1.ありえねえだろこんなの……
唐突だが、自己紹介をしよう。
俺の名前は篠宮修介。『目立たず普通に生きる』がモットーの高校二年生だ。
クラスではいわゆる『モブ』のような位置を確立している。
運動神経、普通!成績、普通!ついでに顔も凡人顔!
はい。モブ決定。
まあ、そんな俺なので、小説的な展開には一切縁がないと思っていた。のに……!
なんで俺の部屋に黒髪美少女がいるんだよっ!!!
……と心の中で大絶叫して、床にちょこんと座っている黒髪美少女に視線を向ける。
彼女はさっきの俺の叫び声で目を覚ましたらしい。
その後はおどろくようすを驚く様子を見せず、普通に起き上がった。
……いや、ちょっとは驚くだろ普通……。
そして黒髪美少女は俺の方に目を向ける。
大きな瞳に俺の姿が映し出された。
「あ、おはようございます」
……へ?
思わずそんな声が口から洩れそうになった。
第一声め、それ?
自分の言葉に反応せずただポカンとしている俺を見て、少し不安そうな表情になった。
「え?人間の朝の挨拶って、普通『おはようございます』じゃない……ん……ですか?」
「いや、あってるよ」
あってるんだけれども!
『人間の』ってなんだ『人間の』って!
「そうですか?よかったです。呼びかけても反応がなかったので……」
「情報が追い付いてなくて反応出来なかったんだよ」
こんな大量の情報押し付けられて、それを全て理解しきれるほど俺の頭はよくないぞ。
「ああ……。なんだかすみません……」
「いやいいけど……」
「……でも、残念なお知らせです」
「?」
「……まだ、理解不能そうな情報が大量にあるんですが……」
……。
一瞬、意識がぶっ飛びかけたぞ。
これ以上この引き出し少ない頭に情報を詰め込めと?
「……あの、聞いてくださいます?」
くっ……!美少女の上目遣いのお願いはズルい……!
「…………わかった」
いやなんかもう、こう答えるしかない。わかってくれるな?男子諸君。
「そうですか!聞いて下さるんですね!ありがとうございます!」
……なんか、懺悔する人みたいになってるぞ。
「……あ、先に名乗った方がいいですかね?」
「そうしてくれ」
じゃないと呼び方がいつまで『黒髪美少女』のままになる。
「私、マイン・エルノアーナっていいます。属種は妖精で……」
待て待て待て。属種ってなんだ。
……あ、だからさっき『人間の』って言ってたのか。
「それで、えーと……。あなたのお名前は篠宮修介さんで正しいですか?」
「あーうん。正しい……ってちょっと待て」
「何ですか?」
「なんで俺の名前知ってんだ?一応俺ら初対面だよな?」
「初対面ですね」
だったら尚更だ!
「あの、それには理由がありましてですね。
私達、篠宮修介さんに頼みがあって……。
それをお伝えするべく、私はここに使わされたんです」
ふんふん。なるほど。
「んで、その頼みっていうのは何なの?」
俺が聞くと、マインはすぐさま姿勢を正し、土下座の体勢になった。
「お願いです!どうか……私達を助けてください!」