閑話・闘技場の責任者。
あの下っ端兵士は王都の警備兵だったんだってな。
どうやらエライさんな貴族とトラブってこんな田舎まで飛ばされたんだとさ。
まあ、田舎とはいえココは王家の直轄地だ。
ダンジョンもあるから人の出入りも多いしソレなりの街になってる。
アイツが入れ込んでいたガキな奴隷闘士は金貨一枚の元値だった。
結構イイ体だったから買い入れたが予想はイイほうに外れた。
ココのベテラン連中さえ軽くあしらってたからな。
まあ、最強闘士には敵わなかったが。
アレは人外と言っていい奴だ。
ドコから来たのか分からないが自由な闘士なんであまり詮索もできない。
時々はダンジョンにも潜ってるようだ。
まあ、禁止もできないがな。
どうやらアレもガキが気に入ったらしい。
まあ、なかなかアレに対抗できるヤツはいなかったからな。
手元に置いてオモチャにでもしたかったのかもしれない。
だが……
兵士のヤツがガキを買いたいと言ってきたが貴族連中から買いたいって
申し込みが結構来ていた。
元値の百倍までって規則を知らなかった訳じゃあ無い。
あのガキの値段が上がってもオレが儲かる訳じゃあないからな。
でもちょっと誘惑にかられたんだ。
金貨二千枚・・百枚で売ったことにすれば差額は……
オレのポケットに入れても……
周りの連中はちょっと口止め料をやれば黙ってるヤツラだからな。
そう思ったんだ。
「お前がアイツを気に入ってるのは分かってるさ。
まあ、払えるんなら優先で譲ってやろう。
払えるんならな（笑。）」
払えるとはとても思えなかったんだ。
王都の出身とは言ってもたかが下っ端の兵士だ。
金貨二千枚なんて持ってるわけが無い！
「レオさん、ココの商業ギルドの店は買い取りってしてますよね？
最強さんに伸されたせいかちょっと魔法を思い出したんです。
オレ、持ち物をしまっておけるアイテムボックスの魔法ができるんですよ」
アイテムボックスの魔法！？
アレを持ってるヤツは商人とか軍隊から勧誘が来るくらいだ。
こんなガキが……
金貨が出てきたわけじゃあない。
銀だった。銀の塊が山ほど……金貨千枚分……
連中は賭けに勝ったから千枚の金貨をすでに持っていた。
そうしてガキはあの下っ端のモノということに……
いや、金を出したのはあのガキだからコレでアイツは自由ということか。
貴族にならもっと高値で売れたかもしれない。
でもまあ、二千枚は大金だ。
オレのポケットに入って来てくれた大金。
ウハウハってのはことだな（笑）。
だけどオレを待っていたのはウハウハではなかった。
街の責任者な代官に呼び出されてクビにされたあげく逮捕された。
「君はマジメにやってたと思ったんだがね。
今の王ではないとは言え王の決めたことは臣下は守らねばならない。
まだアノ「買い入れ値段の百倍まで」というお達しは撤回されていない。
つまり今の王は追認されているということだ。
まあ、べつに誰かが死んだ訳でもないが君は闘技場の責任者だった。
だから一番規則を守らなければいけなかったんだよ。
期間限定で犯罪奴隷になってもらうことにした。
王都の方にも許可をとってある。
なに、職場は今までと同じ場所だよ。
ちょっとの間だよ。ほんの三ヶ月だ。
コレでも君のために短くしてもらったんだよ。
がんばって勝てたら期間を短くしてあげてもいいかな。
何に勝つかって？ 決まってるよ。君にも闘士をやってもらおうと思ってね。」
なぜか最強闘士が同席していた。
まさか……コイツが？
確かにアノガキの奴隷を気に入ってたようだったんだが……
「あー、歓迎しますよ。皆も喜ぶと思うなぁ（笑）。
蘊蓄を色々ご存じでしたねぇ。
実戦で生かして欲しいです。楽しみですよ」
オレが口だけで弱いのを知ってるくせに……
どうしてこうなったんだ？
欲をかいたのがいけなかったのか？
二千枚の金貨は没収された。
百枚は国庫に入れられて残りは連中に返されるそうだ。
下っ端のレオのクビは撤回されて連絡がつくまで休職扱いだという。
ヤツラのコトより私のことのほうが重要だ。
これから三ヶ月とはいえ闘士をしなければならない。
アノ闘技場の医者は優秀だからこのところ死者は出ていない。
だが私のコトは闘技場のみんなが知っている。
どんな目に遭わされるか……
聞かなくても分かる気がする……
どうして私が奴隷なのかも多分アノ最強闘士が皆に教えるだろう。
三ヶ月先まで生きていられるといいんだが。
最強闘士は別に意地悪なんかしませんでしたよ。
でもお試しな魔物相手でも死にかけてたんです。
イジメてやろうと待ち構えてた連中も呆れ果てて手の出しように悩みました。
なんとか三ヶ月を死なずに過ごした元責任者さん。
ダイエットには成功したようです。
実力は強化できなかったみたいですけどね。
