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むしろツンドラ

オレとツレの格差問題

作者: 園橋のぎ
掲載日:2017/03/03

「ずるい」

 向かい合って、オレは膝立ちの姿勢で奴の顔を眺めてたら、本音がぽろっと口に出た。

「なんかさー、お前ってずるい」

「いや、そう言われてもな」

 唐突過ぎるオレの言葉に、ツレがおきれいな顔で苦笑する。

 うむ、今日もそんな表情しようが問答無用でイケメンですね。何なのコイツ。

 何かあったのか、とか心広い言葉をほざくツレを眺め、オレは指折り数えてみる。

「背高いじゃん? 足長いじゃん? 顔良いじゃん? んでもって、器用だし、頭良いし、何でも作れちゃうし、料理もできるし、性格実は結構良いし」

「実は、って」

「ちょっと意地悪いけどさ、良い奴じゃん、お前」

「お、おお……ありがとう?」

「何なの」

「は?」

「お前、少女漫画のヒーローなの? や、少女漫画のヒーローはもっとめんどくさい奴多いけど」

「お前、本当にああいうの苦手なんだな」

「履歴書に自分のプラスポイント書くのに、山ほどありすぎて困ります、ってか?」

「そんなことは考えたこともねぇよ」

「ずるい」

「そう言われてもな……」

「顔とか、そういうのもお前が努力した結果だってわかってるけど、ずるい」

「どう、ずるいんだ?」

「だって、惚れるしかないじゃん」

 ブッ、とツレが噴出した。

 顔にかかったので、拳でどついておいた。

「お、お前、な……」

「なんか、オレばっかお前の事好きみたいで腹立つんですけど」

「あのな、そんな訳ないだろう」

 俺がどれだけお前の事好きなのか、知ってるだろ、とかツレがほざく。

 うん、まあ、それは聞いてますけど、

「……まだ偶に、お前がオレのことひっかけてるんじゃないかって気がする」

「まだ?!」

「偶に」

「いや、いい加減信じてくれよ。泣くぞ」

 そんなこと言われてもなー。だって、こちとら好かれる理由がこれっぽっちも見当たらんのだもん。

 オレはよっこいせ、とツレの足の上に腰を下ろす。

 座ってても身長差のせいで、顔を見上げると首が痛い。

「あのさ」

「何だよ……信じてくれたのか?」

「好き」

 おお、ツレが赤くなった。何コイツ、こんなんで顔色変わるとか大丈夫か?

「お、俺も……愛しているぞ」

「オレは惚れてますけど、なんか文句ある?」

「あるわけないだろ」

「ケッ、こんな貧弱もやしに惚れられてるとか鼻で笑うぜプークスクス、とかならんの?」

「むしろ、嬉しすぎてどうにかなりそうだ」

「……お前ってさ、絶対趣味可笑しいよな」

「冷たい反応ですね、奥さん」

「温かいところにも惚れてますよ、旦那さん」

「ぐっ」

 何やら顔を覆ってしまいましたね、旦那さん。

 耳が赤いですぜ旦那さん。

 いや、まあ、あんまりそっちのことばっか言えませんけど。たまにはまあ、考えてること素直に伝えてみようかと思って話してるけど、なんだろう、すげー恥ずかしいんですけど。

 ううう、と唸ってると、ツレのでっかい手で顔を挟まれた。

「なあ奧さん、何がそんなに不安なんだ?」

「……そのうち、気が冷めたりとかする気がする。お前の」

「この年齢になるまで、ずっとお前一筋だったのにか?」

「どっかから、お前のこと好きなお嬢さんとか出てくる。絶対いる。てか、今も居る気がする」

「なんだ、妬いたのか」

「妬きますよ。超妬く。オレスゲー嫉妬深くてめんどくさいの、お前知ってんだろ」

「知ってるさ」

 でも、焼きもち焼くよりも俺の事を見てくれないか、なんてイケメン台詞を吐くツレ。

 見てますとも。てか、物理的に今は顔動かせないし。

「どうやったら、お前浮気しないのかなー」

「信用無いな」

「信用してないのはオレのことですけどね……はー」

「お前のそういう僻みっぽい所、だいぶ良くなったと思ってたんだが、まだあるんだな」

「僻みますよ。僻みますともさ。お前、レベル高すぎ」

 たまに見上げてるのが疲れる。

 ふはーと溜息を吐いたら手が離れたので、オレはツレの胸にボスッと顔をうずめてみる。

 畜生、加齢臭どころかイケメン臭しやがる。

 なんなの? お前、無敵なの? 全方位パーフェクトなの? 物理無効なうえに全属性カバーなの?

「オレのー」

「ああ、俺はお前のだよ。お前も俺のだけどな」

「もふー」

「聞いてるか?」

「聞いてませーん」

「聞いてもらわなきゃ困るんだけどな」

 心配するな、とかツレが甘ったるい声で囁く。

 何を根拠に、とオレは不貞腐れて返事する。

「どこにも、お前みたいな女は居ないからさ」

「オレみたいにヘボいやつは、ってことですか」

「お前みたいに最高の奥さんは、ってことだ」

「そこまで言われる理由がさっぱり分からんのじゃー」

「俺が分かっていればいい話だろ」

「やだやだー」

「……。ああ、くそ、本当に可愛いな」

「……趣味わるっ」

 言いながらギュッとか抱き着いてみるオレは、やっぱり性格悪すぎてこいつには釣り合わない気がするけど。

 うん、まあ、良いんです。

 ごまかしでも、なんでも、今好いてくれてるなら、それで良いのだ。


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