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第三十三話

「それそれ」

羽付きはファシルへと一気に間合いを詰めて光を纏った拳と脚で複雑な連打を繰り出していた。ファシルは後退しつつそれら、もろ共切り捨てた。しかし切り捨てられた直後に新しく再生し、さらに切り捨てられた部位は光を纏ったまま残る。そしてそれらはファシルを追撃した。ファシルは追い詰められていた。羽付きは切り捨てられた部位をそのまま飛び道具として使っていた。それにより、切れば切るほど羽付きの手数が増えるという有様であった。しかし切らずしてその手足の連打をいなすことは不可能であった。殴る蹴るといった動作の後を物凄い風圧が襲うのだ。その風圧が一挙一動の隙を補っていた。さらに切り離した腕や脚が別の角度から隙を突く。羽付きはそれらを巧み操り実際の手数より多く攻めていた。ファシルは増え続ける攻めに手をこまねいていると、切り離された脚の横薙ぎを避けそびれて吹き飛ばされてしまう。何本もの木々をへし折りながら吹き飛んでいくファシル。やがて大きな岩にぶつかり、地面が揺れるほどの衝撃を響かせてファシルの体は止まった。羽付きは離れた距離を詰めるべく、地面を蹴って跳躍する。そして上空から氷柱割りのように岩ごとファシルを砕きにかかった。

≪ミュラース≫

上空から強襲する羽付きを止めるべく、ファシルは叫んだ。

羽付きの攻撃からファシルを守るように、魔力によって形成された盾が何枚も重なる。

幾重にも重なるその盾を、氷の如く砕いて迫る羽付き。

連続して砕け散る音が聞こえ、とうとう最後の一枚を砕いた。そして留まることなく、その勢いのまま上から拳を叩きつけて砕いた。叩きつけられたその拳を中心に四方八方へと地面にひびが入り地割れが起きた。その衝撃の中心にあるものは粉々に砕けた。しかしそれは岩の感触だけであった。

「あれあれ」

うまく逃げおったなと言って羽付きは辺りを見渡した。周りに気配はなく地面に突き立てた拳の下にもファシルの姿はなかった。羽付きはファシルを探すため腰を上げた。


 ファシルは羽付きから距離を取り、弱点を探っていた。

(やっかいだな、あの手足)

ファシルは少し冷静になり、時間的猶予のない中思案していた。

ファシルは色音と対峙した場所に戻っていた。すると足元のとある物が目に入った。それは色音の落とした刀であった。何気なくその刀を持ち上げて、まじまじと観察した。

「不思議な形」

なんで反り曲がってるんだと疑問をポツリと呟いたその時、ある事をファシルは思いついた。

「これだ!」

ファシルはすぐさま羽付きの近くまで行き

≪オーピライ≫

羽付きの死角から攻撃した。


 羽付きは痕跡を辿ってファシルに差し迫っていた。ファシルまであと少しの所で、羽付きを三日月形の斬撃が襲った。それは目標を切り裂くとパシャっと音を立てて水になって落ちた。切り裂かれた目標も煙のようにフッと消えてなくなった。

「なんだなんだ」

狙うのは苦手のようだなと言った瞬間、今度は違う角度から、斬撃が飛んできて当たった。そして同じく目標を消した。その目標は切り落とした手足であった。すると羽付きの前にファシルが姿を現した。

「いたいた」

かくれんぼはもう終わりでよいのかと言いつつ羽付きは地面を蹴って、距離を瞬く間に詰める。それと同時にファシルも地面を蹴って迫りつつ叫ぶ。

≪クルエーレ≫

≪ドゥールオーラ≫

ファシルの動きが速くなり、色音の刀で羽付きに切りかかった。

「武器を変えても同じことよ」

羽付きの拳が風圧を伴って迫る。ファシルはそれを切り捨てた。切り捨てられた腕はそのまま羽付きの攻めに加わる。しかし切り捨てられた腕は、何処からともなく飛ぶ斬撃により、かき消された。羽付きは渋い顔をした。それをみてファシルはニヤリとして、油断していた羽付きの腹を蹴って距離を取った。

「終わりだ」

ファシルは次の攻め手で羽付きを屠った。

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