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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

数字

作者: 影山コウ

 

「ヤバい、寝過ぎたか……?」


 朝にしては妙に明るい日差しを浴びながら、起き上がる。なんとなく感覚で分かる。恐らく、今は昼頃だ。


「……しまった……」


 嫌な予感は的中した様で、枕元に置いてある小さなデジタル式の時計は11時ぴったりを指していた。

 仕事は休みなので、買い出しに行こうと予定してたのにな……これじゃスーパーのタイムセールにゃ間に合わん。

 今月は節約したかったんだがな……仕方無い。


 呆けた意識を起こしながら、ベッドから降りて立ち上がる。うんと体を伸ばし、部屋の空気を吸い込む。少々匂ってきたな。また掃除しないとだ。


「はー……」


 気だるさに耐えながらふらふらと歩き、洗面台へ。歯ブラシを取り、蛇口をひねり水を出してコップに注ぐ。

 手に当たる水道水の冷たさに目が冴え、鏡へと顔を向けた。酷い顔だ。

 寝起きだから仕方無いのだが。


「……また、か」


 そして、いつものアレが頭上に見えていた。

 数字の9。頭の少し上にフワフワと浮かんでいるが、手では触れられない。


 数字が見え始めたのは3日前の朝だった。今日と同じように起きてすぐ洗面台へと向かうと、その時は数字の0が頭上に浮かんでいた。

 仕事のし過ぎで幻覚でも見えているのか? と疑問に思ったが、ふと外を眺めると……目に映る全ての人間の頭上にソレが見えていた。


 子供、大人、老人。男と女。その全てに数字の0が見えていた。


 何故だろうと考えながら朝御飯を食べ終わり、鏡を見ながら身嗜みを整えていると、今度は数字の1に増えていた。

 その日、飯を食べた数なのか? と当然考えたが……いやいや、おかしいだろうと気が付いた。

 外に出ても通り掛かる人達は皆、数字は0だったからだ。たまたま近所の人間は誰もご飯を食べていなかったと? 老若男女問わず? 有り得ないだろ。


 そんなこんなでもう3日。相変わらず俺だけは数字が増え続け、周りは0のままだった。


「うーむ、朝飯なぁ……いや昼飯になるのか?」


 顔を洗って、飯を食べるべく冷蔵庫を開けるものの……今日は特に食欲が湧かなかった。

 起きたばっかで肉は食いたくないしな。胸焼けがしそうだ。仕入れた肉も筋っぽくて不味いしなぁ。

 用事を終えたら、その時に遅めの昼飯を食べよう。煮込めば柔らかくなるだろ。多分。


 *


「うー、さぶさぶ」


 外の寒さに耐えながら、近所の商店街へと足を運ぶ。本当は少し遠くのスーパーに行きたかったのだが、タイムセールはとっくに終わってるみたいだしな。そんなら商店街のが幾分か安いだろう。


 確か調味料と……あと飲み物が少ない。飯もそろそろ仕入れないと行けないが……今回はどれにしようかな。買い物を終えて、飯を食べたら考えるとしよう。


 頭の中で色々と考えながら歩いていると、ヒソヒソと噂話が聞こえてきた。


「……こ……誘拐……」

「怖……殺……」


 断片的に聞こえてきたその噂話は、随分と物騒な話題らしい。誘拐? 殺し? この辺りでか? そりゃ恐ろしい話だ。人殺しの考えなんて分かりたくもないな。勿体無いし。


 そんなこんなで目的の店に着き、中へと入る。必要な物を買い、外へ出る。

 さて、買い物は済んだ。一度昼飯を食べに家に戻るか。


「━━ちょっとアンタ!」

「え?」


 が、突然後ろから大声で話し掛けられ、振り向く。そこには近所に住んでいるおばさんがいた。

 何かに怒っているようで、顔が真っ赤だ。


「あ、どうも。何かご用━━」

「アンタの家、いつも臭いのよ! 生ゴミでも溜まってるんじゃないの!?」

「あー……それはすいません」


 ……思い出した。このおばさん、近所で有名なクレーマーだ。こうやって些細なことに怒り、周りや店などに迷惑を掛けまくってるとかなんとか。

 確かにゴミとか溜まってたけど、こんな人の多いところで大声で言うことか? 

 少々、苛立ちが募る。


「……すいません、片付けておきますんで」

「すいませんじゃないわよ! 大体ねぇ、アンタは━━」


 しまった。下手に謝らず、無視した方が良かったか? グチグチと愚痴が始まってしまった。

 めんどくさいなぁ。こっちは早く帰りたいのに。


 *


「はぁ。御馳走様でした」


 自宅に戻り、昼飯を済ませた。

 この肉、煮込んでも固かったな。ハズレだ。それに加えて、おばさんに構っていたせいで余計に不味く感じた。


「……ん、またか」


 ふと窓に映る自分を見ると、頭上の数字が10になっていた。また増えたな。やっぱり食事の後に増えてる。普通の食事だってのに。


 まぁ、どうでもいいか。とりあえず掃除だ掃除。また文句言われるのも鬱陶しいしね。その後もう一度出掛けよう。

 休日の内にやっておかないと疲れるしね。


 大量の生ゴミを袋に詰め、玄関へと置いていく。確かに溜め込みすぎたな。捨てにいくのに苦労しそうだ。

 10分ほど時間を掛けてゴミをまとめ、全て車に積んでいく。後部座席がパンパンだ。

 準備は出来たし、おばさんの所へ行くとしよう。あの人で良いかな、今回は。


「さて」


 黒く大きい袋を持ち、軍手を着けてキャップ帽を深く被る。保存用のビニール袋を幾つか持ち、出刃包丁やノコギリも準備する。

 スタンガンを腰に装着し、鉄パイプを助手席へと置いておく。おばさんの家はここからすぐ近くだったな。歩いていこうかな。


 幸い、人も歩いていない。なるべく早く済ませるに越したことは無いけどね。


 歩くこと数分。おばさんの家に着いた。ピンポーンとチャイムを鳴らし、腰に装着したスタンガンを右手に構えておく。おばさんは独り暮らしだから楽で良いな。


「はい、どちらさ━━ギャッ!?」

「ふぅ」


 ドアが開かれたと同時にスタンガンを押し当て、気絶したのを確認して中へと入る。

 用意した袋におばさんを詰め込み、持ち上げる。重いな、痩せろよ。


「よいしょっと」


 家に帰り、トランクに袋を入れる。ゴミ出しついでに仕入れることが出来て良かったな。結構大変だしね。


 そのまま車を走らせ、その場を後にした。一時間くらいで行けるところで良いか。面倒だし。


 *


「ひー、こりゃ大変だわ」


 車でギリギリ行けるところまで山を登り、そこから歩いて山奥にゴミを捨てていく。4往復くらいしないと駄目か?こりゃしんどい。


「━━! ━━!」


 それに、さっきからトランクがガタガタ五月蝿い。起きちゃったか。仕方無いな、一回道に迷っちゃったし。


 なんとかゴミを出し終わり、おばさんの入った袋を担いで山の中へと入っていく。

 ビニール袋と出刃包丁、鉄パイプ、ノコギリは持った。さっさと済ませて帰ろう。


 ある程度の深さまで来た所で、おばさんをその場に置く。


「痛い! 何よこれ、出しなさいよ!!」


 ギャーギャーとおばさんが喚く。しまったな、猿轡を忘れてた。まぁ騒いでも誰も聞いてないだろうけどさ。

 鉄パイプを持ち、振り下ろす。


「ギャア!?」


 ……そう言えば、家の鍵閉めたっけ? ガスも止めたよな? 出掛けてからこういうの気になっちゃうよなぁ。しっかり見とくんだった。

 鉄パイプをもう一度振り下ろす。


「ギィッ!? や、やべで……!」


 しかしなぁ、仕事で忙しいとは言え運動不足を感じるね。ちょっと動いただけで足が痛いよ。

 でも近くにジムとか無いんだよね。遠くまで行くと通わなくなりそうだ。

 ……まぁ、近くても三日坊主になりそうだけど。努力は苦手だ。

 更に鉄パイプを振り下ろす。


「……ァ……」


 次の献立はどうしようかな。サラダと味噌汁と……たまにはステーキにでもするか? 良いお肉なら。

 肉は健康に良いしね。若い内は食べておかないとな。

 最後にもう一度、鉄パイプを振り下ろす。


「………………………………」

「はぁ。疲れた」


 思わず溜め息をつく。しぶとかったなぁ。ま、これで準備良しだ。

 小分けにして行こう。


 *


「御馳走様でした。まぁまぁかなー」


 晩飯を終え、お茶を飲む。今回のは悪くなかった。やっぱ女の方が柔らかいね。

 食器を片付け、風呂に入るために風呂場へと向かう。鏡に映った自分の数字は11になっていた。超能力……に当てはまるんだろうけど、使い道が無いなぁこれ。相変わらずワケわかんないや。

 風呂に入ったらさっさと寝よう。今日は疲れた。明日から仕事だしね。


 *


 次の日の朝、身支度を済ませて外へと出る。車へ乗り込もうとすると、通学中の子供達と目が合った。


「おはようございまーす!!」

「うん、おはよう」


 元気な挨拶を聞くと気分が良いね。子供達は無邪気でいい。

 それに。


「……美味しそうだ」


 くう、とお腹が鳴る。






 次は、子供かな?









思い付きです。

こういうのも書くのは楽しい。

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