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第四十一話

 ファシルは巨体に命令を下した。巨体は無言のまま命令を実行する。巨体は足に力を込めて筋肉を強張らせた。筋肉の筋が浮かび上がり、強張って力んでいる様が伺える。その強張らせた筋肉を一気に弛緩してバネのように使い、力を地面に伝える。その力によって巨体の足は地面を強く蹴った。その衝撃に地面はドゴッと音を立てて抉れる。そして巨体は恐ろしい程の速さで二人の羽付きに向かう。凄まじい速度で肉薄しつつ手足を振るう巨体。纏った光は手足の軌道に沿って綺麗に輝き、斬撃となって放たれる。その斬撃が二人の羽付きに触れる間際、羽付きは大きな羽を羽ばたかせて斬撃を消した。斬撃をいなした直後、巨体の拳が羽付きの少年を襲った。二人は繋いだ手を離され、それを受け止めた羽付きの少年は大きく後退した。


「ホントに」

相変わらずの馬鹿力ねと言って両手に魔力を込める少女。そして別々の魔法を発動し巨体を攻める。片手は水、片手は炎、この二つ魔法を巨体に至近距離でぶつける。二つの魔法は混ざり合い瞬間的に大きな爆発を起こす。爆発によって飛ばされる巨体。煙の尾を引いているその姿は焦げ跡はあるものの、防御の姿勢を取っており、あまり効いていない様であった。

「どいて」

僕がやると少年が言った。すると少年の前に二つの大きな魔方陣が現れる。

「まさか」

こいつらを使うことになるとは言って少年は二体の怪物を召喚した。

「チシィ、チテリィ」

前腕が大きく発達した怪物チシィと多脚の虫を模した怪物チテリィの二体は少年が呼びかけると、眠りから覚めたように、大きく咆哮した。そして二体は相手へと向かう。

チシィは巨体にインファイトを挑んだ。巨体もそれに応じ肉薄して拳を繰り出し、チシィは無軌道に前腕を振り回した。その辺り構わず振り回される発達した前腕は触れたものを砕いていく。近くにあった岩をさらりと砕いたその様は、あまりに容易く行われるため、触れた感触もなく砕いているようであった。勢いが死なない前腕は止まることなく速度を上げていく。ビュンビュンと音を立てる前腕を巨体は紙一重で、最小限の動きで避けて拳を繰り出す。その隙を突いたカウンターはチシィの体の表面を大きくへこませる。

その表面をへこませる程のカウンターは内臓へ大きな痛手を負わせたであろう。

しかし、事チシィにおいては、表面をへこませ内臓にまで響いたであろうカウンターも効いてはいなかった。

そして、カウンターをものともせずチシィは前腕を振るった。

カウンターを打つため前に出た体を後退させようとする巨体。しかし、何かに足を取られて後退しそこなう。ちらっと見た足元は即席の網に取られていた。それはチテリィの粘液で作られていた。

巨体とチシィが殴り合いをしている間に罠として周辺に設置していたのだ。

後退しそこなった巨体は、咄嗟に両腕にすべての光を収束させて防御の姿勢を取った。すると、初めてチシィの前腕の動きが阻害された。

絶対に押し通る前腕を、光を収束させた腕が受け止めたのだ。その衝撃は果てしなく、空気の波となって振動が目に見えるほどであった。受け止めた両腕は光を収束させたにも拘らずグニャグニャに折れて使い物にならなくなっていた。チシィは巨体のぶらんと垂れた両腕をみて、止まった前腕を動かしたが、それを巨体は不自然に体を捻ってかろうじて避けた。そうしてチシィから距離を取るため、巨体は足に光を回して、足を切った。そして足を千切って大きく後退した。大きく後退した巨体を受け止めてファシルは無慈悲に戦線へと押し戻して戦闘を続行させる。

≪シルビート≫

巨体の体は回復して、自ら立ち上がり戦線に復帰した。


 復帰した巨体を見てネーファはある事に気付き、その事をすぐにネイラに伝えた。

「やっぱり」

出来ないみたいと千切れて残された足を指して言うネーファ。

「わかった」

ネイラもそれを見てすぐに理解した。


 二人が気付いたこととは、ファシルがライアトと戦っていた時に使っていた技であった。

ライアト最大の武器である手数の事である。ライアトは欠損した部位を飛び道具として使う。それを使えない事を残された足によって理解したのだ。それはファシルが操っているからであった。ファシルの魔力は特殊であり、それによって本来のライアトの体内にある魔力と違うので、瞬時にかつ遠隔で体を治す事が出来ず、その飛び道具が操れていなかった。


 その事に気が付いた二人は次の手に出た。一番よく知る厄介な攻め手を気にしなくていいのだ。復帰して向かってくる巨体をネイラ一人に任せて、ネーファはファシルを狙った。


 巨体を回復させたファシルはレイリアを抱き上げた。

レイリアはファシルの復活と同時に気を失っていた。上級魔法を瞬発的に使ったことによる一時的なものであった。

ファシルはレイリアの怪我の具合を見て怒りに震えた。それは自身の不甲斐無さに対してであった。しかし、自身の感情よりもレイリアの怪我の治癒を優先した。

≪シルビート≫

安全な場所へレイリアを運びつつ傷を治した。ファシルはレイリアを寝かせた。しかしそこへ巨体が相手しているはずの羽付きの少女の魔法が差し迫っていた。


 魔法がファシルの背中に差し迫る中、二体の怪物と戦闘していた巨体がこちらを優先してかき消した。間一髪のところで巨体に防がれた魔法であったが、それを気にすることなく言葉を告げる。

≪ミュラース≫

レイリアを守るように魔力の盾が周りを飛ぶ。

そしてファシルはゆっくりと立ち上がった。その姿は背中越しではあるが怒っていることは明白であった。ファシルはこの時、補助なしでは何も出来ないのか、と自身が操る巨体にイラついた。そして言葉を告げる。その言葉は尻拭いだと言わんばかりであった。

≪イールケレ≫

すると、周りを飛ぶ虫達やチシィ、チテリィはピタッと止まる。

「さっさとしろ」

そう言ってファシルは巨体に支持を飛ばした。巨体は一方的に怪物達を蹴散らした。

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