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第7話

「公爵様に直接宣戦布告とは、また強くでたものですね、ソフィア様」


「これしかなかったのよ」


 私の部屋で、作戦会議の真っ最中だ。今話している彼は、私専属の使用人であるターナーだ。公爵家に仕える彼だけれど、突然の婚約に心細い思いをしていた私の事を心から気遣ってくれてきた、この屋敷で私が心許せる数少ない人物の一人。


「しかし、まさか本当のソフィア様がこれほど豪快な性格であったとは…」


「正直私も、自分で信じられない…」


 彼には、私の考えた事について全て話した。私の突然の豹変ぶりに全くついて行けていない様子だったけれど、無理もない。私だって飲み込めていないのだから。


「ですがソフィア様の仰る通り、それこそが本来のソフィア様なのだと思います。今のあなたは…これまでに見たことのないほど、明るくいきいきとされていますから」


「ありがとう、ターナー」


 今までの自分の殻を脱ぎ捨てて、新しい自分を受け入れる。彼は私に優しく、暖かく微笑みかけてくれた。


「今のソフィア様に湧き上がるその力は、私たちにとって大いなる武器となりましょう。この公爵家を失墜させるための…」


 私はうなずき、彼に答える。ただ、私には気になることが一つあった。


「でも、本当に良いの?あなたは公爵家に仕える使用人でしょ?公爵を裏切ることになるのに…」


 それが私の正直な疑問だった。これまで彼には、本当に良くしてもらってきた。私がここにきて間もない時から、ずっと私の味方でいてくれた。私の数少ない理解者でいてくれた。だからこそ、彼を巻き込んでしまって良いものか、そう考えてしまう。

 彼は一間置いて、俯きがちに答えた。


「…本来公爵家とは、貴族間の取り決めや秩序を維持し、もってこの国の民の為に尽くさなければなりません。ですが、今の公爵様はエリーゼ様への過剰な愛により、その役割を全く成していません。それどころか、エリーゼ様が邪魔だと認めたものを排除し、絶対君主のようになっているとさえ思われます」


 私も同感だ。このまま放っておいてはどうなってしまうことか。


「なにより私は、ソフィア様に仕える使用人でございます」


 ターナーが、笑顔でそう続けた。私も思わず笑みが溢れる。ここに来て良いことなどほとんどなかったけれど、私にターナーを付けてくれたことだけは、あの公爵に感謝しなくては。


「そうと決まれば、急ぎましょう」


「はい、ソフィア様」


 私はターナーを連れ、部屋を後にする。公爵家を出ようとしたその時、フランツ公爵が私たちの前に現れた。大変に不機嫌そうなお顔だが、私は全く怯む気はない。


「何をする気か知らんが、二週間後に正式に婚約破棄は成立する。そうなればお前はおしまいだ。せいぜい二週間の余生を楽しむんだな」


 私は公爵の目を見て、笑みを浮かべながら言葉をくれてやる。


「わざわざのお見送り、感謝いたします。婚約破棄は私も望むところではございますが、その心配はご無用です。二週間後には、もう公爵家は存在しませんので」


「!?」


 公爵の悔しそうな顔を見届け、私たちは公爵家を後にする。訪ね先は、シガー伯爵のところだ。

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