57・勇者談義。
アリィははしゃいでいた。
オレ達は空飛ぶ絨毯で依頼先の領地に向かって飛んでいる。
コイツはどうやら高い空だろうがムチャクチャな早さだろうが平気らしい。
ハゲのギルは予想どうり固まっちまってるけど。
『コレって最高! オレじゃあ動かせないのがスッゴイ残念だよーっ!』
脳筋勇者は動かせたんだがアリィだとちょっぴり浮かべることはできても
動かすのは無理だった。
『転移は前世でも得意だったせいかすぐできるようになったんだけどね。
他はできてもほとんど初心者レベルなんだよ。
まあ、レベル1に戻っちゃったって気分だねぇ』
まあ、赤ん坊が高レベルってのは違和感なんてもんじゃあないもんな。
下手をするとバケモノ扱いされかねない。
でも、ヤッパリコイツも勇者なんだな。
初心者レベルとは言え何でもできちゃうなんてな。
「なんでもできるのはいいんだけど、勇者は気をつけないとイケナイんだよ。
色々できるからかえってドレも中途半端になっちゃったりするからね。
何でもできるけど専門家には敵わないことが多いんだ。
スキルのバランスにも気をつけないとイケナイしね」
なるほど、何でもできても特化してるヤツらほどにはなかなか成れないと。
万能ではあってもどれも最強ってわけにはいかないのか。
脳筋勇者はどっちかっていうと戦士寄りなヤツだしな。
魔法もできない訳じゃあないようだけど奥さんのキティの方が上手いと思う。
「オレの世界には『器用貧乏』って言葉があってね。
なんでもできるんでかえって気が散ってしまって特化するとか大成するとか
できないヤツのことなんだよ。
でも仲間の能力がかなり理解できるからパーティリーダーには向いてることに
なってるんだ。
自分で何でもできるから仲間なんか要らないってコトはないからね」
前世の仲間ってどうなったのかわかるのか?
邪龍にお前はヤラレたんだろうけど仲間も居たんだろ?
『あー、もうコレはダメだと思ったんで仲間は逃がしたんだ。
邪龍のパワーテリトリーの中からはなかなか逃げらんなかったんだけど全力で
放り出したんだよ。
まあ、アノ程度じゃあ死なない連中だからダメージはあっても生きて帰れたと
神さまは言ってたよ。
だけど人数が減れば当然攻撃は集中しちゃうからね。
オレは逃げ切れなかったんだよ』
仲間を逃がして自分はヤラレた訳か。
思ったより「勇者」してたんだな。
ガキのくせに。
『ケンジ兄ちゃんの言うことってなんか分かる気がするよ。
仲間はみんな年上だったんでそれぞれ専門な力ってオレより上で当然って思って
居たんだ。
言われてみればあそこまでの実力にオレが行けたかどうか自信ないもんね』
「オレの所って召還される連中が多い所で戻れた連中も結構いるんだよ。
勇者が一人や二人じゃあ済まないくらいなんだ。
だからタイプの違うヤツが色々居てね。
得意なコトがそれぞれ違ってたりするんだよ。
でも勇者だけのパーティってなかなか上手く回らないことが多いんだ。
リーダーだけゾロゾロ居たらそりゃあ上手く行くわけないよね。
まあ、勇者だけでも上手く行ってたパーティはオレの幼馴染みな連中だったんだ。
気心が知れてたしどこまで信頼してイイかってのも分かってたしね」
お前がリーダーだったのか?
「リーダーは仲間の中で最初に召喚されたヤツですよ。
オレ達はソイツと師匠のオカゲで元の世界に帰れたんだ。
今頃探してくれてるんじゃないかな。
もっとも見つかったらぶん殴られそうな気もするんだけど」
まあ、心配かけてるのはわかってるんだな。
素直に殴られるくらいは必要かもしれない。
勇者談義をしているうちに目的の領地に着いてしまった。
ギルマスは馬車で一週間って言ってたと思ったんだが……
のほほんとした顔なくせにケンジは『速い』ことにこだわりがあるようだ。
コイツの世界じゃあこんな速さって普通なんだろうか?




