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第四十八話

 ファシルは大きく伸びをした。ファシルにとって野営は慣れたものであったが、外での睡眠は寝心地が悪く慣れる事はなかった。

朝になって目が覚めてする最初の行動である伸び。この伸びは寝ている間に縮こまった筋肉を解す効果があり、それと同時に血流を促進する。血流が良くなることにより筋肉が目を覚ます。これらの相乗効果で人は心身ともに目を覚ますのだ。


 開けた場所で伸びをしたファシルの朝は、空を飛ぶ怪物たちの不自然な踊りと囀りで始まった。それらの囀りはやかましく、聞き心地がいいとは言えなかった。黒い球によって踊らされる怪物達は朝から活気があり、激しく舞う。それら怪物の早朝から始まった舞台は、一際大きな囀りをもって終幕を迎え、空から消える。

「おはよう」

目が冴えたファシルにレイリアが声を掛ける。レイリアはファシルより先に起きていたようであった。

ファシルはその朝の挨拶に返事を返した。

「おはよう」

二人が朝の挨拶を交わし終える頃、遮るものがなくなった空は遠くまで望めた。この日も天候に恵まれた。


 薬草探しを再開したファシル達。その周囲を、朝に遭遇したものとは違う怪物が飛ぶ。それらはファシル達の薬草探しをやめさせようとする抗議活動のように見えた。空を飛ぶ抗議活動は黒い球の警護によって沈黙させられていく。しかし、しばらくするとまた何処からともなく飛んで現れて騒ぎ出す。ファシル達はそれにうんざりしていた。


 抗議団体のように空を飛んで、薬草を探したいところであったがファシル達にはそれが出来なかった。ビスベーリトの地に慣れている抗議団体だからこそ出来る事であった。

これにはビスベーリト特有の理由があった。


 魔力の結界に覆われているビスベーリトは外とは違った独自の発展を遂げていた。その発展の最たるものが魔力の流れであった。

この世界においての魔力はありとあらゆる場所で発生する。それは植物によるものであったり、生き物の生命力からくるものであったりと多岐にわたる。発生した魔力は空気中に流れると馴染んで消えてなくなるのだが、ビスベーリトでは魔力の結界に覆われているため飽和状態となり空気中に残り続けていた。その残り続ける魔力がビスベーリトには、濃度によって澄んだ場所と淀んだ場所を作り出しており、その二つの差が魔力の対流を起こしていた。濃度差によって引き起こされる魔力の対流が、魔法を行使する際の魔力供給を阻害した。この魔力阻害は、手練れの魔法使いでも厄介なものであった。

入山してすぐは、それらを無視できる程であったが中腹を超えた辺りから、対流により魔力が安定せず飛ぶ事が出来なかった。

単一の行動であれば魔力を安定供給出来たのだが、二つの事を同時には出来なかった。そのため空を飛んで薬草を探す事は出来るが、怪物に遭遇した時に迎撃が出来なかった。今のところは対処できる程度の怪物しか出現していないが、強者と接敵した場合それが致命的な事になりえた。なので、地道に薬草を探していた。


 しばらく続いた騒がしい抗議活動もある場所に辿り着くと、静かになりなくなった。そこは木々が生い茂り、日の光が届きづらくなっている場所であった。その少しじめっとした日陰に一本だけ緑色の濃い草が生えていた。その草の周りには何も生えておらず。その草が目立っていた。


「薬草って」

これかなと言いながらその草に近付くファシル。

ファシルが草に触れようとした瞬間、草から何かが噴出した。その唐突な事にファシルは尻もちをついた。

「大丈夫」

と少し後ろから声を掛けるレイリアにファシルが大声を上げた。

「来るな」

すると地面から植物のツルが現れてファシルの足に絡みついた。ファシルを引っ張るそのツルは、ファシルを逆さ吊りにした。そして他のところからもツルが伸びてきて今度はレイリアを襲った。レイリアは咄嗟にツルを避けて、それを手から放たれた火球で燃やした。ツルに火が付くと怪物の叫び声が聞こえてくる。地面を揺らしながらその怪物は姿を現した。植物に擬態した怪物であった。怪物は辺りの木々と繋がっており、ここはその怪物の手中であった。このことを知っていたので抗議団体は追ってこなかったのだ。


 ファシルが咄嗟に叫んでレイリアが近付くのを阻止したのは正解であった。

逆さまに吊られたファシルは先程の草が噴出したものによって体が痺れて動けなくなっていた。かろうじて動く口でファシルは叫んだ。

≪ガイラーズ≫

ファシルのその言葉を聞いてレイリアは手に魔力を集中させた。

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