26・選択肢。
夜更けに手洗いに起きたら一階の酒場兼食堂で奴隷商人とガリィ様が
酒を飲みながら何か話していた。
まあ、関係ないのでそのまま戻ろうとしたら二人に気付かれたようで呼ばれた。
「明日は私はオークションに行かなければならないので早く出ます。
お別れは言っていられないと思いますのでココで言わせてください。
色々と有り難うございました。
ケンジさんにもよろしくお伝えください」
「そうか、ケンジに直接……あー、アレが餞別みたいなもんか。
色々やったのはケンジでオレじゃあなかったのによかったのか?」
「3人分の薬、しかもとんでもない薬でしたからね。
アレでも足りないくらいですよ。
もし、彼が調合できるようになったらぜひとも奴隷商ギルドに売り込んで下さい。
高くてもきっと喜んで買うと思います」
アイツはそういうことで儲けようとはしないと思う。
回復薬の上級品のレシピだって知り合った冒険者に簡単に教えてたし。
まあ、できたらそっちに話を持ってくように言ってみるよ。
「期待したいですね。
彼の記憶がもどればそういうことも分かるんでしょうね。
呪いが解けることを祈ってますよ」
そう言うと彼はなんだか意味深な感じに笑って部屋に戻って行った。
「真面目で仕事熱心な商人、だね。
偽物な私としてはちょっとまぶしいくらいだよ」
この偽商人なガリィ様は多分貴族で軍人だろう。
そんな人から「まぶしい」なんて言われてるなんて分かったらアノ奴隷商は
どんな顔をするだろう?
まあ分からないほうがイイかもな。
「明日は我々も早めに出ようと思う。
この先で多分また待ち人が居るだろうから。
他の旅人をは巻き込みたくないんだ」
それにしてはのんびりコノ街に泊まってるよな。
さっさと馬車を飛ばして夜通し走るかと思ったんだが……
王都のある王領はもう隣だから道は整備されてるし多少の賊はいても魔物は少ない。
この時期なら月も満月に近いから多少の明かりの魔道具があれば夜道でも
かなり安全に動けると思えるんだけどな。
オレ達が宿を出る頃にはもう奴隷商は居なかった。
馬車は準備済みで、さあ出かけようとなったらケンジがガリィ様に話かけた。
「真夜中過ぎに待ちぼうけを喰わせた人たちが街の外を通過していきました。
きっとこの先でまた待ってると思います。
あの人達をどうしたいのか教えていただけませんか?
無力化したいのか、全員殺してしまいたいのか、それともただアナタ方に
引きつけておけばいいのか」
……選択肢を三つ言ったってことは全部できるってコトなのか?
出来そうに思えるところがもう普通じゃあ無いよな、コイツ。




