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第三十話

 自分の思うままに直進するゾス。大会開始早々に感じた殺気の正体を探していた。すると森にいる参加者全員にわかるように合図が発せられる。それは森に獣を放った合図であった。この大会に出現する獣の数は事前に知ることができない。

「厄介だね」

ゾスは獣と遭遇する前に殺気の正体と対峙しておきたかった。ゾスは少し急いだ。木を薙ぎ倒し歩き続けた。しばらくすると、獣の雄叫びが聞こえた。ゾスの願いとは裏腹に獣と先に接触することになった。しかしそれと同時に願いもかなった。ゾスはその正体と接敵したのだ。殺気の正体は獣と対峙していたのだ。ゾスは、俺は運がいいなと思っていた。しかし殺気の正体と遭遇したことを後悔する事になる。殺気の正体は獣と戦ってなどいなかった。正確には、一方的なもので戦いになっていなかった。獣は手足を木に絡めとられていた。足掻く獣の弱点を正確に突いて気絶させた。その者は獣を殺す気はなかった。そして、その者は当たり前のようにゾスに近づいてきた。

「殺気の正体は」

お前だったとはとゾスが言い切る前に真横からゾス目がけて大きな木が飛んできた。ゾスは大槌で受け止めた。

「おいおい、容赦ないな」

「でもこの程度じゃ」

俺を倒すことは出来ないねぇと半笑いで言った。ゾスはその者に向かって跳び、大槌を叩きつけた。大槌で叩きつけられた場所は大きな地響きを立てて、大きなクレーターとなった。ゾスの攻撃の凄さは地面のえぐれた大きさが物語っていた。しかし攻撃事態ははずれた。

≪エルシーク≫

ゾスはクレーターの外からした声の方に向いた。するとその者は槍を構えて突っ込んできた。ゾスは大槌では対処できないと考え、大槌を捨てて腰の剣で応戦した。ゾスは見た目に似合わず早く動けた。高速で何回も突き出される槍をゾスは剣で凌いだ。

「遅いな」

槍が止まって見えるぜとゾスは強がって見せた。すると、その者は言葉を言い放つ。

≪クルエーレ≫

槍の速さが数段速くなった。剣で、一つの突き凌げば二つの突きが、それを凌げば三つの突きがと槍による突きはどんどん速度を上げていく。ゾスは自分の腕に自信があり挑発したのだが、次第に剣では凌ぎきれなくなっていった。ゾスの体に穴が開いていく。ゾスは自爆覚悟で足元に魔法を放つ。

「くらえっ」

炎系の初級魔法であった。その者はこれを避けて距離を取った。ゾスはこれが狙いであった。ゾスはその者が離れたのを確認してから、回復薬を浴びるように何本も飲み、同時に自身の肉体を強化薬で強化した。

「馬鹿め」

これで俺は不死身だと豪語した。ゾスは強化薬によって力の強さ、速さ、耐久度を上げた。

「とどめを刺してやる」

と言って、先ほど捨てた大槌を拾いまた跳び上がった。すると淡々と言葉が告げられた。

「勘違いするなよ」

この時、ゾスは本当に勘違いしていた。ゾスがこの者を狙っていたように、この者もゾスを狙っていたのだ。寧ろその者にとっては、自分の手でゾスを倒す事が優先事項であった。

≪アージオ≫

≪ビスキナ≫

その者は先ほどの速さに加えて残像が残った。高速の槍が速さを増す中、通り過ぎた槍の軌道が残り続けている。ゾスは浮いているように空中で止まった。槍が当たる、ドッという音が短い時間で凄まじい数聞こえた。それは連続して、ドドドドドドドドドと鳴り続けた。ゾスは空中で止まり続け、大槌は一番脆いところ突かれ砕かれた。そしてゾスの無防備な体が空中で操り人形の如く、グニャグニャに折れ曲がっていく。そして最後の一撃の横薙ぎでゾスは吹き飛ばされた。

この一連の騒動を嗅ぎつけたまた違う獣が一直線にこちらに向かって走ってきていたが、その獣の頭にゾスがぶつけられ両者共に気を失った。

ぶっ倒れた獣の上でゾスは保護障壁に包まれていた。

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