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第二十九話

 四年位前だろうか、俺は高校三年生。

 学校で一番ギターが上手い。


 その頃は、それで充分だと思った。

 一早くネットでギターの弾き方や理論を調べる事を覚え、様々な曲を次第にそれは自分の音になって行き、オリジナル曲が作れる。仲のいい奴らと組んだバンドは、それだけで人が集まった。


 ここまでは良かったんだけど、回数を重ねる毎に次第に顔見知りに飽きられ始め、その頃にはよく来てくれていた先輩や後輩、同級生もなにかと来れない理由をつける様になると、俺は危機感を感じた。


「知らない人が増えないとこのまま終わる」


 そう考えた俺は、なるべく丁寧に親しみ易くなる必要があると思い、身内ネタから初めての人も楽しめて話しかけ易くなるように考えた。


『実力のある後輩キャラ』


 中学時代にサッカー部だった事もあり、俺は一つ下の自分より上手かった奴。それでいて、周りといい関係を築いている奴を参考にした。


 俺はそうやって、いいと思ったモノはどんどん取り入れていく。次第にそれは徐々に人が集まりバンドの形を作り、気がつけば期待されるような、他の高校生バンドとは違う一つ抜けたバンドになっていた。


 このままいけばプロになれる。この時俺はその事を全く疑ってはいなかった。


 だが、それは突然崩れる事になる。

 きっかけは、普段通りのとるに足らない高校生イベントだった。インディーズのバンドとも対バンしていたし、俺たちにとってはファンを増やす機会。


 いつも通り、パフォーマンスを行い他のバンドが呼んだお客さんの中から、ライブが好きな人を取り込んで行く。もちろん自分達も多くの人を呼んだ。


「おはようございます!」


 その日も普段と変わらず、対バンのバントと挨拶を交わした。だが、現れたのは男女混合の中学生バンド。そのバンドは、俺たちがオリジナルと言ってもムーンリバーの様なカバーばかりの中、ほとんどの曲をオリジナルですると言った。


 中学生がオリジナル?

 作ればいいって物じゃない。アレンジ力が伴わなければ、誰も知らないだけの不安定な曲になってしまう。しかも一番最初に出演すると言う事はハコにも実力を認めて貰えていないバンド。


 俺たちはタカを括り、リハーサルを見る。

 案の定、ハコでやるのは初めての様子で俺は安心していた。だけどそれは、本当の天才を知らなかっただけだったんだ。


「よろしくお願いします」


 そう言って、軽くまるで何年も触っていたかのようにムスタングギターを自由にかき鳴らした。その姿は可愛らしい少女が遊んでいるような、それでいて力強く正確なフレーズは、感動と共に俺を絶望させた。


「はは……これは無しっすよ」


 控えめに言って化け物。俺の練習してきた5年間が一瞬で抜かれる。だが、そのバンドはそれだけじゃ終わらなかった。ドラムの男も充分に化け物だった。


 絶望感の中、俺は必死に練習してきた事を出した。多分それまでで一番のパフォーマンスだったと思う……。


 だけど、その天才は俺たちなんか眼中に無い様に普通に楽しんでいた。




♦︎



「ちょっと待って下さい。今のところヒロさんは絶望しただけじゃないですか!」

「うん……」

「そのバンドって……」


「祐樹も知ってる。ハンパテだよ、正確にはその前身のバンド。かながまだ初心者の頃の話だよ」


 美波ちゃんの憧れのバンド、ヒロさんは高校生の時に会って居たんだ。


「でもそれじゃ、プロになったのはハンパテで……ヒロさんは?」

「ハンパテはインディーズだよ。俺は、そのあとやる気を無くして辞めたドラムの変わりに、サポートでその時のハンパテのドラムを誘った」

「引き抜いたんですか?」

「いや、学生のドラムやベースなんて上手ければ掛け持ちは普通だからね」


 僕は、それを聞いてなんとなくヒロさんとハンパテの関係を理解した気になった。


 それから、ヒロさんは続きを話し始めた。今まで見えなかった過去。初めて会った時、俺は平凡だと言っていた理由がなんとなく分かった気がした。



♦︎



 その後、ドラムの雅人はハンパテを抜けた。理由は教えてはくれなかったけど、多分雅人はギターボーカルのまひるの事が好きだったのだと思う。


 だけど、恋愛感情以上に圧倒的な実力差を埋める為、何かハンパテには無い物を俺たちに見出したのだろう。


 サポートで雅人が入って一週間。今まで出来なかったアレンジや彼のアイデアを取り入れて行く事でスターリンは劇的に進化した。

 そんな中、彼は言った。


「ヒロタカさん、正式にメンバーにして下さい」

「俺は構わないけど……いいんすか?」


 ハンパテの事を気にしながらも、俺はその時決意したんだ。俺たちは俺たちのやり方でプロになる。


 人って言うのは不思議なもので、出来る事を全部やって来たと思っていた俺はチャンスが来る度今まで見えていなかった物や、出来る事の幅が広がって行った。


 それでも、ハンパテや先輩のバンドに勝てたと思った事は一度もない。だけど、俺たちはしっかりと人を集めて着実に前に進んでいると思った。


 それは、ハンパテより先に結果として普段通りライブをしている中、その人は突然現れた。


「なぁ、アレって……」


 箱には200名近く入っている。だが、3つしか対バンしていない中メインは俺たち。だけど、会場はスーパーの袋を持った普段着の男の話題でざわついている。


「ヒロタカ、誰か呼んだの?」

「いや、ジュンさんは今日来れないって言ってたっすよ?」

「飛び込みかハコに挨拶なんですかね?」


 メンバーもそれが気になっている中、楽屋に慌てて入って来た対バン相手が息を切らしながら言った。


横山源(よこやまげん)が来てる……」

「うそ? マイスタの?」


 メロディックパンクの頂点とも言えるギタリスト。この時俺は、何が起こっているのか理解出来なかった。

お読みいただきありがとうございます。


過去編はちょっとだけです!


♪♪♪


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