23・保険。
見ていた鑑定士は目を見開いて口までアングリと開いていた。
「どうなってんですか!? その薬!!!
彼女の性病はかなりの進行状態だったんですよ!
見る間に全快するような薬なんて聞いたことも無いですよ!」
ケンジによると「薬神の加護」を頂いている高位の神官が調合して
魔力の強い者たちが魔力を注ぎまくって熟成させた上級の回復薬なんだそうだ。
「記憶が途切れ途切れにしか戻ってないので彼らがどういう人たちなのか
ハッキリしないんです。
王都の神殿で診てもらえばなにか分かるかも……ってことで王都に行くんです。
記憶が戻らないのは呪いじゃあないかって以前診てくださった神官さんに
言われたんですよ」
薬は文句娘に効いたので桶娘と奴隷商人も信用できたようで恐る恐るながら
二人も飲んでいた。
鑑定士も驚きながら確認してくれた。
全快していると。
奴隷商人は商人だけあって薬を分けて欲しいと言ってきた。
でも、ケンジには断らせた。
この薬は効き目が良すぎる。
変なヤツラが寄って来かねない。
自分のことが分からないケンジにはアブナイ限りだろう。
「普通の回復薬なら造り方を知ってますがコレは原料が似たものすら
まだ見てないんです。
分かれば教えたいんですけどね。
それにコレはオレの記憶の手がかりなんですよ。
もう残りも少ないんでスミマセンがお断りさせて下さい」
「国の法が厳しいので多くはないですがやっぱり性病は根絶までいきません。
娼婦になる娘は処女だと客が嫌がるんですよ。
なので我々は手ほどきを色々しないとイケナイんです。
今度のようなことも今まで無かった訳じゃあないんです。
薬で解決できるなら高い治療費で四苦八苦ってコトも軽減できるかと。
もし造れると分かったら奴隷商のギルドに情報提供をしていただけませんか?
きっと報償を弾むと思いますよ」
「奴隷商ギルドは保険って無いんですか?」
「保険? なんでしょう? 保険って?」
「ええと、皆でお金を出し合っておいて不測の事態に備えるって契約です。
皆で出すので一人一人の出すお金は少しづつになります。
この場合は性病の治療費を賄うコトが目的ですね。
お金を出した人が全員性病になるなんて事態はそう無いでしょう。
万が一の時のための互助的なモノですね」
「そうか! イイですね!
わざと性病になるなんてヤツはいないでしょうし、
そんなことをしたら捕まって奴隷行きです。
治療費の全額でなくても半分でも助かるなら話に乗る者は居そうですね。
ギルドに話してみますよ。
ギルドが主催するなら新しいコトでも信用するでしょうからね」
『保険』なんて初めて聞く言葉だな。
なるほど、不測の事態に備える……か。
そんなのが有ったらオレも親の病気に大金を使わなくても良かったかもなぁ。
まあ、無断だったがケンジから借りられたから払えたんだがな。
オレ達の雇い主、偽商人のガリィ様は興味深げに話を聞いていた。
口出しはしなかったがなんだか楽しそうに見えた。
……なにか企んでるようにも見えて気になってしまった。




