表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/121

第四十六話

 ファシル達は、件の山の麓まで来ていた。景色を望むファシル。その麓から見える景色のほとんどを占めるのは高く険しい山であり、ネーベン領の端に位置するこの山は、ネーベンのどこからでも望む事の出来るほど大きく、山の頂上は雲に覆われて見えなくなっているほどであった。この山の名前はビスベーリトと言われていて、魔法の結界に覆われていた。


 ビスベーリトは登山できるような山ではなかった。その理由は危険すぎるからであった。元々、登山を想定していないので、道らしい道はなく、獣道が主であった。さらに、道中、怪物が跋扈していて、それらは下から上に向かうにつれて凶暴になっていた。なので、よほどの事情がなければこの山を登る者はいなかった。さらに、登頂するにあたって許可が必要で、その許可をもらうにはある一定の強さが必要であった。これは跋扈する怪物の特性によるものであった。


 ビスベーリトにいる怪物は基本、下山してこない。どういうわけか怪物達に統率が見られ、それによって下山してこなかった。しかし、その統率が取れた怪物達であったが、例外があった。それは登頂する者の存在であった。その者を値踏みするように怪物達は動く。もし、その者が弱者であった場合、その者はたちまち食い殺され、そして怪物達は下山してきて、人里を襲うのだ。それは怪物達の気が収まるまで続き、辺り一帯を蹂躙する。なので、不用意に入山できないようにビスベーリトは魔法の結界に覆われていた。

しかし、もしその入山者が強者であったなら、それらは、例外を除いて襲ってはこなかった。


 ファシル達は麓の結界を管理する関所の衛兵に許可証代わりの六方格子形の結晶体で出来た手形を見せた。

「拝見しました」

どうぞお通りくださいと事務的に対応する衛兵。

ファシル達を通すため大きな門が音を立ててゆっくりと開かれる。そして開いた門を通る二人。二人が門を通るとそれはまたゆっくりと閉まっていく。

「道中お気をつけください」

と門の外にいた衛兵の一人が言葉にした。しかしそれは二人には聞こない程の声の大きさであり、祈りを捧げているようでもあった。


 ファシル達が門をくぐると、魔法で出来た極めて透明な結界が目の前に現れる。この結界の先はとても危険であり、帰還できる保証はなかった。しかしながら、ファシルは結界に向かう。ファシルが結界に触れるとそこを起点に、水面の上を広がる波紋のような動きをみせた。そして二人は結界を通り抜ける。これは手形に込められた魔力によるものであった。二人が結界をくぐると、波紋のように波打っていたのが嘘のように、結界は堅く閉じられた。


 結界内に入ったファシル達は外との違いをひしひしと肌で感じ取っていた。それは異様な程の殺気でそれらは、手前からは突き刺さるような感覚であり、奥からはべたつく様な感覚であった。ファシルは気を引き締めるため、深呼吸した。そしてこちらからも殺気を飛ばした。


 ビスベーリトに生息する全ての怪物達は久しぶりの獲物に血が沸いていた。今回は二人であると確認できた。怪物たちは我先にとその獲物に向かう。その獲物が弱ければ、少しであっても食欲を満たせるのだ。そして人の肉は美味い。それは骨の髄まで楽しめる程で、怪物達には御馳走であった。その新鮮な肉に向かう怪物達。それらは涎を垂らして我慢の限界を迎えつつあった。肉はもうすぐであり、どのように食べようかとない頭に考えが巡る。

肉に近づくにつれて、ドドドと走る足音がする。それは他の怪物だ。怪物達は、肉は俺のもだと言わんばかりに走る。怪物達はお互いに苛立ちを覚えつつ走る。怪物たちの頭を食欲と苛立ちが満たしせめぎ合っていると肉にたどり着く。そして、肉に飛び掛かった。


 しかし怪物達は後悔することになる。正確には後悔する間もなく絶命するのだ。

新鮮な肉からとてつもない殺気が飛ぶ。それは怪物達から向けられる殺気を一瞬にして払拭し、ビスベーリト全体に吹雪の様に吹き荒れる。その吹雪の様な殺気は、ほとんどの怪物達を凍えさせた。殺気に身を震わす怪物達。それを感じ取った怪物達は足を止め、逆の向きに走り出す。それはまさしく逃げ出すといった有様であった。


≪オーピライ≫

≪ドッラ≫

最前線で飛び掛かった怪物達は空中でピタッと止まったと思った瞬間、細切れになるもの、無数の黒い球に串刺しになるものと多種多様な姿を見せた。それらは目前の新鮮な肉に辿り着く事はなかった。醜態をさらした怪物達の腐肉をよけて新鮮な肉はゆっくりと歩き出した。

その歩みは、ビスベーリトのどこかに存在する薬草へと向かっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ