第十六話
ファシル達はハーフェンに到着した。
王国直轄の港町であるハーフェンはリーケスより大きく、いろいろな街から船が寄港する、物資を運ぶ要所とした貿易港であった。一日当たりの船の行き来が多く、王国直轄ということもあって積み荷は厳重に調べられる。それに伴って王国兵が大勢配置されていた。通常ならハーフェンを素通りは出来ないがファシル達は商人の計らいで積み荷に紛れて下船することとなった。さらに商人は国王の勅令で、とある荷物を輸送することになっていたので、王国兵の税関調査を書類一つで突破した。
税関を突破したファシル達は積み荷から出た。この時ファシルは王国勅令の荷物に妙な既視感の様なものを感じていた。その荷物は大きく一際厳重なものだった。その荷物がどうしても気なったファシルはまじまじと見た後、触れようと手を伸ばしたその時
「何してるの」
早くしないととレイリアの言葉に急かされ、ファシルはその荷物を確認することなく、ハーフェンの街に出た。王国兵だらけの昼間に行動することは到底出来ないのでハーフェンで一夜を過ごすことになった。街外れにある、商人の知り合いの宿屋を手配してもらった。宿屋の主に商人の名前を出すとすぐに部屋を用意してくれた。しかしその日はあいにく、一部屋しか用意出来なかった。そのことをきいてレイリアは何やらぶつぶつと言っていたが、ファシル達は二人で一部屋を使うことになった。
部屋は、ベッドが二つあり簡素だがしっかりとした造りだった。レイリアは少し緊張した面持ちであった。ファシルはその様子に気づくことはなく、真っ先にベッドに向かった。ファシルは港に到着直前の怪物の一件で相当疲れていたらしくベッドに横になるとすぐに眠りについた。そんなファシルを見てレイリアはため息をついた。レイリアの緊張はほぐれたようだった。ファシルの寝顔を見たレイリアの顔は少しほころんでみえた。
とっくに日も暮れて夜も深まるころ、ファシルは目が覚めた。眠りについたのが昼間だったため、変な時間に起きてしまったのだ。ふと、横のベッドを見るとレイリアはいなかった。どこに行ったのだろうかと考えていたファシルは、この時間なら大丈夫だろうと思い少し散歩することにした。
宿の玄関に向かい受付を見ると主は不在で代わりの者が対応していた。対応といっても夜遅くに来る客も滅多にいないので暇なのか、睡魔と格闘していた。受付にレイリアのことを訊いた。少し驚いていた。
「わからないですね」
私が変わる時には既に出ていらしたので、ということだった。ファシルはそれ程気にしているわけでもなかったので、軽くお礼をして外に出ようとした。すると、受付がファシルを呼び止めて、旦那様ならご存じかもしれないと教えてくれた。ファシルは、旦那様すなわち宿屋の主の所在を訊くと
「この時間なら表ですよ」
一服しているということだった。分かったと短く返して今度こそ外に出た。
ファシルは宿屋の主にレイリアの所在を訊いた。
「わからないね」
気付かなかったよということだった。ファシルは話を変えて、王国への道を訊くことにして事情を簡単に話した。すると宿屋の主は
「ちょうどいいや」
用事を頼まれてくれないかと言った。詳しく聞くと、宿屋仲間に届けないといけない物品があり、その輸送の護衛をしてほしいとのことだった。ハーフェンからシュレヒタスまでの道のりに怪物がでるらしく、輸送を先延ばしにしていたのだが期日が迫り困っていたのだ。
道中、怪物を警戒した王国兵が多く見回りをしているらしくファシルとしても見つかりたくなかった。なのでこの依頼を受けることにした。物品の輸送は明朝に行われることになっていた。ファシル達にとっても悪くない時間だった。




