局は面倒事を減らしただけということである。


 ミゼリアもそれはわかっている。

 学園の研究室のテラスから街を眺め、その音を聞き続ける。


 一つの違和感も聞き逃さないように。


「ミゼリア、西方面の確認は全て終了よ」


「東はあと4つ未確認の建物がありますわ」


 ミゼリアの後ろでは『プリンセス・オーダー』のメンバーたちが学園都市の地図に書き込みを入れながら、彼女に現状を報告してくれている。


 全ての状況を俯瞰して考える。


 それは実際にやってみると難しい。

 しかし、ミゼリアはそれを簡単に行えていた。


 頭の中の地図と、自分の軍隊の動きの把握。その処理をミゼリアの脳は可能にしている。


 それは王族だからではなく、彼女自身の能力だと言えるだろう。


(あとは……。あとは何に気をつければ……)


 常に不安と戦い続ける。

 考える余裕があるからこそ、結果の予測を疎かにしてはいけない。


 それは大事なことだ。


 それは彼女にできる最大限のことだった。今ある情報から判断して、最善を尽くすのだ。


 しかし────()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「!? 何……っ!?」


 ミゼリアの耳が特別な音を捉えた。


 それは街中ではなく──“空”にあった。


 何かが空気を引き裂きながら飛来してくる不快な音だった。

 聞き取ることのできない気色の悪い音もそれは宿しているようだった。


 慌てて見上げる彼女が見たのは、細い棒のようなもの。


 『黒い槍』が街の中にやってくる。


 狩人が獲物に放つような槍が、人間の街に向かってきていた。

 死の呪いと不死への誘いを配合した凶悪な超遠距離兵器である。


『その場から逃げなさい!! 攻撃が来るわ!』


 慌ててその黒き槍が刺さるであろう場所の部隊に声を送る。

 しかし、それですぐに動けるわけがない。


 その槍は、街に侵入した反王軍のもっとも多かったエリアに着弾した。


「危ない!!」


 慌てて学生たちが離れていくが、その槍から放たれた黒い霧が、無力化された反王軍の刻印持ちを苦しめていく。


「うっ!?」

「がああああっ!!」

「な……んだ……ごほっ!」


 そして、全員が倒れた。


 皆、死体となった。だが、それでは終わらない。


 ぽきり。ごきり──。


 皆、立ち上がる。


 皆、一緒になる。


 皆、武器を持つ。


 皆、動き出す。


 今、王国が戦う反王軍の本隊に存在する数よりは圧倒的には少ない数だった。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()


 だが、それだけでこの住人を殺すのには十分である。


 それは魔王領からのサプライズプレゼントだった。


 元より魔王領が反王軍を実質的に作ったのだから、それは当然の援護だ。


「くくくくく」


 それを知って、どこかで女が笑っていた。


 ────戦いは第二局面を迎えるのだ。


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