40・恋人。
確かめてみる。ちゃんと付いている。
確かに「野郎」だったんだな。
デコピンならぬチンピンをしてやる。まあエアだけど(笑)。
『ちょっ! ちょっとーっ!! 何すんだよ!
オレまだ生まれたてなんだぞ! 止めてくれよーっ!』
口は達者……というか念話が達者なヤツだな。
口だけで何にも出来ないところは笑えるが。
ケンジがアイテムボックスからフワフワでモコモコな布を出して包んだ。
まあ、オレだって赤ん坊のチンチンはカワイイと思うけど別に
眺めて喜ぶ趣味があるわけじゃあないからな。
さて、どうしたものだろう。
まあ、本人に聞いてみるのが一番か。
『まさかこんな急激に成長するなんて思ってもみなかったからなぁ。
神さまに貴族の次男か三男あたりにして欲しいってお願いしたのは
ガキはすぐに死んじまうからなんだ。
貴族のほうが多少でもそういうのは有利だからな。
平穏無事な人生をのんびり送れればよかったんだ。
別に支配階級になりたかった訳じゃないぞ』
「王の……私の子供なのに不満なのか?」
『不満? 不満に決まってるだろ!
コレのドコが平穏無事な生活なんだよ!
オレはみんな見てたし聞いてたんだ。
彼女の記憶や感情までオレに流れ込んで来てたからな。
アンタは王でも尊敬なんかされてなかったし強姦魔としか認識されてないゾ』
「夫の……私のことはどうだったんだ?」
『夫のアンタは彼女を妻とみてなかったろ?
勿論リリアじゃなくリリアーナの方をだ。
一から十まで彼女をリリアに仕立て上げようとしてると感じてたよ。
彼女が愛してたのは結婚前の恋人だけだ。
身分差があるけど末席でも妻にしてくれると約束ができていた。
アンタが割り込まなければ幸せになれたはずだと恨んで呪ってた。
朝から晩まで一日中……夢の中まで……な』
「恋人……一体誰が……」
『……結婚後は彼から冷たい目で見られていると悲しんでいた。
彼女が裏切ったと思ったんだろう。
彼女も勘違いしてたからな、ソイツが正妻として迎えてくれる気になったんだと。
まあ、おちぶれた男爵家が公爵家からの話を簡単に拒否できないからな。
気が付いたときには親どもが全部話を整えてしまっていた。
そこに居るだろう。ガリィっていったよな。
アンタの息子だよ』
みんなガリィさまを振り返った。
「ほ、ほんとに彼女は私を愛してたと?」
『ココへ拉致された時からずっと死にたがってたんだ。
でも、せめてもう一度アンタに会いたいと願ってた。
何度も名前を呼びながら泣いてたんだ。
飛び降りたときアンタのことを一言も言わなかったのは
迷惑をかけたくなかったからだ』
ガリィ様は走って行った。
リリアーナ様は医者が診察と休養のために部屋に連れて行ったから。
コイツ……親のコトをボロボロばらしちゃってどういうつもりなんだよ。
それにオレが聞いたのはコイツが自分をどうしたいかってコトだ。
公爵夫人の心の秘密なんかを聞きたかったんじゃないゾ!




