vol3.もうろうとする猫
なんと罠から抜け出せないものかと、
身をよじってみたり、網に爪を立てたり、かじってみたりしたが頑丈な網で全く歯が立たない。
駄目だ。このままでは体力ばかりが消耗されていく。
こんな時に限ってソニアも来ない。まぁ、来たところで実体が無いから役に立たないだろうが。
ともかく、だ。
オレは状況判断を始めた。
罠を仕掛けた人間が居るってことは必ずこれを回収しに来るだろう。
まさか猫は食わんだろうから解放してくれると判断する。
・・・。
よし。待とう。
待てば海路の日和ありとも言うしな。
実際他に手立てもないのでオレは只待つことにした。
時期に罠を仕掛けた本人がやってくるさ。
だがオレは自分の見込みが甘かったことを後に思い知らされる。
1日目、良い天気だ。夜は星が見えた。
2日目、冷える。明け方には霜が降りてる。
3日目、遠くで人の声が聞こえるがこちらまでは来てくれず。
4日目、雨だ。最悪。
5日目、何故だ・・・何故回収しに来ないっ。罠仕掛けて放置ってありえないだろ!
駄目だ。腹が減って眼が回る。自慢の長い毛並みもボサボサだ。
自分の限界と闘っていると向こうの方からガサッと音がした。
ひと?・・・人だ!地獄に仏とはまさにこの事。ここから出してくれ。
オレは力を振り絞って助けを求める。
今のオレにとっては後光がさしている位に見えるその人物は罠の前で足を止めると
「こんな森の中で猫?」
と不思議そうに首をかしげる。
「まあいいか。」
そう言うと罠を外しにかかった。
オレを抱え、網から開放してくれる。
やった。長かった。正直死ぬかと思った。この恩は忘れるまで忘れない。さあ、降ろしてくれ。
「ニャーン」
ぐったりとしながら訴える。
「・・・。」
だが、そいつは無言でオレをしげしげと眺めるとおもむろに布袋に押し込んだ。
?!何っ?!
てっきり自由の身になれると考えていたオレは驚いた。抵抗を試みるが疲労と空腹で身体に力が入らない。
暗い袋の中。
そういえば遥か東の方では猫を食べる食文化があったってソニアが言っていたなぁ・・・。
薄れ行く意識の中でオレはそんなことを考えていた。
読んでくださってありがとうございます。