御伽噺
『花の王国』
昔々あるところに、小さな王国がありました。
国中に笑顔が溢れ、1年中花が咲き乱れる幸せな国。
国民たちは豊かな生活を送り、
国民を守る王様と王妃様を慕っていました。
ある年、王様と王妃様の間に1人の王女様が生まれました。
国民たちは喜び、3日3晩お祝いが続きました。
輝くような金の髪に、
澄んだ湖のような青い瞳、
その肌は透き通るように白く、
頬と唇は赤い、大層美しい姫でした。
誰もが王女様を愛し、
その愛情を受けて育った王女様も、
民を愛す心優しい姫へと成長していきました。
王女様の16歳の誕生日のことでした。
盛大に開かれたお祝いの席には、
王女様の美しさを聞きつけた王子様たちが、
贈り物を持ってあつまりました。
「この首飾りの青い宝石は、
まるで貴女の瞳のようだ。
貴女の美しい肌によく似合う」
「この赤いバラは、
まるで貴女の唇のようだ。
けれども貴女の美しさの前では霞んでしまう」
王子様は順番に贈り物を手渡しながら、
王女様の美しさを称えます。
王女様も笑顔を返し、ありがとうと伝えました。
「私からはこちらの本を。
貴女は宝石よりも本が好きだと聞きました」
一番最後に順番が回ってきたのは、小国の王子様でした。
王女様に手渡されたのは、王子様の国の歴史書です。
それを見た他の王子様たちは口を揃えて言いました。
「そんなもの、喜ぶはずがない。
小国の王子は駄目な奴だな」
しかし、王女様は今までで一番の笑顔を浮かべ言いました。
「素敵な贈り物をありがとう。
私はとても気に入ったわ」
王女様の気持ちを考えた小国の王子様の贈り物に、
王女様はとても感動していました。
見つめあう王女様と王子様を見て、
王様は2人を結婚させることに決めました。
1年後、王女様と王子様の結婚式が行われました。
皆に祝福されながら、2人が誓いを交わそうとしたときでした。
カァ カァ カァ
カラスの鳴き声が聞こえました。
皆が驚いて教会の入口を見ると、
真っ黒な服を着た魔女が立っていました。
「これはこれは王女様。
ご結婚おめでとうございます」
魔女は一度お辞儀をしてから、王女様に魔法をかけました。
王女様はその場に崩れ落ちてしまいます。
「美しい王女様を取られて悔しい王子様から、
呪いをかけて欲しいと頼まれたのさ。
王女様は眠りについた。
もう2度と目覚めることはないだろう」
魔女はそれだけ言うと、ふっと消えてしまいました。
残された者たちは、皆嘆き悲しみました。
魔女が誰だったのか誰も知りません。
王女様に呪いをかけたのがどの王子様かも知りません。
王女様の呪いを解く方法がわからないのです。
「私が必ず助けます。
姫よ。待っていてください。
愛しています」
王子様は眠ったままの王女様に、
結婚式でするはずだった誓いのくちづけを行いました。
するとどうでしょう。
王女様がぱちりと目を開けたのです。
「貴方の真実の愛のくちづけが、
私を助けてくださったのです」
王女様はそう言って、王子様に抱き着きました。
そして、2人は永遠に幸せに暮らしました。