61・リターン。
その知らせを持ってきたのは脳筋勇者のパーティの一員でケンジを鑑定してくれた
あの神官だった。
「闘技場の街の神殿から急報が来ました。
王宮にも直轄領の代官から連絡が入っているそうです。
迷宮が溢れました。スタンピードです。
迷宮前の砦との連絡も途絶えてるそうですよ。
どうします? 勇者。行きますか?」
コイツがわざわざ知らせに来たってコトは行って欲しいんだろうなぁ。
「行け!」って強制しないのは脳筋勇者の性格を知ってるからだろう。
脳筋勇者といえどもスタンピードとなれば簡単にはいかないだろう。
巨大な物量にはパーティの一つや二つなんかで太刀打ちできるはずもない。
魔王軍との戦争は将軍以下の軍隊が粗方の敵を抑えていたからこそ勝利できた。
いかに勇者が強くても多勢に無勢ということは確かに有ると思う。
脳筋勇者は行くという。
「これでも勇者だからな。
それにアノ街には世話になった連中もいる。
王宮に出撃報告を出しといてくれるように公爵に頼むか」
「向こうから依頼してくると思いますよ。
まあ、王都は魔術師の切れ目のあるアノ山が有りますから余程のことが無い限り
安全ですからね。
ドコまで危機感を持ってくれるかは分かりませんけど……」
あの城壁なイメージは当たりな訳か。
オレの知らない昔のヤツラが魔術で築いた代物ってコトかもな。
魔術師の切れ目の他にケンジが開けちまったトンネルもあるから防衛地点が
増えちまってるんだが。
「オレも行きますよ。
アノ街にはイイ思い出が有るわけじゃあないですがオレも勇者だって
言われちゃいましたからね。
移動に絨毯を使えますし」
ケンジ、お前……ココの世界の勇者じゃあないのにイイのか?
「まあ、ドコに居ても勇者だってコトから逃げられそうも無いですし。
最強さんのパーティに入れてもらってますしね」
わかった……オレも行くゾ!
オレだってコノ脳筋野郎のパーティに入ってるからな。
ああ、ギルとアリィは留守番だ。
スマンがどう考えても足手まといだからな。
『オレも連れてってくれよ!
あそこにはリリアーナが……母さんが居るんだ!』
えっ!?
ガリィ様の赴任先ってアノ街だったのか!?
『うん。ちょうど前の代官さんが引退したんだそうなんだ。
なのでアノ直轄地の代官になったんだよ』
でも、リリアーナ様はお前を自分の子供だってコトを知らないんだろ?
『前世じゃ捨て子で孤児院育ちだったんだ。
彼女の為にはオレは居ない方がイイ……要らない子だってコトは分かってる。
でも、前世だと知ることもできなかったけどココだと彼女が親だってコトが
分かってる。
分かってるってだけで……ソレだけで嬉しかった。
王のコトもホントは嫌いじゃないし王宮に居ろって言ってくれたのは嬉しかった。
でも、リリアーナの嘆きを知ってたからね。
素直に「はい!」と言うわけにいかないと思ったんだよ。
王はもう亡くなってしまったけど母はまだ生きてるんだ。
何か彼女や彼女の周りのためにできることをしたいんだよ』
そうは言っても……なぁ。
転移くらいしか使えないお前を連れて行っても……
「イイぞ。付いて来い。
スタンピードなんてそうそう起きないからな。
オレだって駆け出しの頃に小規模なヤツに遭っただけだ。
ソコに居て体感するだけで今後の為になると思うゾ。
なぁにイザとなったら転移と絨毯で逃げればイイさ」
脳筋勇者は脳筋なだけじゃなくて脳天気なヤツでもあるらしい。
結局ギルまで付いてくることになっちまった。
気の毒に。
神殿の転移陣を使わせてもらって闘技場の街に戻った。
神官と首輪の魔術師、キティも付いてきた。
まあ、コイツラは元から脳筋勇者のパーティだからな。
さて、後輩なオレ達ってなんか役に立てるのかね?




