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第二十二話

「どこ行った?!」

「こっちにはいません」

シュレヒタスの街を行ったり来たりと奔走する衛兵の姿がひっきりなしに見られた。お尋ね者を探していたのだ。そのお尋ね者は国王を誘拐したとして重罪を課せられている。衛兵は必死になって探し回っていた。


 城を脱出したファシルは身を潜めていた。その場所はというと夜の繁華街にある店。ではなく件の鍛冶屋であった。衛兵から逃げている所をたまたま見かけて、声をかけてくれたのだ。ファシルはありがたくそのご厚意に甘えることにした。


 ファシルは店の裏の鍛冶場にいた。

「助かりました」

「いいってことよ」

声をかけてくれたのは、ファシルが以前話をした鍛冶師であった。鍛冶師は匿っている間、ファシルのことについて全く詮索しなかった。ファシルはありがたかったが、申し訳なくもあった。ファシルは手持ち無沙汰と匿ってくれたお礼として手伝いを申し出た。

「気持ちだけ受け取っておくよ」

大人しくしてなと鍛冶師は言った。ファシルの申し出が断られてしまったのには理由があった。それは以前、試しに手伝った時のことを踏まえてのことだった。ファシルは自分で申し出たにもかかわらず、鍛冶師の考えに納得してしまった。それでもファシルは危険な目を買って出てくれた鍛冶師並びにこの店に、どうしてもお礼がしたかった。ファシルはうーんと唸りながら考えていた。

(金さえあれば武器を買ってくんだけどなぁ……そうだ!)

ファシルはお金のことであることを思いついた。船で商人がくれた宝石を複製したことだった。ファシルは鍛冶師に、この店で一番の希少価値の高い鉱石について訊いた。鍛冶師は、また唐突に変なこと言い出したなと思いつつ、ファシルが何を考えているのか分からず懐疑的なまま、鍛冶場にある一番希少価値の高い鉱石を見せた。その鉱石はいびつな形をした大きな塊であった。ファシルは、今から行おうとしている事に関係はないが鉱石について訊いてみた。鍛冶師は少し呆れながらも鉱石について教えてくれた。


 鍛冶師が見せた鉱石は黄緑色をしていたが、この色がこの鉱石特有の色というわけではなかった。採掘された時の環境に依存して変色するのだ。その上、鉱石としてはあり得ない場所でも自生するという。水の中なら水色。洞窟の中なら灰色もしくは茶色。木々の多いところだと緑色といったところだ。この鉱石の色は多岐にわたり様々であった。

さらに、この多色の鉱石は不思議な性質を持つ。

加工すると綺麗に発色するのだが、全て同じ色になってしまうのだ。加工後の色は決まって銀色である。

元の色にかかわらず加工すると同じ色になってしまうので、それ故に加工前の状態で保持する者も少なくはなかった。ネーベンではもっぱら加工前の状態で取引されていた。

不思議な性質を持つこの鉱石だが希少な理由は別のところにある。この鉱石はいろんな所に自生するが、それらは全てどこであっても魔力を帯びており、その魔力にによって高温状態にあるので触れる事が出来ないのだ。採集する際は冷やさなければならない。しかし冷やす時間、温度など様々な要因でその鉱石は砕けてしまうのだ。小さくなってしまうと加工そのものが出来なくなってしまうので大きい状態であればあるほど価値が上がる。鍛冶師が見せた鉱石はとても大きくそれだけ価値があるのだ。


 ファシルは鍛冶師の話を興味深く聞いて、目の前の原石がとても貴重な物だと理解した。ファシルは気合を入れなおして言った。

≪ジズ≫

すると、まばゆい光を放ち鉱石が二つになった。ファシルは複製元と先の二つを見比べて上手く出来たことにほっとした。いつもと違う複製過程にファシル自身ひやひやしたが上手く複製出来たようであった。そうこうしていると表で店番をしていた奇抜な男が鍛冶場に来るや否や

「どうやら見つかってしまったようです」

早くお逃げくださいと言った。ファシルは二人に短くお礼を言って、その場からすぐさま退散した。奇抜な男は来た衛兵に対して丁寧な口調で対応し、白を切りとおした。鍛冶師は衛兵が去って行った後、ファシルが残したお礼を見てあることに気が付いた。元の鉱石に瓜二つであったが、複製先の鉱石の表面がほんの少しだけ欠けていることに気が付いた。鉱石の欠けた部分から中の色が見えていた。


 この鉱石には一つだけ、あまり知られていない逸話があった。その逸話も眉唾物ではあるがこういったものだ。

一般的には原石の状態では表面の色と内部の色は同じ色になっているのだが、極めて稀に表面と内部の色が違うものがあるという。それは表面の色にかかわらず、内部が黒色なのである。その希少性は桁違いで、人の生きる一生の内に出会えるかどうかといった具合である。さらにその黒色鉱石を加工すると銀色ではなく金色に輝くというのだ。その金色に輝く鉱石で作られた物を傷つけることは不可能だと言われていた。


鍛冶師はこのことを伝説として訊いたことがあるといった程度で信じてはいなかった。


ファシルの残したその鉱石の中は真っ黒であった。

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