月末=金欠
「そして僕は」の後日談――という名の別作品に近いなにか。
なぜあれから日常系になったか。それはまぁ、読めばわかるはずです。きっと。
ホワイトハッカー。それは、ハッキングの技術をちゃんとした方向に使うことを職業とするものだ。
じゃあ、一つ質問しよう。
ホワイトな殺し屋は存在するか?
まあ、ここまで来て、「いない」っていうやつはいないだろう。多分。
そう。いるんだなこれが。まあ、言ってしまえばこの俺の職業だ。
ちょっと説明すると、「国家直属暗殺者」という名前だ。
一応、国家公務員、である。とはいえ、一つの任務ごとに報酬が出るため、収入は安定しない。
ちなみに、本名を公表するのは仕事上よくないわけで。結果として、馬鹿みたいに中二病チックな通り名が付けられてしまうわけだ。俺の通り名は、「黒き断罪人」。
そんな俺とコンビを組んでるのが、俺の隣にいる――
「ねえ。ご飯は?」
「ないが? ってかそろそろ貯金しねえか?」
こいつが大体言う言葉は「ご飯は?」か「眠い」くらいのこいつ――俺とは逆に全身を真っ白な装備で固めた――「白の道化師」。数年前、俺が人を始めて殺した時にこの業界に誘った、その本人だ。
その名の通り、変装技術に長けている。いやまあ、本人は身長150センチくらいなのに、あの時は身長170センチくらいの男に見えたってくらいだ。
「貯金……? 何それ」
……変装と暗殺以外は、何もできないってのが弱点ってくらいだ。もはや弱点というレベルではないが。
「あのなあ、いつまでも任務達成でもらった報酬で打ち上げして、月末に飯を食わねえってのはあぶねえぞ?」
しかし彼女は首を傾げて、
「何が? 別に私たち、殺されないじゃん」
もはや何も言うまい。
「まあいい。丁度今日が任務の日だ。行くぞ」
「ちょっと待って。私着替えてくる」
こいつが言う、着替えるってのはつまり、「マジモード」だ。
まあ、今回の任務はちょいとヘビーかもな。
五分後。真っ白なメイド服に身を包んだ彼女が出てきた。
「……なんだそりゃ」
「あんたには言われたくない」
まあ、俺も黒のアンダーシャツの上に黒い外套(中には武器が少し)とかだしな。人のことは言えない。
「んじゃ、行きますか」
「ん」
俺と彼女は、すっかり日が沈んだ札幌の街に向かった。