51・ツルッパゲ
ソイツはデカかった。
街の家の五軒分くらいはあると思う。
高さも三階から四階分くらいある。
こんなデカ物、どうするんだよ。
「デカいから手間がかかるし油断すると取り込まれて消化されちまう。
まあ、魔力に変換されてコアに溜め込まれちまう訳だ。
しかもスライムをやっつけましたなんて言ってもカッコ悪いからな。
誰もやりたがらないってのも分かるだろ?」
ココまでスライムがデカくなるなんて話すら聞いたことが無いんだが。
「話す前に喰われちまったりするからなぁ。
知ってるヤツは知ってるけどスライムの話なんぞ酒のつまみにもならん。
基本放置だったりするんだがどうも二組ばかり調査に来たパーティが
逃げ切れなくて喰われたみたいなんだよ。
ココって王都にも近いんでギルマスもほっとけなかったみたいだな」
三組目に選ばれたなんて自慢にもなりそうにないな。
「端から削ってコアを割っちまえば終だよ。簡単と言えば簡単なお仕事だ」
「スライムって弱点とかあるんですか?」
う~ん、考えたことが無かったな。
なにしろ普通のスライムって普通に切るだけでコアを破壊できる。
剣の一振りで片付いちまう最弱なヤツなんだ。
弱点なんて考える必要もないヤツだからなぁ。
「でもこの大きさじゃあ一振りって訳にはいきませんよねぇ。
コアにたどり着くまでの手間ってやっぱり切り離しとかですか?」
「ほとんど水分みたいなもんなんだ。
特殊個体だと酸性やアルカリ性だったりするから皮膚に付くと厄介だな。
これだけデカいとコアが一つじゃあなかったりする。
何匹か合体してこうなってることもあるんだよ」
「ほとんど水分なら水分が抜ければ小さくなりますかね?」
「水魔法じゃダメだぞ。アレ自体が水魔法の塊みたいなもんだからな。
並の水魔法は跳ね返すし耐性もあるんだよ」
ケンジはちょっと考え込んだ。
そーしてアイテムボックスからなにやら白いモノを取り出した。
「ちょっとコレを試してみたいんですけど」
勇者は、そんなモノで?という顔をしたがやってイイと頷いた。
ケンジが何をしたかというとソノ白い粉のような物体を振りかけただけだ。
そうしてソレは劇的な効果を示した。
なのでみんなでソレをデカスライムに掛けまくった。
スライムの水分はドンドン抜けていった。
お前、こんなに山ほど持って歩く必要なんて無いんじゃないのか?
『塩』なんて……
「なんでこんなに塩が入ってるのか分かんないですよ。
まあ、交易品だったのかもしれませんね。
塩分が無いと料理って料理じゃあないですからね」
それでも足りないくらいだったのでケンジは抜けた水分から
また塩を回収していた。錬金術までできるのか……もう万能だよなぁ。
幸いなことに抜けた体液は酸性でもアルカリ性でもなかった。
コアはなんと30個もあったんだ。
ところがソレで終了とはいかなかった。
出てきたんだよ……犠牲者が!
ほとんどは骨だったけど一人だけ形を保ってた。
装備その他は全部溶かされてたのになぜか本人は溶けていなかった。
体毛が一本も残っていなかった。まるっきりのツルッパゲだな。
しかもケンジはまだ生きているという。
「コレって入れ墨みたいですけどコレの効果のようですね」
ケンジの示した腕の入れ墨を見た勇者はソレが護身の魔方陣だと言った。
「大した効果があるもんじゃあないし自前の魔力が切れたらソレマデだ。
まあ、オマジナイみたいなもんだが今回は意外な効果ってヤツかもな」
ともかくコイツは生き延びたわけだ。
まあ、毛が一本も無くなってるからもう限界は近かっただろう。
ケンジは水魔法で洗ってやってクリーンの魔法をかけた。
アリィを包んでたのと同じモコモコの布で包んで例の空飛ぶ絨毯に乗せた。
水魔法をかけてからだとクリーンの魔法の効果が高くなるんだそうだ。
溶かされた犠牲者達の遺骨まで回収している。
そんなのはココに埋めていけばイイと思うんだが。
「あー、そういえばそうですよね。
でも運べないならともかくオレ……運べますから。
こんな所よりせめて街の近くに埋葬してあげたいんです」
どうも「骨」になにかこだわりとかあるみたいだな。
まあ、スケルトンになられても困るから神官のお清めくらいは必要か。
生き残りのツルッパゲ野郎が目覚めたのはギルドに着いてからだった。




