表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/26

第12話 突破の秘策



「どうだ、連中は?」


 四天王筆頭・ゲネルラーは、同じく四天王のアージェにたずねた。

 もちろん、連中とは“魔剣”の王女の一味のことである。


「遺跡の地下に空洞を発見、だけど最初に突入したジャイアントモール数匹は瞬殺されたようですわ。

 やはり、生きていたようですわね。」


 片耳に手を当て、アージェが答える。

 アージェはジャイアントモールと何らかの手段で連絡を取っているようだ。


「ふむ、まあ当然か。曲がりなりにもガンダーンを斃した奴らだからな。」


「念のため、周囲も配下の魔物が捜索しておりますわ。

 抜け道でもあれば、折角生き埋めにしても台無しですもの。

 ……ほぼ間違いなく、抜け道なんてないでしょうけれどね。」


 その点はゲネルラーも同意見だった。

 抜け道とは同時に入り口でもある。それが複数あれば、意図せぬ者に遺産を奪われるリスクが高まる。


「となれば、連中もこれで終わりか……あっけないものだな。」


「逃げ場がない以上、ジャイアントモールを送り続ければいつかは必ず力尽きるでしょうね。」


「……吾輩は少し周りを見てくる。

 ここは任せても問題ないな?」


「もちろんですわ。遺跡だけでなく、この山のいたるところに魔物は伏せてありますもの。

 万一王女たちが脱出できても、即座に見つけて連絡を入れる手筈になっておりますわ。」


 その言葉を聞き、ゲネルラーは無言で歩き出す。


(理論上、王女の一味が生き延びることはない……だが、この不安感はなんだ?)


 しばらく歩き、遺跡からある程度離れた森の中で、ゲネルラーはかすかな揺れに気付いた。


(弱い地震か……いや、まさか!?)


 とっさに大剣を抜き、構えたゲネルラーのその背後に。

 地中から飛び出した2つの影が踊りかかった。



●●●



 少し、時間をさかのぼって。


「俺とネリア様で、やつらの包囲を突破できるってことです。」


 俺はそう言葉にして、直後、手近なジャイアントモールを4匹をひねり殺した。

 残る2匹はすでにジルが狙いを定めていたので譲った。

 通路の奥からはまだ多数の気配がするが、今はそちらは置いておく。


「突破……というか脱出できるのであるか?」


わたくしとしては、“魔剣”で瓦礫を掘り進んで出るつもりだったが。」


「素直に掘って地上に出ても、また四天王の3人と戦わなければならないでしょう?」


 それでは状況が最初に戻るだけだ。


「なので、まず脱出にはこれを使います。」


 そう言って、手の中に握ったものを見せる。


「……暗くて見えない。」


「おっと失礼!」


 火を吹き、松明に再度火を灯した。


「これは魔物の核……今抜き取ったものか。」


「ええ。これをこうして……」


 胸の外殻を開き、いつも通りに核を飲みこむ。


「これでトンネルを掘り、あのゲネルラーとかいう四天王に奇襲を仕掛けます。」


「そのままトンネルで逃げるわけにはいかないのですか?」


 ジルの疑問はもっともだろう。だが、


「大量のジャイアントモールを送りこんできてる以上、遺跡周辺は山ほど魔物がいると考えた方がいい。

 魔物相手に手こずっている間に、四天王が駆け付けてくる危険がある。

 かと言って、流石に山一つ分のトンネルを掘る体力はない。」


「四天王の誰かに手傷を負わせ、そのドサクサで逃げるしかない、と。

 だが、彼は手ごわいぞ。剣を交えたが、四天王筆頭というのもただの自称ではないようだ。

 “魔剣”を強化したとはいえ、今の私の剣技では……」


 ネリア様が剣を折られるところは横目に見ていた。一対一で勝てないのは事実だろう。


「ええ、多分最強の四天王でしょう。

 案山子スケアクロウを囮にするのももう通用しないでしょうし。

 ですが、他の2人相手だと戦うこと自体まともにできません。」


「確かに、あのアージェっていうのは攻撃がすり抜けてしまう相手でした。」


「クレットとかいうのは、正体自体わからなかったのであるな。」


 アージェと戦ったジル、俺と一緒にクレットに当たったバルグがそれぞれ述べる。


「そういうこと。

 で、ゲネルラーへ奇襲を仕掛けるのは俺とネリア様が担当です。」


「では、わたしとバルグさんは?」


「2人には逃走経路の確保を頼みたい。

 ゲネルラーに一撃を加えたら、アージェとクレットが来る前に、一気に下山して行方をくらませないといけない。」


「なるほど、それで“超感覚”のあるジル殿と、いざという時盾になる拙僧がそちらを……」


 バルグがそう言った直後、とうとう部屋にジャイアントモールが流れ込んできた。


「こちらの作戦がばれたら終わりだ!

 まずは、こいつらの死骸で部屋の入り口を塞ぐ!!」


「よし、まかせろビスト!」


 剣戟の音、破裂音が狭い部屋に鳴り響く――



●●●



「恐れ入ったぞ……!

 まさか貴様らの中に、地を掘る技能を持つ者がいるとはな……!!」


 ゲネルラーに斬りかかった“魔剣”はギリギリで躱され、皮膚一枚切っただけの、わずかな傷しか負わせることはできなかった。

 直後、ゲネルラーは距離を離し、大剣を構えて俺達と対峙している。

 今はまだ、魔人態の能力――魔物の核を吸収して能力を増やすことには気付かれていない。

 理想はこの場でゲネルラーを斃してしまうことだが、


「そして、その新たな“魔剣”……

 魔王様からうかがってはいたが、厄介な技能だな。」


 ネリア様に対する警戒を一層強めて、隙が無い。


(どうする、ビスト。この強化した“魔剣”、今なら多少は打ち合えるが……)


 ネリア様が小声でそう言う。


(いえ、今は逃げ伸びることが優先です……

 俺の合図で、全力で斬りかかってください。その後、即、全力で逃げてください。後は俺が何とかします。)


 かすかに頷くと、ネリア様はナイフを上段に構える。

 魔力の刃が伸び、ナイフを長剣の長さに変える。


「ほう、勝負に出るか……!

 よかろう、吾輩の“魔法剣”で迎え撃つ!!」


 ゲネルラーは大剣を八相に構え、ネリア様同様、魔力を剣に注ぎ込む。

 双方にらみ合い、まるで一日経ったかと錯覚する刹那。

 俺がわざと発した、金属化した外殻を打ち合わせる音を合図に、二人は一息に間合いを詰め。


「でやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」


 ナイフの“魔剣”と、大剣の“魔法剣”がぶつかり合い、残ったのは“魔剣”だった。

 大剣は真っ二つに折れ、その勢いのまま“魔剣”は縦一文字にゲネルラーの体を切り裂く――

 ことはなかった。


「これが“魔剣”の真価か……!」


 刃は体に届いたが、またしても浅い。

 だが、俺にとってはそれで十分だった。


「なっ……!?」


「“GOgooOoo”!」


 次の瞬間、俺が追撃をかけるからだ。


 視界の外、しかも完全に間合いの外からの、ジャイアントホッパーの能力を使った最大跳躍力。さらにドラゴンメイジの爆風魔法を用いての加速。

 折れた大剣が落下し、一瞬さえぎられたゲネルラーの視界が再び開けた時、長距離を一瞬で詰めた俺が現れる。

 既にネリア様は踵を返し、脱兎のごとく走り出している。


 飛び蹴りで、振動衝撃を叩き込んだ。

 直撃すれば、口から臓物をすべて吐き出し、五体が四散する威力だったが――


「があっ……!」


 ギリギリで、衝撃を逸らされた。驚異的な戦闘技術だ。

 致命傷には程遠いが、しかし、ゲネルラーは片膝をついた。

 効いてはいる。


 本当なら、このままさらに追撃を加えたいところだが――


「ゲネルラー様……!」


 さほど離れていない距離から、アージェの声が聞こえる。

 戦闘の音が聞こえたのであろう、すぐにここに来るはずだ。

 これ以上は無理、と判断し、俺も全力で逃走に入る。



●●●



「ゲネルラー様、まさか“魔剣”の王女が!?」


 アージェだけでなく、クレットも同時に、ゲネルラーのもとに駆け付ける。


「ゲネルラー殿に手傷を負わせるとは……

 しかし、この程度の傷なら……」


 切り傷を見て、クレットがそう言いかけるが、それを遮るようにゲネルラーは手で制し、


「ごぼぁっ……!」


 大量の血を吐き出した。


「なっ、これは……!」


 ひとしきり血を吐き、肩で息をしながらも、ゲネルラーは口をぬぐった。


「この程度では吾輩は死なん。

 しかし……“魔剣”の冴えもなかなかのものだが、真に恐ろしいのは王女ではなかった……!」


「では、このダメージは!?」


「王女と共にいた、あのおぞましい鎧の男……!!

 奴が……!」


 そう言い残し、ゲネルラーは意識を手放した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ