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第二十四話

 レイリアは、少し痛む頭を押さえながら上げた。

「大丈夫?」

レイリアの言葉にファシルは

「なんとか」

レイリアこそ大丈夫と無事を伝えつつ訊き返した。ファシルは着地の瞬間、レイリアを抱きしめつつ背中から着地した。


 空中で制御が効かなくなり墜落した場所は、ネーベン領の深い森の中であった。木々が緩衝材となって、二人は幸いにも大事には至らなかった。

「しっかし」

何だったんだと言ったファシルに、レイリアはわずかに間をおいて

「わからない」

と答えた。ファシルは正確な答えを求めていたわけではなかったので、レイリアの不自然な間に気づきはしなかった。


 シュレヒタスを脱出した二人はネーベンを目指すことにした。

ネーベンは商業が盛んな国であり、祭りも盛んに行われていた。

ファシルは御者が話していた武術大会のことを思い出していた。毎年開催されるその大会は、腕に自信のある者が世界中から集まり競い合う。ファシルは、今年の大会の参加は出来ないだろう考えていたところ、予期せぬ事態によりネーベンに向かうことになったので、それなら丁度いいと思っていた。ファイルはネーベンへ向かう道中そのことで頭がいっぱいであった。ウキウキとしたファシルと打って変わってレイリアはというと、表情にこそ出さないが違うことで頭がいっぱいであった。森を歩きながらに行われる二人の会話は何処かかみ合っておらず、ファシルは楽しそうに話をしているがレイリアは心ここにあらずといった様子で相槌を打っていた。


 ネーベンに向かう二人は森をしばらく歩いて、その日は夜になった。夜は肉食獣から怪物まで様々な夜行性の生き物が行動する。二人は野営できる少し開けた場所を見つけそこで野宿することにした。野営とはいっても準備する物等はなかったので各々勝手にくつろぎだした。レイリアは相当疲れていたのか、すぐに眠りについた。一方、ファシルはネーベンが楽しみで仕方なく眠れないでいた。どうにも落ち着かないファシルは野営地周りを散歩することにした。レイリアを起こさないように静かに

≪ドッラ≫

黒い球を呼び出し見張りとして配置してその場から離れた。


 ファシルは散歩しながら武術大会の事を考えていた。ファシルは人と競うという事をしたことが無かった。武術大会は自身の実力がどれほどなのか確かめることに最適の機会であった。ファシルは参加した場合の想定をじっくりと考えていた。そんなファシルを陰から見ている視線があったが、ファシルは武術大会が楽しみで気づかなかった。

ファシルはしばらく散歩しているとまどろんできたので野営地に戻って眠りについた。


 朝になり二人はネーベンに向け、引き続き森を歩いていた。前日までの、方角もわからなくなる程の獣道とは違い、ネーベンに向かう荷車が走る道に出ていた。

しばらく歩いていると二人は、立ち往生する荷車に遭遇した。その荷車はぬかるみにはまり抜け出せない様子であった。荷車の御者は行ったり来たりと忙しなく動いていた。荷車は一般的な大きさではなく一回り大きな荷車で、御者の使役する動物もそれに合わせて大きく見た事のない動物であった。

「どうしたものか」

今日中に届けなければいけないのにと焦りを声に出していた。それだけ御者は取り乱していた。よほどの事に見えたファシル達は荷車をぬかるみから出す手伝いをした。親切心もさることながら、もしかすると乗せてもらえるのではと考えてのことだった。歩き疲れていたのである。ファシルはさっそく取り掛かった。

≪ルードゥアーダ≫

荷車を少し浮かせて、ぬかるみから脱出した。


 ファシル達はネーベンに向けて走っていた。荷車で。

御者を助けたお礼に乗せてもらえることになったのだ。二人は御者に大げさなほど感謝された。荷車は森を抜けてネーベンに到着した。到着するまでの間荷車は快調に走り続けた。


 夕方にはネーベンに到着した。

ネーベンに着くと、御者が二人を引き留めた。御者曰く、助けて頂いた相手へのお礼は絶対にする事と旦那様に申し付けられておりますので、と。御者の運んでいた荷物は、とても大事な荷物であったらしく、そのお礼にと荷車の持ち主である豪商の屋敷に招いてくれた。屋敷へは違う使用人が車で運んでくれた。その車も荷車同様、一般的な物とは違った。ネーベンの豪華な屋敷が立ち並ぶ住宅街へとたどり着いた。そこにあるどの屋敷も大きく豪華であったが、招かれた場所は大豪邸といった立派なものであった。大豪邸の大きな扉が開くと、執事と家政婦が並んでいて、その列の一番奥、中央に大豪邸の主が迎えてくれていた。ファシル達は少し緊張したお面持ちをしながら中へと入っていった。


「さあ」

どうぞ召し上がってくださいと、家政婦に並べさせた料理をさして豪商は言った。豪商のおもてなしは豪華な食事であった。豪商は食事に対して造詣が深く、美味しいものを聞きつけては現地に足を運んでいた。さらに自身も料理を嗜むとあって、世界中から多種多様な食材を買い付け、ネーベンにて自身が所有するレストランで料理を提供しているという。今回は屋敷には豪商お抱えの料理人を呼んで料理を作らせたという事だった。大きな長テーブルに並んだ豪華な料理はどれも色鮮やかで、その中には豪商自ら発案した、世界に二つとない料理もあった。ファシル達はそれらを堪能した。

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