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第二十七話

「俺はいいとして、西村はどうなんだよ? 曲作るの結構大変なんじゃねぇの?」

「まぁ、みんなにあれだけ言ってるからね。僕だけ何もしない訳にはいかないよ」

「いや、お前は充分過ぎるくらいやってるよ。……悪いな」


 狭山はまだ、気にしているのだろうか。正直僕は彼が言うように巻き込まれたとは全く思っていない。


「あのさ、BOOM HALLの事……」

「タイミング見て、頼みに行かないとな」

「いや、ちょっと僕なりに調べてみたんだけど」

「早えな。それで、どうだった?」


 僕は狭山に、ヒロさんと話していた内容を伝えた。すると彼は、険しい表情をしてから言った。


「西村……やっぱお前、すげーわ」


 その反応に、僕は少し複雑な気持ちになる。ヒロさんと話している事を伝えられない事にもどかしさを感じた。


「あ、結構考えてくれてる中悪いんだけどさ。その件俺に預からせてくれないか?」

「狭山が? 別にいいけど」

「ちょっと本気で考えてみるからさ、ダメだったら言ってくれよ」

「そんな、ダメとか……」


 狭山は、気合いを入れる様に顔を叩くとノートを開き集中し始めた。僕も席に着くとスマホに入れていた歌詞を推考する。


 教室では、離れた席の二人が黙々と机に向かうという意識の高い受験生の様な光景になった。


♦︎


♦︎


 昼休みになると、美波ちゃんが席に来て、続く様に高田さんも来た。二人はいつの間にか少し仲が良くなった様に感じる。


「あれ? 狭山はどうしたの?」

「太田とどこかいったよぉ?」


 なんとなく、二人が自然に話しているのが新鮮だった。


「西村くん、新しい曲は出来そうですかぁ?」

「うん。とりあえずイメージはできて来たよ」


 それだけじゃない。僕自身もいつの間にかこのメンバーと自然に話している事に驚く。数ヶ月前まで学校で休み時間に女子と……いや、友達と話している事すら想像は出来なかった。


 いつの間にか、こうやって自然と話せている事が僕には不思議に思えるというか、バンドって凄いんだなと感じる。


 その日、狭山は結局僕らの元には来なかった。だけど、朝の事を思うとあいつは何かを考え動いているのだと思う。終礼の時、狭山は美波ちゃんとも話さず何かを考えている様だった。


「祐樹……」


 帰り際に、美波ちゃんは僕に声をかけた。


「あのさ、話したい事があるから、終わったらちょっと教室で待っててくれない?」

「いいけど……」


 そう言って、放課後。一人、また一人と帰っていく中、僕は一人になった。


「遅いなぁ……忘れてるのかな?」


 もしかしたら約束をした事を忘れているのだろうかと考えてしまうほどに、日が少し傾き始めた。


 何もしない訳にはいかず、僕は新曲のイメージをスマートフォンに打ちながら時間を潰した。


「待った?」

「美波ちゃん、遅かったね……」

「ごめんね」

「別に、いいけど……」


 少し薄暗くなった教室。西日が入り込んで来ているのがわかる。オレンジ色の光が美波ちゃんの頬を撫でる様に照らした。


「あのね……言っておきたい事があって」


 僕は、少し思い悩んだ様な彼女の表情に、どこか期待と不安が混じる。もしかしてこれは、以前結果的に告白してしまった時の答えをくれる気なのではないだろうか。


 少し俯いている彼女に、僕はもう一度はっきりと気持ちを伝えるか悩む。正直、タイミングとしては最悪だ。これからみんなで頑張ろうとしている中、彼女が出来ても楽しんでいる場合じゃない。


 なにより、狭山に悪いと思った。

 彼には別にそんな気は無いのかも知れない。だけど、このタイミングで言われたら僕は祝福する事は出来ないだろう。


 色々な事が頭の中をぐるぐると回る。


「あのさ、今じゃなきゃダメかな?」

「うん……ダメかも」


 え、ダメなの?


「先に言っておいた方がいいと思う」


 そう言われ、僕は悟った。

 これはダメな方だ……多分彼女は今はそんな風には見れないとかそういう事を伝えるつもりなのだろう。


 無理もない。

 今のままだと少なからず贔屓目で見てしまうと思っているのだろう。


 僕は覚悟を決め、息を飲んで聞いた。


「わかった……それで、何かな?」



 彼女はしばらく黙り、口を開いた。


「祐樹には、何が見えてるの?」

「へっ?」

「前から思ってたのだけど、時々近くにある影は何?」


 影……?

 一体彼女は何の話をしているのだろうか。


「だっていつも話しているよね? その影と……前も聞いたのだけど、あの時ははぐらかされたというか……言えない事なのかなって」


 ちょっと待て、もしかして美波ちゃんにはヒロさんの事が見えているのか? いや、影と言っている以上僕みたいに見えている訳じゃない。


「美波ちゃんには、影が見えるの?」

「……うん。今は無いけど、時々ぼんやりと黒い影と話している様にみえる」


 そうか、彼女には見えて居たんだ。買い物に行った時も、家に来た時も……。


 そうきづいた僕は、覚悟を決めた。


「ごめん……見えているなら、言わないとね」

「……」


 彼女はコクリと頷くと僕の目をしっかりと見て逸さなかった。


「僕のそばには幽霊がいるんだ……」

お読みいただきありがとうございます。


二人の世界にもう一人


♪♪♪


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