第二十一話
吹き飛んだ玉座の間にて、ファシルは崩れそうな天井を見つめながら大の字に寝ころんでいた。ファシルは村の、ゼノムのみんなの仇を討つことができた。しかし、不思議な気分であった。微塵も満足感を得ることはなかった。
むしろ更なる渇きにつながった。
ファシルは、赤く染まったままの左目が疼くのを感じていた。その左目の赤はしばらくそのまま、羽付きが近くにいないのに戻ることはなかった。サイロスを倒したことにより魔力がさらに増幅した事による副作用であった。以前の様に力が暴走することはなかったが、増幅した魔力によりファシルはあることが頭の中を鮮明な映像として駆け巡った。
それは現在のファシルには見た事のない景色であったが既視感を感じていた。ファシルはある場所にいた。その場所は、そこ自体が眩しいくらいの黄昏色で染まり、神聖な輝きを放っていた。そこには巨大な建造物が見え、それは城のように思えたがシュレヒタスの城とは規模が全く違った。その建造物の目には大きな広い場所があり、そこにはずらっと羽付きが並ぶ。それらは全て整然と並び、皆一様に前列で果てしない輝きを放つ者達に集中している。その者達は他と一線を画す。その他大勢とは違い羽が四つあり、見た目は老若男女であった。絶対的な立場の違いが目に見えた。しかしその者達はさらに先を見つめている。その先は真っ白でそれ以上は認識できない。それは無垢な白で何があるのか分からない、まっさらな状態であった。しかし、ファシルにはその一つを捉えられた。姿形はわからないが確実に捉える事が出来た。それも凄まじい憎しみをもって。
すると、四つの羽をもつ者が一人、こちらに気づいたのか向き直る。そして何かを口にする。しかしファシルからは遠すぎて分からない。かろうじて、口が動いているので喋っていることがわかるといった程度であった。ファシルはそれを凝視した。その直後左目に激痛が走り、その映像は二度と見ることができなくなった。
ファシルは左目の激しい痛みで飛び起きる。映像が途切れる間際、ある旗が見えた。細部までは分からなかったが、その旗は大部分を白で作られていた。ファシルにはそれぐらいしか認識できなかった。だが一つだけファシルにもはっきりしたことがあった。王国は末端に過ぎないということだった。王国をさらに上から操っている存在、その上位の存在を目指すことにした。
そうこうしていると、玉座の間に王国兵が雪崩れ込んできた。それらはハッキリと人間であるとわかった。王国兵は、ファシルが玉座の間をめちゃくちゃにした思い込んで、さらに妙な尋問をしてきた。
「賊め、国王様をどこにやった」
人間は、足場の悪い玉座の間をファシルに槍を向けながら近づいてくる。
ファシルは、人間達は国王が羽付きであったという事は知らないのだと理解した。
人間はここで起きた一連の事、羽付きがなり替わっていてそれも死んだという事を知らない。ファシルは人間たちの考えを利用した。正直に、私が殺しました、と言うより遥かにマシな、賊による誘拐という事にした。
「国王を返して欲しければ俺を見逃すんだな」
ファシルはこの言葉を残して一目散に玉座の間だった場所から退散した。
これによってファシルはシュレヒタスではお尋ね者になった。




