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ダイエットに成功した女 ~由香の場合~

作者: おかめ

「さて、メイクの時間ですよと」


由香は洗面台の棚にあるポーチを取り、ファスナーを開けた。


四年前に新型コロナウィルスが世界的にパンデミックを引き起こしてから、

大企業のITエンジニアであった由香の会社も、在宅勤務が基本となった。

現在は出社する人間も増えているが、由香は一歳の子供の保育園送迎があるため、

在宅勤務を継続している。


「保育園の先生達くらいしか会わないとはいえ、ノーメイクはやばいでしょ」


実は由香は、二年前に二重手術を受けた。

プチ整形というやつだ。

在宅勤務で人と会わないため、ダウンタイム期間に出社の心配がなく、今しかないと思った。

当時妊活中だった由香は、生まれてくる子供にキレイなママと思ってもらいたい、という考えもあった。

子供に自己肯定感を持ってもらうことは重要だ。

仕上がりは満足だった。


だが、一部をいじると、他もいじりたくなって来る。

次は目の下の膨らみも気になってきた。

年を取ると、眼球の重さに耐えられなくなり、目の下の膨らみが出てくるらしいが、

由香の場合は生まれつきだった。

学生時代から老け顔のコンプレックスがあったが、その元凶ともいえる。

今は十万円出せば、目の下の膨らみを取れる時代だ。

日帰りで、下瞼の内側から、脂肪を吸い出せるらしい。


「明るめのコンシーラーで、目の下のクマを隠して、と・・・、よし。」


早くコンシーラー要らずの顔になりたい。

この脂肪さえなければ。


「もしかしてあと四キロくらい痩せたら、目の下の膨らみも目立たなくなるんじゃ・・・。

 でも子育てしながらダイエットなんて、余裕無いなぁ。」


「ママー!ママいないー!!」


タブレットで動画を見ていたはずの、子供の声が聞こえてくる。


「いるよー!ママいるよ、ここだよー!!」


由香は子供に呼びかけながら、メイクポーチをしまった。

そろそろ保育園に向かわなくては。


----


「飲むだけで四キロ痩せる!今なら初回千円!」


ダイエット食品の広告が目に飛び込んできた。

普段、詐欺まがいの広告など、歯牙にもかけない由香だが、この日は違った。


「千円かぁ。」


見えない力に押されるようにすんなりと、広告をクリックし、配送先を入力する。

支払いはコンビニ払いにした。

1分とかからずに注文完了する。


「さて、午後も仕事頑張るゾと。」


ブラウザを閉じ、資料作成を始める由香だった。


----


一週間後の昼休み、届いたダイエットドリンクを一口飲んでえづく由香がいた。


「オエェェェェ・・・不味い、不味すぎる」


届いたダイエットドリンクは、1瓶100ml、7本入っており、1日1本飲むものだったが、

1本目を1口飲んだところで、喉から込み上げる悪臭と後味に耐えられなかった。


どうしよう・・・たかが千円だし、お蔵入りにするか・・・?

いや、目の下の膨らみ取りは十万円もするし、整形にはリスクもあるのだ。

万が一整形に失敗したら取り返しがつかなくなる。


「よし・・・、わー!!ぁぁぁ」


気合を入れるために叫んだあと、一気に一瓶飲み干した。


「・・・はっ!」


天井が目に入る。スマホのアラームが鳴っている。

どうやら気絶していたらしい。

時計を確認する。

12:55。昼休みが終わる5分前だ。

フラフラと書斎に向かう由香だった。


----


一週間後の昼休み、由香は体重計の上で苦笑していた。


「・・・本当に4キロ減っている」


1週間、気絶するほど不味いダイエットドリンクを、由香は毎日飲み干した。

結果、食欲がなくなり晩御飯は食べれなかった。

ドリンクに含まれる強壮成分のせいか、子育ては何とかこなせていた。

そりゃ痩せるわ・・・。頑張ったわ自分・・・。


「リバウンドに気をつけなきゃね。」


喜びながらも、これからが踏ん張りどころと気合を入れなおす由香だった。

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