59・山分け。
ケンジが居た場所には魔石の山ができていた。
まさかコレに埋まっちまったのか?
勇者とキティは無事だった。
連中の言うことには玉がボンという感じで割れたんだという。
なので魔石を勇者に「収納」してもらった。
あの玉はどうも魔石の貯蔵庫みたいなモノだったのかも……
ケンジ……意識が飛んでやがる。
あれ? アリィのヤツはドコに行ったんだ?
そう思ったら声が聞こえた。
『助けてーーっ!!!』
上空から落ちてきやがった。
転移でなんとかできないのかよ!
キティが風魔法で軽く受け止めてくれなかったらペチャンコだったな。
『あー、ビックリした。
思わず転移しちゃったんだよ。でもまだ連続じゃあできないんだ。
見学気分だったのに死にかけるとはねぇ……
ありがと。キティさん』
目を覚ましたケンジは謝っていた。
まあ、突き飛ばさなかったら一緒に魔石の山の下だったもんな。
ギルもアリィも怒ってなかったよ。オレもだけど。
でもまさかクッションにされるとは思ってなかったけどな。
ケンジ達が辺りを索敵してみたけど小物の魔物すら居なかった。
アノ玉に怯えて逃げてしまったらしい。
脳筋勇者が妙な顔をしてるので問いただしてみた。
「割れた時にな……変な気配がしたんだよ。
前に一度だけドラゴンと戦ったことがあるんだがなんだかソイツと似た様な
感じだったんだ。
ほんの一瞬で消えちまったんだが」
ドラゴン?
ホントにドラゴンが居たんなら他の魔物や家畜が怯えたってのは分かる気がする。
でも一瞬ってのはどういうことなんだろう?
今は気配がしないってコトは逃げたのか?
「限界ギリギリまで索敵してみましたけどそんな気配は見つかりませんね。
多少の隠蔽や隠密ならソレを使った余波が少しは残りますから使ったってコトが
分かるんですけど。
魔石の持ち主は逃げたってコトですかね」
暫くソコで待機してみたけど何も起こらなかったし何も現れたりしなかった。
なので撤収した。
一応ギルドの支部に報告はしたんだが……まあ、信用なんてできないよな。
魔石の山を出して見せたんだが……
アノ玉が生物だったのかどうかも判定できないもんなぁ。
でも道案内を頼んだ冒険者が証言をしてくれた。
一応あの変な玉は退治したってコトになった。
また出ないとは誰にも言えないんだけどな。
被害を食い止めるだけでもイイというコトだったのでなんだか
中途半端な気もしたが依頼は完了したんだけど……
脳筋勇者がねぇ……納得してないんだよ。
「せっかく来たのに何にもしてないのに向こうが勝手に爆発したからなぁ。
こんなので依頼完了ってのは詐欺にあった気分だな」
まったくコイツってドラゴンとでも遊ばないと満足なんてできないんじゃあ
ないだろうか?
魔石の山を手に入れても満足した様子も見せないしなぁ。
魔石はココの連中にも分けることにした。
被害は少なかったとはいえゼロって訳じゃあなかったし負傷させられた冒険者や
兵士も居たからな。
半分くらい渡して分配具合はココのギルド支部のギルマスに丸投げしたんだ。
手間をかけさせてスマンね。
オレに来た分け前でケンジからの借金はチャラになった。
ケンジはアリィにまで分けていた。
「見学のはずだったのに死にかけちゃったもんね。
まだ使い道が無いかもしれないけどお金があれば気分的にも余裕がでるからね」
『ありがとう。死にかけたけど勝手に転移しちゃったせいだからケンジ兄ちゃんの
せいじゃあないんだけど。
でもお金って嬉しいよね。ベルとロゼに何かお土産でも買っちゃおうかな』
欲求不満な雰囲気の脳筋勇者をよそに満足げだな……コイツ。
アリィの要望でココの領都で少し買い物をして王都に帰還した。
そうして脳筋勇者には退屈も欲求不満も吹き飛ばす事態が待ってたんだ。




