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第二十六話

 提案に乗ってからの豪商の動きは速かった。豪商はすぐに執事に指示を出して車を用意させて、大会の運営へと向かって行った。運営のある役所へ向かう際、

「今日からは」

私のところで面倒を見ますのでゆっくりしてくださいといって豪商は屋敷の客室を二つ用意してくれた。この時、レイリアはホッとした表情をしていた。


 二人は家政婦に案内され、用意された部屋に向かった。豪商の用意した部屋は、客をもてなすための設備がこれでもかと用意された、配慮の行き届いた豪華で落ち着きのある部屋であった。ファシル達は各々の部屋でその日を終えた。次の日、二人はネーベンの目玉である繁華街に向かった。


 ファシル達は繁華街に来ていた。まず見てわかることはとにかく広く大きいことだった。世界中から品物が揃うので小さな店であっても品揃えのよさがうかがえた。武器屋一つとっても、店がいくつもあり、それら一店舗ごとに世界中の見た事のない武器が揃い、一つ一つ説明を聞いてるだけで途方もない時間を要するほどであった。それだけ、どの店も魅力的で、すべて回るには一日や二日では到底できないという規模であった。


 繁華街の広さもあって二人は一緒に行動していた。

レイリアはファシルをよく見ているそう思えた。市場についてすぐの事。

「迷子になっちゃうから、一緒に見て回ろ」

そう言ってファシルの手を引いた。ファシルはレイリアと手をつないだまま

「ああ」

と少し恥ずかしそうに返事をした。レイリアはファシルのその反応を見て嬉しそうに笑った。


 二人は昼食に、世界各地の肉料理の集まる店に来ていた。

「ここ来てみたかったんだよね」

美味しいって有名なのと嬉々として教えてくれた。流行りに疎いファシルはメニューを見ながら、へぇとしか答えられなかった。するとレイリアは店員を呼んでメニューを頼んだ。

「ファシルは何にする?」

「レイリアと同じので」

メニューを見てもさっぱりだったファシルはそう答えた。店員はかしこまりましたと言って戻っていった。

「同じものでよかったの?」

「いいよ」

その方が感想を共有しやすいしとファシルは言うと、レイリアが可笑しそうに笑った。

「なんか変だった?」

「いや」

前にもこんな事あったなと思ってと言った。初めて二人が一緒に食事したときのことを思い出していた。

「そういえば」

そうだったねと同じく笑った。

二人が他愛もない話をしていると料理が運ばれてきた。それは一枚の大皿に、カリカリに焼けた皮の付いた肉を一口大に切り分けてあり、その隣には新鮮な野菜と香付けとしてハーブが添えられていた。柑橘系の果汁と香辛料を混ぜたさっぱりとしたタレと甘辛ソースの二つからお好みで選ぶことができ、食欲をそそった。


 ファシルが料理を夢中になって堪能していると。

「ちょっと待って」

「ん、なに?」

レイリアがファシルの口の端を拭った。料理のタレがついていた。

「ありがとう」

「いえいえ」

ファシルがお礼を言うとレイリアはしたり顔をした。


 食事を終えた二人は広場で行われるサーカスを見ていた。なかなか見る事のできない動物の芸とあって見ごたえのあるものだった。サーカスの公演が終わり二人はベンチで一休みすることにした。ベンチの向かいには大きな噴水があり、大きな彫刻を中心に小さな彫刻が囲うように配置されていた。

「次どこ行く」

「……」

反応がなかったのでちらっと見るとファシルは船をこいでいた。その様子を見ていると頭が横に傾いた。レイリアは咄嗟に庇うと頭はレイリアの膝に収まった。

「もう、仕方ないな」

レイリアはファシルの頭を撫でつつ、膝枕をしてあげることにした。

レイリアはまんざらでもなさそうであった。

膝枕はしばらく続いた。


 ファシルは眠ってしまった事を平謝りした。

そして時間が許す限り、繁華街にある色んな店を回り、レイリアの一番の目的の店に向かった。探していた店を見つけたレイリアはファシルの手を引いて店に入った。店内には綺麗な宝石をあしらったアクセサリーなどが売られていた。レイリアは店員に何か相談しているようであった。この店は加工も請け負っていた。

ファシルはそのことに気づかず品物を見ていた。

「へぇ」

色々あるなと感心していると、ファシルは意識が遠くなるような、その場から自分だけ引きはがされるような感覚に襲われた。時間がゆっくりと流れいずれは止まってしまうのではと思えるほど、短く長い時間が流れた。

すると、ファシルの背後から声が聞こえた。

「えらく、気が抜けておるな」

その声は鋭く尖ったような、ドキッとするような声であった。ファシルの体に力が入り、目の疼きが感じ取れた。背後をとられた焦りから、ファシルはゆっくりと流れる時間の中、急ぎ振り向く。自分の体ではないかのような動きの鈍さに苛立ちを覚えたその時、声がかかる。

「大丈夫」

疲れたのとファシルを心配するレイリアの声であった。その声が聞こえた瞬間、時間は正常に戻りファシルの体はすぐに動いた。振り向いたファシルの先には買い物を楽しむ人の姿しかなかった。

「どうしたの」

何かあったのと訊かれたがファシルは、左目を手で隠しつつなんでもないと答えた。するとレイリアがファシルの手を引いた。

「じゃあ行こ」

もう用事も済んだしと言った。二人は店を後にした。

そのあともいろんな場所を巡った。


二人はかけがえのない時間を過ごし、屋敷へと戻った。

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