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第十八話

 ファシルは鍛冶師達が休憩に入るまで作業を見ていた。すると鍛冶師の一人に

「興味あるのか」

と訊かれた。ファシルは、興味はあるが自分には向いてないと返した。そのファシルの言葉に鍛冶師は思わず噴き出した。

「やってもないのにか」

面白いやつだなと一通り笑うと鍛冶師はある誘いをしてきた。

「やってみな」

少しだけ手伝わせてくれるとのことだった。ファシルはその誘いに乗った。作業は、熱された金属の塊を叩いて鍛える行程だった。ファシルは大きな槌を持って鍛冶師が指示した場所を叩く。それだけなのだがこれが想像を絶するほど難しい。指示された場所を

ずれがなく、

適切な力で、

ここという瞬間に叩かなければいけない。これらが一つでも悪いとその金属はいい武器にはならない。ファシルはしばらくやってみたがうまくできなかった。

「どうだい」

できたかいと訊かれた。ファシルは、全くできなかったと答えた。

「そうだな」

その通りだと鍛冶師は言った。

「でもやった後とやる前とじゃ全然違うだろ」

まだ若いのだからすぐに諦めんじゃねえと鍛冶師に少し説教された。ファシルは確かにそうだなと思った。

「続けてれば」

どうなるかわからないだろとも教えてくれた。ファシルは鍛冶こそ向いていないが、鍛冶師に、続けることの大切さ、鍛練することの大切さを教わった。


 ファシルが鍛冶作業を体験し終えたころ、店の表が騒がしいことに気づいた。表に行ってみると、ファシルと入れ違いに店に入ってきた客が武器の修理について文句を言っていた。その客は大声で言いたい放題言った後店を出ようとした。まだ気が収まらない客は、その様子を見ていたファシルに八つ当たりとして肩をぶつけよとしてきた。しかしファシルはそれを避けると客だった男は盛大にこけてしまった。

「てめえ」

男は、行き場のないイラつきとこけてしまった恥ずかしさから、茹であがったように顔を真っ赤にした。そして、修理してもらえなかった剣を抜きだした。ファシルは店内で暴れないように外へと誘導するように移動した。


 ファシルは往来の真ん中まで茹で上がりを誘導することに成功した。茹で上がりは大声でよくわからない事を叫ぶと、すぐさま切りかかってきた。ファシルは咄嗟に腰に手を当てたが、丸腰だったので素手で対応しようと構えた。しかし直にそれを解いた。茹で上がりの剣は止まって見えた。ファシルは止まった剣を避けると間髪入れずに反撃した。その反撃は見事に決まって、茹で上がりはうめき声をあげながらその場にうずくまってしまった。ファシルは、茹で上がりがうずくまる時に落とした剣を拾いあげて、まじまじと見た。その剣は使い方が悪く、手入れも満足にされていなかった。


「何をしている!」

ファシルが茹で上がりを懲らしめていると、巡回していた王国兵に見つかってしまった。ファシルは丁度、茹で上がりの剣を拾ったところだったので、傍から見ればファシルが悪者に見えた。ファシルは不味いと思って王国兵とは反対の方向に逃げようと向き直るとすでに包囲されていた。先ほどまでいた野次馬たちも王国兵が現れるとすぐに解散した。ファシルは捕まってしまい、連行されていった。連行される途中、レイリアとすれ違ったがレイリアは店の品物に夢中で、気づくことはなかった。


 ファシルは連行される途中、誤解だと訴えたが認められることはなく、無視されそのまま連行された。ファシルが連行された先は王城であった。


 ファシルが城の門をくぐると、門はすぐに閉じられた。城の敷地内は広場が大きくあり、そこで解放された。解放されたファシルの前に茹で上がりの剣が投げ込まれた。ファシルはその剣を杖のようにつきながら立ち上がると、多数の王国兵に囲まれた。ファシルは剣をしっかりと構えた。王国兵の様子がおかしかったからだ。人の気配がなかった。どの王国兵も焦点が合わない。すると一人切りかかってきた。ファシルはそれを躱して切った。ファシルの剣は王国兵の背中を完全に切り裂いたが血が出ないどころか、肉を切った感触すらなかった。まるで泥を切ったような剣の通りの悪さがあった。ファシルには予想通りだったので驚きはしなかった。それよりも茹で上がりの剣の切れ味の悪さと王国兵もどきの感触の相乗効果で、剣の通りの悪さが命取りになると考えていた。素早く切ることは出来ないうえ、刺さろうものなら抜けないまま剣が折れるだろうといった有様であった。ファシルは持っていた剣を、正面の王国兵もどきの額目がけて投げた。すると案の定ヌルっと、ゆっくりと刺さった。人もどきだと再確認したファシルは最初の人もどきの剣を手に取った。その剣のほうが遥かにマシであった。

≪ジズ≫

ファシルは両方の手に一つずつ剣を持った。

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