表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ーユメモノガタリー  作者: 久川 りつき
7/50

ー孕んだ狂気ー



アカズサさんは


フロアのどこかにいるだろうイオリくんに向かってそう言うと、


私が少しだけ開けていたドアの前に近づいてきた。



「シオン、帰ったよ、出て来て。」




--------・・・・・?----------





ーーーシオンって・・・・?ーーー





「君の名前だ、俺が考えた。」




アカズサさんはそう言うと



小さなドアを開けて私を見下ろしている。






ーー・・私のーーー名前・・・?ーーー





私が(シオン)と言う


馴染みの無い名前を頭の中で繰り返していると


キッチンのドアを勢い良く開け放ったイオリくんが


驚いた顔をしてアカズサさんを凝視している。


「アカズサお前


気は確かなのか!?


他の者ましてや、


ニンゲンに名前を授けるなんて!?」




「イオリ


この子はこれからシオンとして


俺達とここにいてもらう事にした。」





ーーー!?ーーー





・・・私の聞き間違い・・・だろうか



今アカズサさんは





ここにいてもらうと言った気がする。





一体どういう意味なのだろう。




「アカズサ!


ソイツは------に理を奪われ(縁)も失い、



記憶も存在もあやふやなニンゲンなんだぞ?!」





「・・・うるさいなイオリ


そんな事は会った時に分かっているだろう。」





「今コイツに(名)を付ける事がどういう事か位、


お前なら分かるはずだよね!?」




イオリくんは、


何やら焦ったように捲し立てている。



・・・どうしたのだろう。




ーーー・・・イオリくん?ーーー




ーどうしたの?ーーー





「・・・アカズサは間違いを犯した



お前を手放したくなくなって



名を与えてしまったんだ。」




「・・・・」




ーーー・・・・・え?ーーー




「生まれた者に名を付けるって言うのは


その生命の理を定着させる事を意味する。


つまり、


以前の名前や記憶を無くしているお前に


コチラ側の存在であるアカズサが名前を付けたって事は


お前のニンゲンとしての理から


(コチラ側)の理に定着させてしまった事と同義なんだ。」


私は


イオリくんに早口で話された内容を



必死に頭の中で理解しようとした。






-----・・・つまり------・・・・・私は・・・・----






・・・・・もうカエレナイの?-----






今日、


何度目か分からない吐き気が込み上げる


私は吐き気を押さえるように口に手を当てた。


その様子を見たアカズサさんが私に手を伸ばして来たが、




何とイオリくんが私の目の前に立ちはだかった。




「・・・イオリ、



何のつもりだ?」




「アカズサ、


お前は数百年ぶりに(コチラ側)でコイツ・・・


(生きたニンゲン)を見て、


愛しいと思うあまりに少し狂気を孕んでしまっている。


そのままだと・・・邪神になりかねない!!」





イオリくんは、


そう言うと私を元いた部屋に押し込めて


ドアを閉じてしまった。




「これ以上シオッ・・・



コイツに近づけるのは危険だ



お前こそ、



しばらく頭を冷やしなよ。」



イオリくんのその言葉を最後に


そのフロアに



聞いたことの無いような唸り声が轟いた。



ビリビリビリビリッ




空気が擦れる音が耳に響く。



私は突然の事に恐怖で後退りすると


ベッドが足に当たり



そのまま急いでベッドの中に潜り込んだ。



そうしてしばらく耳をふさいでいると、


ウトウトとしてしまっていたらしく、



気がつけば辺りは先程とは打って変わって静まり返っていた。





------・・・・さ、さっきのは一体・・・・・------



布団の隙間から顔を出すと



ほとんど同時に


ドアをノックする音が響いて、


思わずヒュッと息を飲んだ。



「・・・僕だ。


もう大丈夫だから、


開けてくれない?」




ドアの向こうからする声は間違い無くイオリくんだった。


でも、


少し疲れたような声の彼は


あまり先程までの聞きなれた高圧的な声色ではない。




おそるおそるドアを開けると、


イオリくんはボロボロだった。



私はビックリして部屋から飛び出す



イオリくんは


腕や足に切り傷のような傷を作っていた。


服ごと、カッターかなにかで裂いたように


パックリと裂けている。




ーー!?な、何があったんですか?!ーー





私がオロオロとしていると


部屋の奥からケケがするりと出て来て、


なにも言わずテキパキと傷の手当てをしていく。




「・・・・・」



「・・・別に、アカズサのバカが暴れただけだよ。」





-----・・・え?・・・・アカズサさんが・・・?-------



私は改めてフロアを見渡して愕然とした。


先程までカラフルに彩られていたフロアは


巨大な爪痕が無数に残り


電灯も割れ


天井が剥き出しになっていたのだ。



ーーー何・・・・・・コレーーー




・・・・あのアカズサさんが




・・・・ここをこんなにしたんですか・・・ーーー?





私は




膝の力が抜けてその場にパタリと座り込んでしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ