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第五十一話

 ドラゴンがファシルの力を解放した事には理由があり、それはドラゴンが持つ力によるものであった。

ドラゴンは未来をある程度見通す力があった。その力によって、この先のファシルに訪れるいろんな事を知っていた。そのため、ファシルを諦めさせたかったのだ。しかしファシルが諦めない事を選んだ。

なので、ちょっとした試験のつもりで力を解放してあげたのだ。

もし、ファシルの力が一定の度合いを越えなければドラゴンはこの場でファシル達を殺す気でいた。それだけドラゴンは重く考えていたと同時に、ファシルの力がどれ程なのか知りたい、という単純な知的好奇心からくる軽い気持ちもあった。しかし、ドラゴンの重い考えは無駄に終わり、そして軽い気持ちに少し後悔した。


 解放されし者は、左手はそのままに右手の拳を握り言葉を告げた。

≪セス≫

≪──≫

≪──≫

解放されし者が右手に握った剣は禍々しい黒い炎を纏う。そして黒炎を纏った剣を傍で振るった。辺りに飛び散る黒い炎。ドラゴンは自身に向かってくるその黒い炎を魔力障壁で防ごうとした。しかし、それは全くの間違いであると実感する。障壁を素通りする黒い炎。それらはドラゴンに触れると、一気に火力を増した。その黒い炎は魔力を餌に火力が上がるのだ。その事からドラゴンの纏う純粋な魔力は格好の餌であると言えた。黒い炎に覆われたドラゴンはそれらを払うため、飛び上がった。すると頭上より、炎とは違って黒い雷がドラゴンを襲う。咄嗟にそれを避けたドラゴンであったが、その雷は空気中の魔力に触れて反射した。

この場所は今、解放されし者の魔力で満たされている。なのでその雷は止まることなく反射し続けた。さらにこの雷は魔力を吸収するため、時間が経つにつれて威力を増していった。そして雷はでたらめに反射する。それは無限に続き、一切の隙を無くしていった。

雷の初撃を避けたドラゴンであったがその次の瞬間には雷を食らっていた。体のあちこちに突き刺さる雷。それらは止むことが無く、この場を覆った。


 炎と雷で飛ぶ事が出来なくなったドラゴンは再び地に足をつける。そのドラゴンに向かってゆっくりと歩いて近づく解放されし者。

≪──≫

ドラゴンはその余裕綽々の相手に反撃した。尻尾の先に魔力を集中させて、その大きな大剣のような尻尾を振るった。その動作は到底目で追える速さではなかった。三日月の形を成して飛ぶ魔力の斬撃。それらは幾重にも重なり、避ける隙間は微塵もなかった。解放されし者に飛んでいく斬撃であったがそれらはその者を素通りする。なおもゆっくりと近づく解放されし者。ドラゴンは速い動作によって避けられたと思い、さらに尻尾の斬撃を飛ばした。しかしその斬撃も同じ展開をたどる。ドラゴンは近づいてくるその者にさらに、そして多く斬撃を飛ばした。

ドラゴンは、距離の近さと数の多さで、その者は完全に避けられないと見込んだがそれらは当たることはなかった。ドラゴンは確実に当てるため、尻尾の先を突き刺すように直接当てにいくがそれすらも当たることはなかった。ドラゴンから見えている景色としては、相手に刺さって見えていたが、それを気にすることなく解放されし者は歩いてくる。それは、見えて認識しているはずであるが、認識出来ていないという不思議な状態であった。ドラゴンは混乱した。見えている事が理解できなかったドラゴンは幻覚だと考え、辺りを見渡したが他の場所にはいなかった。すなわち、目の前の相手は幻覚でも囮でもなく本物なのだ。

ドラゴンは体が強張ってしまった。それは目の前の者に恐れてであった。


 解放されし者はドラゴンとの距離を無くし、ドラゴンに触れる。

≪──≫

すると、ドラゴンの体が金属へと変化していく。ドラゴンは反応が遅れて逃げられなかった。ドラゴンはその場に、金属で出来た彫刻のように佇む。その彫刻と化したドラゴンを、解放されし者は右手の剣で切り裂いた。

真っ二つになったドラゴン。

ドラゴンは意識すらできずに絶命した。


≪──≫

死んだはずのドラゴンは意識を取り戻した。そして自分の体が二つに分かれていることを認識出来ている。さらにぬるりとした感触が頭の中を占める。それは思考時間がゆっくりと流れているからであった。そのありとあらゆる感覚が遅れてくる不気味な感じに流されていると

「これで」

充分だろうと解放されし者が訊く。

ドラゴンはゆっくりとうなずいた。頭が頷けと指令を出して、それを体が反応して頷き、体が頷いた事を頭が理解する。本来これらの流れは瞬時にかつ反射的に出来る。しかし、ドラゴンはゆっくりとしたこの感覚を嫌になるほど味合っていた。


≪──≫

解放されし者はその言葉を最後にドラゴンの試験を終えた。

ドラゴンはハッとすると自分の体が何ともないか調べた。ドラゴンの体は試験を始める前の状態で、なんともなかった。

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