転移者・転生者狩りの傭兵団
「主より、連絡だ。ルイーザ嬢が味方に付けた転生者が、明日にはここに向かってくる。タイプは[ぐんじちーと]あの杖から鉄ツブテを出すタイプだ。ボウガンみたいな撃ち方をするとても厄介な・・」
連絡を受けていた男は言葉を遮る。
「使者殿、皆まで言わずともわかっているとも。あの高速で鉄ツブテを打ち出す[てっぽう]でしょ。これは今まで通り対処するだけ」
「「「ハハハッハハ、楽勝だぜ!」」」
「さすが、転生者殺しの「ハウンドドッグ」団の皆様、期待してますよ。ルイーザ嬢も転生者に付いて戦場に来るとの情報あり、村と令嬢は、切り取り自由、但し、令嬢は当家に二度と返って来ないようにとのこと、我が主の要望です」
金貨の入った袋が渡される。
「依頼主様に、宜しくお伝え下さい」
(はん。お貴族様のお家騒動も物騒なものだぜ。当主の座を欲しさに、義兄が妹を売り払うなんて。まあ、俺には関係ないか。いかん。問題が簡単すぎて、団員の気が緩んでいる。敵は身内だ)
「馬鹿者!」と笑った部下を窘めるのは、今まで使者と会話していた傭兵団「ハウンドドッグ」団長リグルーだ。
平民出身、齢40代、経験豊富な指揮官である。
「いいか、もし、ガキじゃなく、本物のあちらの世界の騎士が来たら?の可能性を捨てるな。油断で戦場で死ぬ奴はいっぱいいただろう」
「「「ヘイ!」」」
☆
「あの、何で転生者殺しが簡単なんですか?転生者は[ちーと]と言う異界渡りの能力があると吟遊詩人が唄ってましたよ」
新入りが年配者に尋ねる。
「はん。お前、聖剣を持った子供と、棒きれを持った剣聖、どっちが怖い?転生者が聖剣をもった子供だ」
「微妙な質問ですね」
「おう、明日はお前も戦場に来い。見て学習するんだ。分ったな!」
「はい!やったー戦場に行ける!」
☆☆☆1日後
「団長、物見から報告、転生者が来ました。転生者1と後方に令嬢1に従者とメイド各1人づつ、転生者は、黒い杖を持つ[ぐんじちーと]タイプは昨日の報告と同じ」
「年齢は、10代半ばぐらい。で、確認できたのは黒髪です」
「「「ハハハハハハ、楽勝だな」」」
現場が弛緩している。リグルーは渇を入れる。
「おい、その転生者が、向こうの世界の本物の騎士の可能性を捨てきるな。それに、この世界にも、本物の、鉄ツブテ使いがいるとの噂もある。そいつの名は、鏖のアリサだ」
「鏖のアリサって、ギャハハハハ、有るわけねえ、たった一人で盗賊団100人以上、それも傭兵崩れを壊滅したとか、話盛りすぎたぜ」
「黒髪の美少女が、弱き者のために戦う吟遊詩人が好む話だ。大方、こそ泥を捕まえた女冒険者を大げさに言っているだけだろ」
(ち、逆効果か、でも、こいつらは長年の経験がある。戦場に出れば変るだろうよ)
リグルーは心の中で独りつぶやきながらも、彼自身も負ける可能性は考ていない。
鏖のアリサの話は荒唐無稽すぎるものばかりだが。リグルーは傭兵団の兄弟分から、直接に聞いた。その時、兄弟は震えていたな。
村に無法を働いた隣の団が瞬く間に壊滅したとか。でも、兄弟酔っていたな。
イマイチ、この噂がどの程度本当か、リグルーには、判断付かない。
☆
戦場に着くと、先遣した部下から報告が来た。
「団長!転生者一行が、村の入り口の草原まで来ました。望遠魔法で確認したら、黒目です。これで、黒髪黒目は確定、団長心配しすぎかな。やっぱり外れの方ですよ」
草原の向こうから、黒髪黒目の少年が現れた。服は緑の斑模様の服を着ている。
僕はダイキ、夜中ゲームをして、そのままパソコンの前で寝てしまった。起きたら、異世界に転移していた。ゲームの格好の登場キャラの格好のままなので、最初はログアウト!と叫んでしまったが、帰れない。現実だ。
そう、僕がやっていたのは軍事系シュミレーションゲームで、僕は兵士だ。銃もある。
ポイントをためると、弾や新たな兵器と交換できるシステムだ。この無法傭兵団を倒して、ポイントを貯めるぞ!
そして、ルイーザちゃんともっと仲良くなるぞ!
「ルイーザちゃん。見ていてよ。僕がこの悪者、かる~くやっつけてやんよ」
「ええ、ダイキ様、宜しくお願いします」
(ちゃん?)
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