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第22話 終局の序章



 王国軍の伝令が国王行方不明の報を告げてから、丸半日が経過していた。


「ネリア様の様子は?」


「部屋に鍵をかけたまま、一向に出てきません。」


 さほど親しい間柄ではなかったとはいえ、叔父を亡くした直後だ。

 それも、ネリア様に責任がないとはいえ自らの手で殺してしまったのだ。

 そこに今回の報せは、ショックが大きいことだろう。


「しかし、王国軍の状況も最悪であるな。」


 伝令によれば、残存兵をかき集めて、最終防衛ラインギリギリで首都を守っているらしい。

 万一の事態に備え、首都では疎開が始まっているとのことだ。

 魔王軍が急に勢いづいた理由は不明。

 突然膨大な数の兵が現れ、高い士気でもって襲い掛かってきた、との話だ。


「王族の親子関係がどのようなものかはわたし達には知る由もないことですが、姫様には心を休める時間が必要でしょうね。」


「ああ、だが今の状況では魔王軍が首都を落とすのはそう遠いことではない……

 本当に最悪の場合、たとえ俺一人でも魔王軍に妨害工作を仕掛けに行くことも考えている。」


 俺の言葉にジルやバルグが反応するよりも早く、別の場所から言葉が飛んできた。


「その必要はない。」


 宿の階段を下りながら、その言葉をかけてきたのは。


「……ネリア様。」



●●●



 ここ数日の心労のためか、心持やつれた気がするが、目には生気が十分に宿っていた。


「心配をかけたようだな……すまない。」


「その……大丈夫なのですか?」


「ああ、考えていたんだ。わたくしには何ができるのか……?」

 ビストにも、元気づけられたしな。」


 ネリア様はテーブルを囲む、4つ目の椅子に腰を下ろした。


「私と父上は、普通の親子ほど多くの会話をすることはなかったが、教えは受けた。

 王族の責務として、こんな時だからこそ私は戦わねばならない。

 今、戦わねば私は父上の子を名乗れなくなってしまう。」


「姫様……ご立派でございます……。」


 ジルがわずかに涙ぐんでいる。


「そして、もう一つ考えていたのだ。

 なぜ今になって、魔王軍が攻勢をかけて来たのかを。」


「それは、後方で用意していた戦力を投入しただけではないのか?」


 バルグの返答に、ネリア様は首を横に振った。


「もし、最初からそれだけの戦力に見込みがあったなら、いくらホームで有利な状況とは言え、アージェが単独で私達と戦うのを許したりはしなかったはずだ。

 数で王国軍を押しつぶせる見込みがあるなら、四天王が減るリスクを冒すはずがない。」


「四天王が削られたのが痛手ではない、ということはまずありえませんからね。」


 確かに、もし仮に四天王が捨て駒だったとすると俺達のしてきたことは無駄骨だ。

 だが、四天王の城から魔王城に魔力が流れ込んでいたのは間違いないし、四天王を討った後はその魔力も止まっている。

 四天王が魔王軍の戦力をブーストしていたのは間違いないのだ。


「では、今前線にいる魔王軍は、劣勢だからこそ集められた、本来動員するはずのなかった人員だと?」


「ああ。

 そしてこの状況になった以上、長期戦はありえない。

 防衛戦力も含めた、全戦力で王国を落とそうとしているはずだ。」


「なら、前線に戦力を集中している今なら……」


 ネリア様はゆっくり、深く頷いた。


「今こそ、魔王を討つ時だ!!」



●●●



 直接魔王を討つ、と決めたからには後は時間との勝負だ。

 もし首都が陥落すれば、どれほどの被害になるか。より早く魔王を討ち、それを大きく喧伝しなければならない。


「あれが、魔王城か……」


 雷雲の下、威容を誇るその城は、豪奢でありながらも意外なほどに上品な姿だった。

 魔王城をしばらく凝視していたジルが口を開く。


「妙ですね……魔力のラインが完全に切れています。」


「四天王が東西南北から魔力を流してたアレか?

 まだ、ゲネルラーの北の城が残ってたはずだろ?」


「ええ、他の3本は切れてて当然なんですが……北からのラインもなくなってます。」


「ってことは……」


「前線からの報告ではゲネルラーのことは触れていなかったのである。

 もし前線に行っていたなら、あれほどの男、必ず報告に上がるはず。ということは……」


わたくし達を待ち構えている、ということだな。」



●●●



 最早小手先の策は意味をなさない、ということで正門から踏み入る。

 門扉は固く閉ざされていたが、振動衝撃でぶち抜いた。


「グワラグワラッ!!

 ようこそ、魔王城に! 貴様らが来るのを待ちわびていたぞ!!」


 そこに待ち受けていたのは、なんと、かつて打ち倒したガンダーンであった。


「……黄泉返ったのか?」


「わしは元々魔王様が生み出した生命体よ!

 新しく、より強く! 魔王様が作りだしてくれたこの身体!!

 言うなれば、わしはガンダーン二世ッ!!!」


 豪語するガンダーン、あらためガンダーン二世。

 以前は戦場だったから気にならなかったが、声が大きすぎて屋内だと非常にうるさい。


「わたし達も強くなっています。強化したとはいえ、1人でわたし達4人を……」


 ジルは弓を構えるが、俺は違和感を覚え、手で制した。


「……どうしました?」


「ゲネルラーがこの城にいるのは、ほぼ間違いないはず。

 なのに、何故こいつはゲネルラーと一緒にいない?

 以前は四天王が3人まとめて襲ってきたこともあったのに。」


「何か狙いがあるということか?」


「城門もそうだ。

 今までの四天王の城は、罠に嵌めるためにわざと開け放たれていた。

 ……おそらくだが、誰かが『時間を稼ごう』としている。」


「なら、ガンダーンは……」


「ふむ、話は分かったのである。

 後は拙僧に任せて、みなは進むのである。」


 そう言って、バルグが一歩前に出た。



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