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第八十七話

 風を切り疾風となって進むファシルとリュグネロア。

その速さは尋常ではなく、ファシルの目に映るいくつもの景色が次々と忙しなく変わっていったがそれでも目的の場所まではまだまだ時間を要するようであった。


 ビスベーリトを離れてしばらくした頃、リュグネロアがファシルにある事を伝えた。

それはこの先の事についてであった。

ファシルの奪われた三つの道具を取り返すためその場所へと飛ぶリュグネロアであったがサーディアから引き継いだ情報としては、奪われた道具の場所とそれらが三か所に分けられているという事だけで他の事は何も把握していなかった。

「後の事は」

分からないのかとファシルが訊くとリュグネロアはそのままに、分からないと答えた。

リュグネロアのその返事を聞いたファシルが疑問を持つとその内心を読んだようにリュグネロアが口を開いた。


 リュグネロアの未来予知はそこから先の事を全くと言っていい程に捉えられないでいた。それはひとえに、この先に待つ全てがリュグネロアの力の及ぶ範疇を超えているからで、それだけにファシルがこれから向かう三か所は危険を大いにはらむものであった。


 リュグネロアが自身の未来予知が役に立たない事の説明とそれに関する忠告をファシルにしているとそこへ火球が通り過ぎた。その火球はとても小さく弱々しいものであったが無数に飛来するとファシル達を襲った。

それはファシル達を待ち伏せていた羽付き達によるもので、小さく弱々しい自身の体とそこに宿る少量の魔力を糧に放つ四種の魔法はどれも下級程度で当たったところで傷には成りえないものであった。

「これは?」と問うファシル。

リュグネロアは一言口して、その大きな体であっても容易く躱し続けるとそれはリュグネロアの未来予知の範疇であった。

(問題ない)


 駆け抜ける速さはその巨体をもって大きな風圧を伴うと全てを吹き飛ばした。

有象無象の羽付き達はことごとくその風圧によって吹き飛ばされるとファシル達の進行を阻もうと立ち塞がったがその思惑は叶わずそこに道を作り上げた。


 しばらくの間、二者のために道を紡ぐ小虫たちであったが如何に小虫と言えど連続して続くその羽のうるさいまでの音は、そこを迅速に飛ぶ巨獣よりもその背に乗る者を苛立たせると許容限界を優に突破させた。

≪ユーマノン≫

背に乗る者はそれら小虫を見向きもせず口にすると、そこにいたそれら全てを死滅させた。

ぽとぽとと落ちていくそれらはしばらく続けた騒音の一切をやめると巨獣の空を翔ける音を残して静けさを取り戻させた。

巨獣の背に乗る者はようやく手に入れた静寂に心を落ち着けたが、しばらくするとまた湧き出したそれらにうんざりしつつも同じ手を繰り返した。

それは目的の場所に着くまで幾度か繰り返されると二者の進行を妨げ続けた。


 サーディアに託された情報の場所に辿り着いたファシル達はそこに降り立った。

するとリュグネロアが口を開く。

(先程も言った通りだ)

(ここから先の事は何も読めない)

そう言うとリュグネロアは自身の翼を羽ばたかせた。

大きな体を宙に浮かせさらに口を紡ぐリュグネロア。

(充分に気を着けろファシル)

リュグネロアは後を追ってきた羽付きの残りを相手するため空へと飛んだ。


 一人地上に残ったファシルは目的の場所であるその建造物に目をやった。

平原にぽつんと在るその建造物はその外観から神殿であると思えた。

大きな屋根の部分を何本もの柱が支えるその神殿は、その複数の柱によって内部が見えない程に暗くされていた。

神殿の暗く伺えない内部が醸し出す不気味な雰囲気もさることながら、その柱もまた不気味さを醸し出していた。

神殿の柱はどれも形状をしており、それらは全て獣を模して苦しむ姿で造られていた。

ただただ悪趣味なその神殿は全てを拒むようであったが、ファシルはその神殿を見ると深呼吸して気持ちを入れなおし中へと向かう。

しかし、ファシルが神殿の入口に足を向けるとその階段に差し迫った瞬間何かに触れた。

ファシルはそこで足を止めてそれに手を触れて正体を探った。

神殿には透明な魔力障壁が張られていた。

それに気付いたファシルは障壁に少し触れた後、軽く小突いて見せたがそれは堅牢でファシルが見た中で初めてと言っていい程に頑丈なものであった。


 ファシルは以前の自身について思いを馳せた。

魔力障壁を幾度も突破してきたファシルであったがそれでも出来ない時もあった。

その時はいつも「私に任せて」と隣から聞こえてくる声の主がそのまま容易くそれをどうにかしてくれていたなと。

曖昧な記憶の中で混在するそれに、今となっては確かにその事が分かる。

ファシルは固く透明な壁に手を突きつつ口を衝いた。

「レイリア」

その名を口にしても壁の突破には至らない今、ファシルはため息を漏らすとそのままに自身の魔力を増大させた。

すると次第にその壁にひびを伝わらせていく。

ファシルは壁に突いた手に一際力を込めるとその壁を突破した。

見えないものの崩れる音を響かせる壁は、拒むそれを許すとファシルの前から消えてなくなった。

ファシルは再び歩き出して、神殿の中へと入っていった。



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