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第二十話

 その画面を見た瞬間、僕の血の気がサッと引いて行くのがわかる。入学してすぐに落ちた恋はこれで終わったのだと思った。


「そ、それは太田が……」


 事実だとしても意味の無い言い訳でしか無い。面倒くさがってスリープにしている僕が悪い。それに気づかず美波ちゃんにパソコンを触らせているのが悪い……。


「ご、ごめんね……」


 何故か謝る美波ちゃん。目が泳いでいると言うのはこの事なのか全く目線が合う事が無い。


「み、美波ちゃんが謝る事ないよ」


 そう言うと、彼女はそっと制服のスカートを手で抑える。もう、帰りたいのだろうと僕は察する。


「エッチなのも驚いたんだけど、その……キャラがね……その……ね」


 動揺しすぎて、高田さんみたいになっている。だが、僕は重大な事に気づき慌てて画面を消して言い逃れの出来ない状況にすぐさま謝った。


「ごめんなさい!」

「あ、うん。金髪のショートが好きなんだ?」

「……はい」


 そう言うと、美波ちゃんは自分の髪を触る。これはもう確実に気付いてらっしゃる。


「えっと、間違えてたらごめんね。祐樹の好きな人って……」

「美波ちゃんです!」


 言われる前に言うしかない。どうせバレているのなら同じ事だ。だけど、言って直ぐに後悔した。


「ごめん、気持ち悪いよね」

「うーん、嫌じゃ無いけど。ゲームされるのは嫌かな?」

「え? 嫌じゃない?」

「まぁ、男の子の中では仲のいい方だし。でも、いつから?」

「初めて会った時から……です。でも、その時は好きと言うか憧れで、話すようになって色々イメージが変わって好きになったっていうか」


 美波ちゃんは顔を赤くしながら、俯いていく。僕が話し終わると顔を上げて言った。


「そっか……なら仕方ないよね。祐樹はそれで付き合いたいの?」

「それはもちろん……だけど、そんなそんな今の僕じゃまだまだ自信ないって言うか何というか」


「祐樹、それもう告白だよ?」


 彼女の言葉がスッと入って来ると同時に僕の顔は熱を帯びていくのが分かった。


「そうですね……」

「えっと、それ保留でいいかな?」

「保留?」

「だって、まだ自信ないんでしょ?」

「それは、そうですね……」

「じゃあ、自信付いたらまた告白して? 答えはその時考えるから」


 あれ……僕は、振られて無い?

 モヤモヤとする反応。でもいいとも悪いとも言われていないって事は自信付くまで頑張れって事かな?


「あ、でも早くしないと彼氏出来ちゃうかもよ?」


 そう言って笑う美波ちゃんはつくづく人たらしなのだと思った。


「でも祐樹は高田ちゃんみたいな方が好きなんだと思ってたよ。好きだから話せないーみたいな?」

「つり合って無いよね。美波ちゃん可愛いし」

「真顔でいうなよー。でもあたし、祐樹が思っているよりはモテないよ?」

「それは隣に狭山がいるから」

「なるほど……アイツのせいか。という事は祐樹もそう思ってたんだ?」


「まぁ……付き合っているとも思ってたし」

「あたしが? ないない。それより練習の続きしよ?」


 彼女はそう言うと、サイトをみてから僕の隣に座った。


「えっ……」

「この方がベースの音聞こえるでしょ?」

「そうだけど……」

「なにぃ? 嬉しいくせに」


 正直嬉しい。彼女のシャンプーの様ないい香りが分かるくらいの距離。髪の毛の掛かった耳には小さなピアスが見える。柔らかそうな頬に唇、パーソナルスペースに居る彼女が可愛いくて仕方なかった。


「ずっとこのままならいいのに……」

「ん? 今何か言った?」

「なんでもないよ」


 ふと前を見ると、正座しながら手で顔を隠したヒロさんが指の隙間から見ていた。


「お邪魔っすかね?」


 僕は首を振ると、ヒロさんは言った。


「お楽しみの所申し訳ない! ベースは経過音を入れて、あ経過音っていうのは──」


 最初は茶化していたものの、ヒロさんは意外にも真剣にベースのアレンジのアドバイスをしてくれた。


「確かにこの方がしっくり来る! 祐樹すごいじゃん!」

「いや、これは……」


 ヒロさんはウインクして笑いかけた。

 日が沈み、気がつくと19時を過ぎていた。


「美波ちゃんそろそろ帰らなくて大丈夫?」

「あ、LINEしとこうかな」


 親に迎えに来てもらう様に連絡するのだとか。


「さっきのコンビニまで送ってくれる?」

「う、うん。もちろん」

「それじゃ、そう送るね」


 色々と事件はあったけど、今日一日で美波ちゃんとの距離が大分縮まった様な気がした。好きな事がバレた事で僕自身開き直っているせいもあるのだと思う。


 このまま、楽しくバンドがして行けたらいいと、人生で初めて青春を感じていた。



♦︎


♦︎



 それから、週末。

 僕らは初めてのスタジオに入る事になった。


 スタジオの場所は、僕と美波ちゃんが楽器を買った店の裏。裏と言っても店で鍵を借りてスタジオに入るシステムだ。


 2時間で1人1000円。

 カラオケよりすこし高いくらいに感じる。


「まぁ、今日は顔合わせの気持ちで行こうぜ!」


 狭山は鍵とマイクを借りると僕たちに言った。美波ちゃんと練習してから3日アレンジも大分まとまって来た事もあって自信が有る。


 高田さんはペダルとスネアと呼ばれる小太鼓の様な物を持参しており、スタジオに入るなりドラムを組み替え始めた。


 僕もアンプに繋いでみたもののどのくらい音を出せば良いか分からず控えめにする。狭山は全くわからなかったのか、マイクを出してもらう為にお兄さんを呼び出した。


「マーシャルにアンペグか。なかなかスタンダードな機材っすね!」


 もちろん、見えないプロデューサーであるヒロさんも来ていた。


「祐樹はもうちょっとゲインをあげてもいいよ。美波ちゃんは音量はいいけど、左のEQをひとメモリだけ下げた方が多分弾きやすいと思う」


 ヒロさんの指示を直ぐに美波ちゃんに伝えると、本当に弾きやすくなった様だった。


「みなさーん! 準備はいいですかぁ!」


 狭山がマイクで叫ぶ。

 すると慣れた手つきで高田さんはカウントをスティックで鳴らした!


 一度コードをかき鳴らしてからのギターでのブリッジミュートもちろん狭山も同時に歌い始める。高田さんはバスドラのみ踏んでいる。ベースは途中から入ると言うのは家で練習した時に決めていた。


 狭山は上手い。歌唱力というよりは独特のオーラの様な華が有る。それよりも高田さんは、僕の目からはプロにしか見えなかった。それは誰もが感じていた様で、一旦止めると狭山が言った。


「いや、みんなうまくね? と言うか普通にバンドだわ!」

「高田さんが上手すぎるんですけど」

「い、いやぁ。奏はドラム歴が長いから……それより西村くんのギター独特だよね?」


 少し照れたように言った。


「独特?」

「シンプルなのを正確に弾いてる感じかなぁ。ギター初めて直ぐとは思えない弾き方だよ」


 すると、ヒロさんはゆっくりと立ち上がるとハッキリと言い放った。


「後はこれからどうやってクオリティを上げるかだ。課題は見えたな!」

お読みいただきありがとうございます。


ついにバンドが始動!

様々な関係がどうなるのか……お楽しみに!


♪♪♪


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