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第二十四話

 家に帰ると僕は、早速ヒロさんにみんなと話したことを話した。


「なるほど……奏ちゃんはもしかしたらくすぶって居るのかもしれないな」

「それは、どういう……」

「多分彼女は、オリジナルをするのは初めてなのだろう。だけど、コピーとかはかなり難しい曲なんかもやって来ている。だから色々試したいんじゃないかな?」


 なるほど……。


「そのあたりもクリアしていくためには、臨機応変に曲を作る必要がある。それぞれの個性を活かしていく必要があるからね」

「臨機応変……なんか難しそうですね」


 すると、ヒロさんはギターを持つように言って、テーブルの前にすわる。


「祐樹はさ、音楽ってなんだと思う?」

「字のとおり、音を楽しむ……ですかね?」

「まぁ、そうなんだけど楽しむためには何が必要だろうか?」

「知っている曲とか?」

「惜しい! それならオリジナルバンドはみんな壊滅してしまうよ……」

「そうですね」


 するとコードを紙に書く様に言う。


「今から俺が歌うから、このコードをループしてみてくれないか?」


 僕は、紙に書いたコードを順番に弾き始める。すると2回目にヒロさんは歌い出す。


「今日は〜いい天気だよ〜♪ ハイッ!」

「えっ!? 今日は〜いい天気だよ〜♪ えっ、なんなんですかこの歌?」

「じゃあ次は歌って質問するから歌って答えてみてくれ。〜調子はどうだ〜い? ハイッ!」

「うぉっ、そ〜れな〜りですよ〜♪」


 すると、彼はうなずく。


「なんですかこの歌?」

「これが、現代の音楽の原型『コールアンドレスポンス』という奴だよ」

「音楽の原型?」

「そう、農作業をしながら遠くの作業者と歌いながらやりとりをしていた事が後にブルースになり、ロックへと進化していったんだ」


 音楽の歴史……今までなんとなく聞いていたものにも始まりがあったのだと知った。


「ここで大事なのは『共通認識』お互いがその音楽を知っている事が大事なんだよ」

「それじゃオリジナルはやっぱり無理なんじゃ?」

「そうでもないよ。今言った様に曲じゃなく音楽を知っていさえすれば成立するんだ」


 曲じゃなくて音楽。

 えっと、音楽は曲で……曲は音楽じゃ無いのか?


「悩んでいるみたいっすね。わかりやすく言うと女の子が食パンを咥えて走っていたら曲がり角ではどうなる?」

「それは、誰かとぶつかりますよね?」

「それなら焼きそばパンなら?」

「多分、ぶつかる……」


 ヒロさんはニヤリと笑い指を鳴らした。


「それ! 音楽も基本的にはそういう事なんだよ。イントロが来たらAメロ、Bメロ、サビが来る。みんなそう刷り込まれている。だから逆にサビから始まっても、何処かでAメロやBメロがくると予想する。すると、サビがもう一度来るとそのサビは知っている曲になるんだ」

「え、え、ちょっとよくわからなくなりました」


「つまりは、音楽を聴く人の大半はサビを待っているんだ」

「待っている?」

「そう。作曲し始める時にはよくある事なのだが、名曲のサビで全部構成出来れば、名曲になる気がする。でも実際には、サビには目的があり、サビの目的を果たす為に全てのフレーズが有ると言ってもいい」


 ヒロさんの言葉は難しく、正直深く理解はできない。だけど、わかった事はある。


「イントロにはイントロの、AメロにはAメロの役割があるって事ですか……」

「そう。それさえ分かっているなら後は自由だと思って貰って構わないよ」


 サビの目的。狭山のきっかけは、高田さんのスパイスは、美波ちゃんの声は……一体何処に入れていけばいいのだろうか。


 僕はひたすら、他のアーティストの曲を漁った。全ての曲には何かを取り入れているルーツがある。それならその中に、答えは有るのかも知れない。


 そして僕は原点に帰った。


「コールアンドレスポンス」


 ブルースの原点と言われるこのスタイルを漁っていくと一つの違和感を感じた。


「ヒロさん、これって何か違う気がするんですけど……」

「違う? 今残っているくらいの名曲だよ?」

「でも、なんていうか……僕には共感出来ないっていうか……」

「なるほど、作られた背景も時代も違うからね。それなら祐樹の背景で今の音楽を取り入れてみたらどうだい?」


 僕の背景……なんでもない平凡な高校生。だけど、世の中には非凡な人の方が少ない。ならば日常の中での掛け合いを音楽の様にしてみたらどうだろうか?


 気軽に声をかけてくる狭山がいて、あいつが声をかけて来ると高校生活が動き出すような気がする。


 そうか!

 歌うのも狭山だし、きっかけは日常なんだ!


 そう気づいた瞬間、僕の中に沢山のイメージが動き出した。狭山が声をかけ美波ちゃんが返事をする。その日常には、僕や高田さんの様にその場面には見えない高校生活が存在している。


 僕はそのイメージに、歌詞を書きコードを乗せる。目的はこの曲で狭山と出会ってもらう事。


 試行錯誤を繰り返してようやく一つの曲になった頃には、とっくの昔に日付が変わっていた。


「ヒロさん、出来ました!」

「ん……おおっ! 出来たのか!」

「今、寝てましたよね? 別にいいんですけど、起きてた様に振る舞うのは無理がありますよ?」


 ヒロさんは歌詞にコードを書いた紙をみる。

「ちょっと歌ってみてくれないか?」

「え、今ですか?」

「小声で歌えば大丈夫だろ?」


 少し照れながらも小さな声で歌う。ヒロさんはそれを何も言わずに最後まで聴いた。


「うん……リアルだな……」

「ダメ、ですかね?」

「リアルで、荒削りだけどこれは確実に祐樹の音だよ」


 そう言われ、僕はそっと胸を撫で下ろした。


「ちゃんと自分の音が作れるタイプだったんだな。それなら話は早い、ここからがプロデューサーとしての俺の出番だな!」


 苦悩し考え抜いて必死で出来上がった曲は、まだ音楽としてはスタートラインに立ったに過ぎなかった。この曲を聞いて、俺の出番と言ったヒロさんに、僕はなんとも言えない安心感を感じていた。

お読みいただきありがとうございます。


少し読むのがしんどい回でしたが、最後までありがとうございました。引き続きよろしくお願いします!


♪♪♪


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