全力で行こう
2018年 マラソンの練習をしていた時のお話
大人になると「全力を出し切る」機会はあまりない。
体のすべての力を使い、血の一滴、肺の中の最後の空気まで絞りだすかのような感覚が嫌いではない。
たとえばマラソン。
ゴールにたどり着いたときに、エネルギーが空っ穴になるためにはどのくらいのスピードで走れば良いだろう。少しだけ体力が残るようにスピードをコントロールしてゴールに挑む、そして残り100メートルを切った時、全ての力を開放し全力をたたき込むのだ。
ともすれば怠けてしまう弱い心を叱咤する。
「もっとスピードを上げろ!全開だ!あと80メートル!」
「頑張れ!へばるな!あと50メートル!」
「絞り切れ!まだ残っているぞ!あと30メートル!」
「最後まで力を抜くな!駆け抜けろ!!ゴーーール!!!」
ゴールしてスピードをゆるめるともう立っていられない。すぐわきに倒れ込む。もう息しかできない。使い切った、体のすべてを、力のすべてを。ほのかな満足感がある。もしここで、少しでも力が残っていると、激しい後悔の念が襲ってくる。
「俺は力を抜いたのか?」
「まだやれたのに?」
「なに怠けてんだ!!このやろう!」
そこに勝負とか記録があるわけではない。だれかに認めてほしいわけじゃない。ただ、根が怠け者の自分を戒め、全力を出せる状態を維持できればそれで良いのだ。
自分は全力でやった、その自分に納得する。何に対しても言い訳はしない。なぜなら全力で挑んだのだから。
そんな自分で常にありたい。