世界バクハツ1日前〜王様、せめて一ヶ月前に召喚しろ!!!〜
ゆるゆる設定です。サクッと読めますので、暇つぶしにどうぞ。
「はぁー、最近俺ついてねー」
人気のない道で、俺はため息と共に言葉を吐き出した。
今日のことだ。いつも学校で影になりながら過ごしていた俺は、学校1の美少女に授業終わりに呼び出された。その女の子は明るくて清楚系なクラスの人気者。先生にまで好かれていて、素行も丸。これはいわゆるアレだろうか。
自分でゆうのも何だが、俺はそこまでイケメンではない。だが美少女だぞ。期待するなという方が無理な話だ。
まるで小説の主人公ではないか。本を1人寂しく読んでいた甲斐があった。高鳴る胸を押さえて、ダッシュで体育館裏に向かう。頭にはどういうシュチュエーションで何と返事をするかでいっぱいだ。
そこにはやはり、後ろに何かを隠して俺を待つ美少女がいた。
「あのね、実はあなたに言いたいことがあって……」
「はっハイッ」
声が上ずってしまう。両手は手汗でベトベト。心臓の音がドクドクうるさい。
「実は……」
ゴクリ。唾を飲み込んでその時を待つ。
「……………ドッキリでしたー!!」
「は」
美少女は、いつもの性格からは想像できないような顔で告げた。
俺は固まるしかなかった。
「てかさー、陰キャのお前に告白するとかありえねーじゃん」
「ど、どういう……」
「え、まさか期待してきたのー? キモ。これ罰ゲームなんだけど。じゃーね」
嵐のように去っていく彼女を棒立ちで見つめる。
「何だよ、クソっ……」
「はぁー」
思い出したらまた腹が立ってきた。人は見かけによらない。怒りを込めて足元の空き缶を蹴る。
「えいっ!」
「イテッ」
飛んでいった空き缶の方向に目をやると、そこにはリーゼントに着崩した学生服。テンプレのヤンキーがいた。やべっ。顔面蒼白で逃げようとする。
「おい、にーちゃん何すんだよッ!!」
「ヒィ!!!」
ヤンキーがこちらへ走り、殴りかかろうとする。あぁ、最近俺本当ついてない……。
その瞬間。
「えっ」
「なっ」
眩い光が俺を包んだ。ふと足元を見ると、円形の模様が光っていた。あまりの眩しさに目を瞑る。
「は」
まぶたを開けた先に映っていたのは、玉座に座る王様と、カーペットの上に立ち周りを囲んでいる騎士だった。
「おぉ。異世界から勇者殿が召喚されたぞ!」
「やったぞー!」
「これで世界は救われる」
……何が何だか分からない。見たところここは王城のようだ。このテンプレ感、まさか……。
「異世界召喚!!!」
まさか、本当に小説の主人公になるとは。だが、どうせ俺はただの陰キャ。元の世界に戻るよりかはこの国でヒーローになりたい!
自分の状況を完全に理解した俺は、王様に尋ねる。
「で、俺は何をすればいいんですか」
「そうかそうか」
俺が世界を救う決意をしたところを見て、王は嬉しそうに頷く。真剣な顔をして口を開く。辺りに緊張が走る。
「実はの、世界バクハツ1日前なのじゃ」
「は」
「魔王に仕掛けられた爆弾を見つけ、世界を救ってくれ!」
「はぁ〜!!! 1日前って何だよっ! せめて1ヶ月前に召喚しろー!!!」
勇者の嘆きは城中に響き渡った。
※ ※ ※
あのくそジジイに召喚されてすぐに城を飛び出した。もっと早く呼べよ。このままじゃ俺も爆発に巻き込まれて死ぬ。
あの後どうやって爆弾を見つけるか聞いた。その答えがこうだ。
『爆弾の見つけ方? そんなの勇者パワーでどうにかせい』
「ふざけんなっ!」
近くにあった木を思いっきり殴る。
勇者パワーって何だよ。馬鹿にされているのか。とにかく爆弾を見つけなければいけない。あぁ、もうこうするしか!
「ゆ、勇者パワー爆弾はどこだ!」
『ここを左に曲がったところです』
「えっ!」
いきなり頭の中に言葉が浮かんできた。これはスマホのルート検索か。すまん王様。勇者パワー本当にあったわ。
心の中で謝りながら道案内に従う。たどり着いたのは、粗末な一軒家だった。
「なぁ、本当にここにあるのか。ボロすぎない?」
『ルート案内を終了します』
「おい、ちょっと待てよ!」
本当に終わりやがった。ここに爆弾があるのか? 少なくともあるとしたらここ以外だと思う。こんなボロいと風で崩れて起爆しそうだ。行くしかない。
覚悟を決めてドアに手をかける。
「お邪魔しまー……」
「ん?」
「ぎょえーーーーーーーー!!!」
視界に入ってきたのは黒髪の長髪をなびかせ、こめかみにツノを生やした男だ。禍々しいオーラがすごい。こいつはもしや……。
「ままま魔王っ!!」
「いかにも」
何か話しているが頭に入ってこない。いやまさか本当に魔王がいるとは。
「爆弾はどこだ!」
「我輩のことか?」
「え?」
「我輩が人間に仕掛けた爆弾は我のことだ。ほら見ろ」
そう言って服についた2本の導線を見せてきた。まさかとは思うが……。
「どちらかを切れ」
「いやおかしいだろっ! 何で魔王自身が爆弾なんだよ!」
「暇だったからな」
「暇潰しで世界を爆発するな!」
この世界の奴らは頭がおかしい。イカれてる。もう投げやりになってきた。
「わかった。切るよ」
「そうか、これを使え」
渡されたのはハサミ。いやそこは、この我輩を止めてみろとか言って戦い、勝った後に切る流れだろ。もういいや。
ハサミを握る。赤か青、どっちにすべきか。だがここは日本の知識を使おう。
「ど ち ら に し よ う か な。 赤か、ていや!」
その刹那。
ーーードッカーン
爆弾は世界を粉々にした。
GAME OVER
『最初から始めますか?』
ーはい
ーいいえ
読んでいただきありがとうございました!
一応主人公は、自分の知らないゲームの世界に召喚されています。そのゲームは世界中でタイムアタックされていて、この勇者はゲームオーバーしなかったら良い順位を狙えていました。