アタシの為に争わないでっ!!!
「お願いっ!!アタシの為に争わないでっ!!!」
漫画やドラマ等でしか聞いた事が無い様な台詞を、まさか自分が口にする日がくるとは思わなかった。
アタシの為に、男達が睨み合い、今にも取っ組み合いの喧嘩になりそうな雰囲気。
嗚呼…如何してこうなってしまったの?アタシがこんなにも美しいから?
「俺が白鳥さんの恋人になるんだッ!!」
「いやっ、俺が白鳥さんに相応しい男だッ!!」
「ヤメて二人ともっ!白鳥は、みんなの彼女よっ!!」
アタシの悲痛な叫びに、彼等はハッとして、漸く冷静さを取り戻したらしい。
「白鳥さん、ゴメン…」
「俺等、白鳥さんの気持ちを考えてなかった…」
「うんん、イイのよ。アタシも、二人の事をちゃんと考えてなかったわ」
其処である事が脳裏を過ぎる。今の自分の発言、下手したら、じゃあ俺等のどちらかを選んでくれ、っていう会話への流れにする為の誘導だったのではないのか?と。
アタシとしては、此の儘…3人仲良く、それぞれ別の人とくっ付いても変わらない関係性でありたい。都合のイイ考えなのかもしれないケド…。
「白鳥さん」
真剣な声で、鴨さんがアタシになにかを言おうとしてるのが気配で解った。
まさか……鴨さんか家鴨さんのどちらかを選べ、なんて訊かないわよね…?
「俺達、白鳥さんとずっと、仲良くしていきたいんだ」
真っ直ぐに見つめる鴨さんに、心臓がドクンと跳ねる。
ヤバい。鴨さんがイイ男に見えてきた。今此処で、鴨さんにもう一度、告白紛いな事をされてしまったら、勢いでオッケーを出してしまう。
家鴨さんには申し訳ないが、アタシ…鴨さんの事をーー
「だから、お互いが抜け駆けしないのを見張る為に、俺と家鴨さんが恋人同士になる提携を結んだ」
「………えっ…?」
…あれ?アタシの聞き間違いかな…。アタシ達の関係性が変わらない為に、鴨さんと家鴨さんが恋人同士になった…っていう極端な話を聞かされた気がするんだけど、気のせいだよね??
「それで今、どちらが攻めで、受けかで話し合ってるんだけど…。白鳥さんは、俺と家鴨さん、どちらが攻めだと思う?」
「………」
いや、アタシBLは未開拓だし…。というか、仮にも今迄恋敵だった者同士が、自分達の攻めか受けかを、先程まで取り合ってた人物に尋ねますかね!?
「…あっ…アタシ……鴨さん、カッコいいなぁ、って思います」
「!ッッ……白鳥さん…」
我ながら、ストレートに言えたものだと思う。
家鴨さんに申し訳ないが、自分の気持ちに気付いた今、攻めるしかない。
「つまり……俺が攻めのイメージって事ですよね?」
「………え"っ…」
アタシ、そんな意味で言ったんじゃなくて……。
「つぅー事で家鴨。今晩、覚えとけよ?」
「イヤイヤっ、無理だって!お前が受けになれよっ!!!」
今晩の話で揉める二人を視界に入れながら、アタシは芽生えたばかりの恋心が砕け散る音を聞いていた。