閑話・せっかくギリィ様についてきたのに結局出番の無かった指揮官氏。
オレは公爵様に拾ってもらったようなものだ。
一族が反逆罪を疑われたほどの疑獄事件のあとで落ちぶれてしまったのだ。
有罪とはならなかったものの完璧な無実と証明できなかったこともあって
離れてゆく者は多かった。
公爵様はそんなオレを信用してくださった。
オカゲで貴族社会から完全にハブられることもなくなんとか一族は命脈を
保っている。
公爵様は先王の王子の一人で現王の同母弟だ。
だが関係は微妙と言っていいだろう。
原因は亡くなられた先妻のリリア様だ。
王は政略のための婚約者が、現王妃がおられたのにリリア様に執着された。
それから逃れるようにリリア様は公爵と結婚されたのだ。
王妃とリリア様は親しかった。
なので王妃の立場を侵害したくなかったのだとおっしゃっていた。
公爵様はリリア様が公爵を愛しているのではないと分かっていながら彼女のために
彼女のお腹の子、国を憂慮された先王達のために結婚された。
愛してもらえなくても信頼はされていると思えたのが嬉しかったそうだ。
リリア様が亡くなられて現王との関係も微妙ながら平穏を保っていたのに……
リリアーナ様はあまりにもリリア様に似過ぎていた。
彼女が男爵家からほとんどさらうように嫁入りされてから微妙だった二人の間が
余計にギクシャクとして来たとは感じていたのだが……
まさか王が公爵夫人を拉致するなんて……
そんなスキャンダルはとても公にはできない。
彼女のためにも、公爵家のためにも、勿論国のためにも。
公爵様は帰国して決意を固められた。
公爵家を犠牲にしても彼女を取り返すことを。
息子のガリィ様を勘当することも検討されたようだった。
私に命じられたのはガリィ様の足止めだったのだがソレは失敗した。
まさかあれほどガリィ様に似ている一族の方がおられたとは……
そうしてあの若い魔術師……常識外れにも程ってものがあると思うんだが……
公爵様は私を責めなかった。
ともかく離宮に乗り込むメンバーに加えてくださった。
勇者までメンバーに加わるとは思ってなかった。
内心でもしもの時は口封じのことも考えていたのだけれど勇者を口封じなんて
できるはずもない。
結局オレは見ているだけで何もできなかった。
流産されたリリアーナ様のために医者を呼びに行っただけだった。
皆がうろたえ茫然とする中で一番冷静だったのは元兵士の冒険者だったろうか。
あの若い魔術師、ケンジでさえパニック寸前になってたのに色々指示をだせたのは
アイツだけだったからな。
信じられないことに事態を治めたのは流産だったはずの胎児だった。
王はもう亡くなられているのだと。
リリアーナ様はリリア様ではないのだと。
公爵様にも王にもそれはお辛いコトだったと思う。
亡くしてしまったリリア様をもう一度取り戻したいと望まれた気持ちは二人とも
同じだったのだろうけれど。
ガリィ様は勘当という形で公爵家から自由になられた。
リリアーナ様と二人で新しい道を行くことを選ばれたそうだ。
王妃さまも助力を約束されたそうだから心配は要らないと思う。
公爵様はあの赤ん坊を引き取ろうとされたけれど本人は迷惑をかけるのを
心配したらしく多少の援助以外は断ったという。
なぜかギリィ様の養子という形で決着した。
「私もあの子と似たような立場でね。
公爵やガリィのオカゲで貴族の一員でいられてる。
ガリィに付いていこうと思ったんだが公爵の心配をガリィがしてるからね。
お側に控えて時々様子を知らせて欲しいと言われてしまったんだよ。
ずっと公爵の側に居た君には目障りかもしれないがよろしく頼むよ。」
似たような立場……か。
王家にはそういう秘密なんぞ山ほどあるんだろう。
公爵様は秘密なことを抱えながら生きてこられたということか。
オレが公爵様にして差し上げられることなどほとんど無いと思う。
今回も何もできなかったようなものだったし、、
それでもこれからも公爵様のお側に控えていたい。
ほんのすこしでも公爵様のためになることができるなら……と思うから。




