32・空飛ぶ絨毯。
次の街でギリィ様はどこかに連絡を取っていた。
通信の魔道具は各街の役所やそれぞれの業界のギルドなんかに設置されている。
貴族だと独自に持ってたりもする。
囮はもうお役御免なのでそういう設備の使用も解禁らしい。
本物のガリィ様は父君との面会に成功したそうだ。
けれど父君の行動を阻止することはできていないらしい。
オレ達が王都に着くまでには全てが終わってる可能性が大きいな。
そう思ってたらケンジは
「お急ぎならオレが魔道具でお連れしますよ。
馬車だとあと三・四日くらいでしたね。
ちょっと変な魔道具なんですけど一日で大丈夫だと思います」
なんてことを言い出した。
……変な魔道具って……(汗。)
アイテムボックスからケンジが出したのは絨毯だった。
結構広めだな。
え? オレにコレに座れってか?
座ったら絨毯はすぅーっと浮かび上がった。
「子供の絵本のお話に出てきた魔道具なんですけどね。
例の弓を造った偏屈オヤジが面白がって造っちゃったんです。
本人は魔法が使えない人なんでこういう魔道具を造るのが好きみたいです。
コレで飛んでいきましょう」
ガリィ様は魔術師に王都まで風魔法で飛んで運ばれたって話だったよな。
人を一人運ぶのは大変そうだったってギリィ様が言ってた。
ギリィ様と護衛達・指揮官氏・桶娘と文句娘・オレとケンジ・・八人だな。
これだけ居たら絨毯は狭いかと思いきや皆が座ったらなんだか広くなった。
「空間魔法の応用らしいんですけどね。
オレはこういうのは使うばっかりで造ったことが無いんで理屈はわかりません。
結界も張れますし隠蔽の機能も有るんで変なモノが飛んでるって分かるのは
レベルの高い人ですね」
結局コレで行くことになった。
あー……ちょっとどころか盛大に後悔したよ。
かなりの高さに飛び上がったし何しろ早すぎる!
何でお前はこんな早さで平気なんだよ!!!
「近くを見てないで遠くを見てて下さいよ。
早さをそれほど感じませんから。
もっと高い方が良ければ高くできますけど?」
やめろーっ! 今だって城のテッペンくらいの高さなんだ!
これ以上高く飛んだら目眩を起こして落っこちそうだ!
「大丈夫です。結界が張ってありますから。
飛び降りようとしてもできませんよ」
オレの他の乗客はほとんど固まっていた。
こんな高さは普段の生活じゃあ体験なんかしないからな。
昔は飛竜に乗る竜騎士も居たんだそうだが魔王軍との戦争で
ほとんど全滅している。
連中が見てた風景ってこんなもんだったんだな。
「まいったな……ここまで高く飛ぶとは思ってなかったよ。
できたらもう少し低く飛んでもらえるかね?」
「はい。すみませんでした。すこし下げますね。
なんかオレ・・高いところが好きだったみたいです」
バカと煙は高いところに上りたがるって誰か言ってたよな。
コイツ……もしかしなくてもバカだな。
変な魔道具でも高性能だった。
途中で大鷲の魔物がからんできたんだけどあっという間に振り切ってしまった。
隠蔽がかかってるはずなのにからんできたってコトはあの大鷲どもって
レベルが高いのか?
そうして1日と言ったのに半日で王都に着いてしまったんだ。




