2・賭ける。
闘技場は実は王家のモノだ。
ダンジョンは儲けの元みたいなものなので当然国が管理している。
田舎な場所でも国の直轄地なんだ。
曲がりなりにも国の兵士だからな、オレって。
勤務場所が闘技場なので興奮した客やら闘士やらをさばかないとイケナイ。
まあ、その辺は王都の警備でなれてるから多少のことはなんてことない。
さすがにココの最強闘士には敵わないけどな。
アレはもう人外なんじゃあないかと思うよ。
あの変な奴隷のガキはどこかで気を失ってたところを拾われて意識が戻らない
内に奴隷として売り払われてきたらしい。
まあ、それなりに筋肉のついた体をしてるから闘技場に来たんだろう。
慣れるまで一週間ほどは個室だがそれが過ぎたら四人部屋だ。
あとは強くなれば広めの部屋に移動させてもらえる。
飯は不味い。だが量はある。
ガキは変な顔をしながら食べていた。
もしかしてイイトコロの出なのか?
ゴブリン・コボルト・オオカミの魔物・お試しな魔物相手は軽くこなした。
ふ~ん、魔物でも最初はなかなか殺せないものなんだが……
なんでオレがガキに注目してるかというと隙がなかったからだ。
あれくらいのガキなら当然あるはずの隙が無い。
見かけの割に場数を踏んでるのかもしれないと思ったんだ。
一週間で四人部屋に移ったがアイツのいた部屋はなんだかキレイだった。
窓もない格子のはまった丸見えな部屋。
四人部屋もあっという間にキレイな雰囲気になった。
問い詰めたら魔法を使ったんだという。
以前はもっと大きな魔法が使えたらしい。
「なぜか生活魔法くらいしか使えなくなってるんですよ。
以前は攻撃的な魔法が使えたんですけどね」
生活魔法ってなんなんだ?
「飲み水を出すとか身の回りをキレイにするとかちょっと火種を出すとか。
そういうのってココには無いんですか?」
そんな細かいことは魔道具ではするけど魔法でするヤツはいない。
大きな魔法よりコントロールが難しいからだ。
的確に必要な少量の魔力を扱うってのは集中力が必要だしな。
ということはコイツは集中力が高くてコントロールが上手いってことなのか?
「便利ですよ。クリーンの魔法。簡単なんですけどねぇ」
コイツは自分の通った場所にそのクリーンの魔法とやらをかけてたらしい。
奴隷部屋だけじゃあなく通路やら訓練場までキレイになっていた。
そうしていつの間にやら銅貨や銀貨を持ってたんだ。
「通路に落ちてたんですよ。キレイにしたら出てきたんです。
コレってオレのでイイんですよね?」
硬貨に名前は書いてない。
持ってた者のモノだ。
多少なら奴隷でも持ち物は許されている。
そうしてココで賭けがされてると知ったアイツは全額を自分の勝利に賭けた。
オレが代わりに申し込んでやったんだがな。