始まり
街中は道路を無数の車がライトを付けて走り、男女が素敵な一夜を過ごしている。そんな何気ない光景が広がっている。
しかし、別の場所では黒い無数の影が飛び交い1人の人間が死を遂げていた。
電車というのは古い乗り物になっている。
何故かと言うと、一昔前までは電車を使う者もいたが騒音や信号待ちなどを無くそうと言うことで電車は全て撤去されモノレールに切り替えられたからだ。
そして、現在彼はモノレールに乗りとある記事を読んでいた。
―彼の名は一之瀬祐也。高校生2年生だ。
彼の読んでいた記事は「昨晩とある資産家が何者かにより殺害された」というものだ。
最近ではこの手のニュースは珍しくもない。というより、これを気にする人はかなり少ないものと思われる。
今の時代IT企業による競争が激しく株価や企業による発表などを気にする人の方が圧倒的に多い。
駅に着き人混みのなか学校へと向かう。
道路周辺は高層ビルがズラリと並んでいてその光景は壮観だ。
祐也が歩いていると前を1人の少女を見かけた。同じ制服を着た少女だ。
外見はとても美しく澄んだ黒髪に潤んだ瞳、スタイルは抜群で通りかかった者全員が見とれてしまうほどのものだ。
―彼女の名前は藤咲香里。祐也と同じ高校生2年生だ。その見た目から学校では1番モテていててそして、1番冷たい。
祐也と香里はとある事で知り合いでよく話をしているし学校の登下校は一緒にいる事が意外と多い。
そんな彼女に対して祐也は平然とした感じで話しかける。
「今日のニュースに取り上げられてたな昨日のこと。」
祐也は昨日あった事件のことを話し始めた。
すると、彼女も平然とした顔で答える。
「そうね。」
その声は心做しか感情がこもっていないように感じた。
「相変わらず何も思わないのな。」
祐也は呆れた感じで言った。
「別に何も思わないわけではないわよ。ただ興味が無いだけ。」
「あっそ。」
祐也のその言葉を最後に彼らは学校へ向かった。
香里はモテるだけあって学校へ着くと門の前には護衛隊(香里のファンクラブ)が数人1列に並び待っていた。
「香里さんお待ちしていました。お荷物お持ちしましょうか?」
先頭にいた男子生徒が(ファンクラブには男子しか居ない)そう言った。
「いえ、大丈夫です。」
香里はとても冷めた言い方をしたのだが並んでる全員の様子がおかしく落ち込むどころか喜んでいるように見える。
それもそうだファンクラブに所属する全員が香里に冷めた言い方をして欲しくてたまらないのだから。いわゆる、ドMだ。
そんなことをも気にせず香里は校内へと向かった。そして、俺はファンクラブから鋭く睨まれながら着いて行った。
下駄箱ではまたファンクラブが1列に並び立っていた。
「香里さんお靴の方綺麗にさせていただきました。どうぞ。」
そう言って香里に上履きを丁寧に差し出す。香里はその上履きを履く。
そして、また同じようなことを口にする。
「お荷物お持ちしましょうか?」
案の定香里に冷めた言い方をされ興奮している。
そして、香里が階段を登る時前を向いたままさらに追い打ちをした。
「これからはこのような事はしないで下さい。」
その言葉に全員は興奮のあまり倒れ込んでいた。そして、通りかかる祐也をそのままの体制で睨みつけていた。
祐也はファンクラブから害悪と呼ばれておりかなり嫌われている。理由は本当に単純で祐也がよく香里と登下校をしているからだ。祐也本人は「これだけの事で嫌われるのか」と呆れている。
「何故あの人達は私があれだけ冷たくしても止めないの?」
香里は彼らのの行動がかなり気に入らないらしくかなり不満な顔をしていた。
「仕方が無いだろ。あいつらはお前に冷たくして欲しくてやってるんだし。」
「けど、冷たくしなくても同じよ。」
「確かにな。」
2人はそのまま教室へ入っていった。
香里は学校で1番モテるが1番冷たいと言ったが実際は相手を選んでいる。だから、友達は居ないということは無いし彼女は色んな人に笑ってもみせる。
一方祐也も友達は居ないことは無いがお昼などは基本的に1人でいる。今日もまた1人で食事をすませて1人で屋上で寝ている。
すると、屋上のドアが開く音がしたが祐也は全く気にしてなかった。少しするとまたドアが開く音がした。そして、何だか話し声が聞こえるそれも男女の声だ。
「こんな所で変なことしないでくれよ。」
そう思いつつ祐也は少し覗いてみるとそこには香里の姿があった。
「急に呼び出して、何のようですか?」
いつもの感じとは違い穏やかに香里が話し出す。
「あの、その...」
相手の男子はかなり緊張している模様。これはどこからどう見ても告白をしようとしている。
「良かったらその、次の土曜日美味しいパンケーキ屋さんがあるので一緒に行きませんか?」
彼は緊張しながらもなんとか言い切った。
「確かに直ぐに付き合うことは無理だが何かに誘うのはありだなと」祐也は感心していた。しかし、祐也は結果を知っていた。
「ごめんなさい。その日はどうしても欠かせない用事があるの。」
「なら、他の日はどうですか?」
必死に彼は食らいついた。だが、「ごめんなさい」の一言だけしか返ってこなかった。そうして、彼は俯きながら屋上を去っていった。
「可哀想にな彼。他の日ぐらいなら行ってやればいいのに。」
祐也はノンノンのと出てきて言った。
「別に行きたくないわけじゃないわよ。ただ、行けないだけよ。」
「それぐらいは何とかするのによ。」
祐也は念を押すように言うが香里は首を横に降り答えた。
「それでもよ。それでも私は行けない。」
「そうか。今日もあるんだからちゃんと来いよ。」
祐也が言い終えると同時に学校にチャイムの音が鳴り響き昼休みが終わったことを告げた。