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異世界ご飯とおやすみなさい

 宿の入り口には大きなカウンターがあって、そこで宿泊の手続きをするらしい。

 宿泊しない人は右手にある食堂にそのまま入る。

 ちらっと覗いたら二人ずつ二組お食事中。両方とも男女の組み合わせ。

 食べてるものをジロジロみるのは失礼なので、ここまでにしよう。

 二人用のテーブルは十席。くっつけたら四人でも座れるね。

 パーティションで仕切られた奥がどうなっているのか分からない。

 結構広めで窓が大きいので明るくて感じが良くて、ところどころに置いてある植物が可愛い。


「おーい、客を連れてきたぞ。四人一泊、部屋は二つでいいか?」

 ジェイクさんが声をかけると、食堂の奥にいた女の人が作業の手を止めてカウンターに来てくれた。


「いらっしゃい、ここに名前と年を書いてね。一泊2食付きで一人銅貨8枚だよ」

 ここは宿泊すると食事が安くなるので、こうして先に手続きをしておいた方がいいそう。他の宿も大抵そうなってるとジェイクさんが教えてくれた。


 先に食事をするために食堂に入った。

 奥の仕切られたところへさっさとジェイクさんは入っていく。大きなテーブルと椅子が十客。こっちは大人数用らしい。

 さっきの女性も来て注文を取ってくれた。


「オリガ、こいつらには昼飯。俺はエールとつまみを何かくれ」

「了解。パンは甘いのと甘くないのがあるよ」

 メニューは選べないそうで、その代わりにパンの種類がいくつかあるみたい。


 私と夕彦くんは甘いパン、圭人くんと光里ちゃんは甘くないのを選んで、後で少し交換することにした。


「ここの飯は村一番なんだぜ。近隣の中でもいい線いってる」

 冒険者の楽しみは酒と食事くらいなもんだからなとジェイクさんは笑っている。


 圭人くんはそんなジェイクさんに周囲の魔物の話を聞いたりしてる。

 夕彦くんはこそっとタッチパネルをいじって自分の使える魔法の確認。

 光里ちゃんはみんなの手に浄化をかけてくれた。

 ジェイクさんにはしないらしい。使える魔法とか知られない方がいいのかな。


 しばらくして運ばれてきたのは美味しそうなお肉の煮込み。お野菜が少ないのはしょうがないのかな。

 上条さんのところでは畑で野菜をいっぱい作ってたから、ほぼ毎食サラダが付いていた。もしかしてそれってすごく贅沢だったのかも。


「おいし……」

 お肉はほろほろと崩れてとても柔らかく美味しい。


 人じゃないからいいかなと鑑定をかけてみる。


 鑑定結果・クレイシープの煮込み。クレイシープの肉とトマト・調味料を一緒にじっくりと煮込んだオリガの宿自慢の一品。これを目当てに近隣の村からも人がやってくる。

 

 鑑定が、進化してた。

 ここまで長文じゃなかったよね?

 ちょっと文章に優しさ入ってる? 


 まぁ、それで困ることはないからいいかな。

 後でみんなに報告しておこうと思いながら、私はお昼ご飯を美味しくいただいた。

 甘いパンはバターたっぷりのデニッシュで、甘くないのは白パンだった。

 

 両方ともとても美味しかったので、明日出発するときに買えるようオリガさんに頼んでおいた。多めに焼いてもらえるらしい。


 昼食後、ジェイクさんは村の見回りをするためにまた出かけるということで、ここでお別れということになった。

 私たちはここに泊まるということになったので、もう監視は必要ないそうだ。

 最初からそんなに警戒していなかったくせにね。

 ここを紹介してくれたお礼として、ジェイクさんの分の代金はこちらで払うことにした。エールとおつまみ代は銅貨二枚。


 オリガさんに二階の部屋に案内されて、光里ちゃんと部屋に入った。

 シングルベッドが二つと机と椅子だけのシンプルな部屋。部屋の奥の扉は洗面所とお手洗い。大きめの鏡が付いている。

 清潔なシーツと、掃除が行き届いた部屋は気持ちがいい。

 私たちにはストレージがあるので解く荷物はない。手持ちのバックは見せるためのものだから、移動の時にも持っていく。


「ここは、きっと良い宿ね。最初から運がいいわ」

「そうだね。明日もきっといっぱい歩くから今日は早めに休まないと。その前にお買い物いく?」

 特に必要なものはないけれど、普通に売られているものを見ておきたい。

「じゃあ圭人たちを誘っていきましょうか」

 

 四人で色々見ながら村を歩く。視線はそのうち気にならなくなった。

 村には商店街みたいなところはないようで、お店かなというところが、ポツンポツンと道の角とかにあるだけ。

 

 売っているものはほとんど食品で、野菜は少なめ。

 乾物や保存食みたいなものが多いかな。調味料は、塩、砂糖、香辛料。バジルやセージが名前そのままで売られている。塩は岩塩を砕いたものや精製塩など、結構種類が多い。

 

 異世界で成り上がりものの定番、マヨネーズはなかった。

 実はその辺はもう上条さんに聞いていたんだけど、生卵を食べる習慣がないからマヨネーズは作れないんだって。確かに危ない卵使ったらお腹壊しちゃうからね。

 

 肉はそのままよりもハムやソーセージに加工されていたり、干されていたりしている。

 大抵が魔物肉。さっき食べたクレイシープも大型の魔物だそう。

 ジェイクさんが教えてくれた。形はどう聞いても私たちの知ってる羊なんだけど。

 日用品のお店は村に2軒あって、両方の店主は親子なので値段も売っているものもほとんど一緒。


「おい、ありす。このタオルずいぶんゴワゴワだな」

 こっそりと圭人くん。


 確かにちょっと繊維の質が悪いかな?

 日本と比べてはいけないけど、やっぱり比べちゃう。

 うん、作れるものは私が作ろう。


 夕方まで一通り回って途中お茶をしたり、街の外れにある畑を眺めたり。

 上条さんのところの畑とは比べてはいけないこともわかった。

 土地が痩せているわけじゃないんだけど、育ちがちょっと悪いのはそこまで農業が発展してないから?


 宿に戻り美味しい夕食をいただいて部屋へ行き、光里ちゃんに浄化をかけてもらってから寝巻きに着替える。

 寝巻きといってもすぐに外に出ても大丈夫なように、長袖長ズボンのスウェットもどき。

 お風呂は付いていないのでお湯をもらって体を拭くらしい。私たちには浄化があるから、1日くらい入らなくても大丈夫。

 お外で入りたくなったら人目のないところで小屋を出せばいいし。


「光里ちゃん、おやすみなさい」

「ありす、おやすみ」


 光里ちゃんの優しい声を聞いて安心しちゃったのかな。

 そこまで大変なことがあったわけじゃないけど、お布団に潜ったらぐっすりと寝てしまった。


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