36・温泉付き保養地。
勇者のパーティは勇者・魔術師・魔法剣士・神官の四人だった。
魔王軍を押し返し将軍以下の軍人達が敵を抑えている間に敵陣に乗り込んで
陣頭に出てきていた魔王を倒したんだそうだ。
「まさか魔王が陣頭指揮をしてるとは思ってなかったから驚いたよ。
だがチャンスだからな。逃すわけにはいかなかったんだ。
結構強かったぞ。だが実戦経験が足りてないって感じたな。
オレが負けたヤツはチビだったけどその辺が桁違いだったよ」
一体ドコの何奴なんだよ……
そんなヤツなんてオレはお目に掛かりたくねぇな。
報奨金を受け取っただけで貴族にも騎士にもならず姿を消したって話だったが。
まあ、脳筋でバトルジャンキーなヤツだもんな、勇者だけど。
コレじゃあ貴族なんか勤まらないだろうし貴族の連中もつきあいきれないと
思ったんだろう……うん……気持ちは分かる。
結局、最強闘士……あー、もう「勇者」でいいか! 勇者も同行することになった。
空飛ぶ絨毯は勇者のお気に召したようだ。
「スゲーなコレ! 風魔法で空を飛ばせてもらったことはあるけど魔道具とはな。
コレってオレでも動かせるのか?」
「今のところ動かせたのはオレだけですね。
使用者を限定してる訳じゃないみたいですけど……やってみますか?」
勇者は浮かばせることができた。
ほんの背丈ほどの高さだったけど。
「魔力を溜め込んだ魔石なんかがあれば自前の魔力を使わなくても動きますよ。
ただ高くとか早くとなると慣れと集中が必要みたいです」
ケンジは慣れてたってコトか。
保養地は馬車で半日だが絨毯だとあっという間だった。
隠蔽がかかってるので誰も気付いた様子も無い。
ココは古くからの温泉地だ。
貴族・王族の別荘も多いし庶民のための宿屋なんかも軒を連ねている。
オレだって遊びに来たことがあるからな。
王家の離宮は保養地のはずれにある。
三方が崖になった高台だ。
警備的には一方だけに集中できるから楽といえば楽な物件だね。
だがオレ達は空からだ。
竜騎士が居た頃ならそっちの心配もしなければいけなかっただろうが今はもう
この周辺の他の国にも数えるほどしか残っていない。
まあ、その辺は無視してもいいだろうな。
近くまで飛んで勇者が索敵をかけた。
「あー……居るな。王には以前お目に掛かってるから分かる。
女連れだな……コレが公爵夫人ってコトか……
アレ? 屋上に出てくるみたいだぞ!」
塔もついているが屋上がパーティが開けるような広場な造りの棟があった。
どうしてこんなに都合良く屋上なんかに出てくるんだろう?
この絨毯の隠蔽はレベルの高いヤツには関知できるって言ってたよな。
ということは感づかれてるってことなんだろうか?
理由は勇者のパーティの一員だった。
なぜか隷属の首輪がついた魔術師が王の側に控えてたんだ。




