vol2.捕らわれの猫
ソニアのオレへの頼み事は一つ。
金の眼をした人間を探してこいというもの。
彼女はオレにその人物が居るであろう町の名を示した。
つくづく不思議な女だ。
どこからともなく現れて、占い師のように予言めいた事を言って俺に指図する。
そうしてその様に行動すれば大抵当たるのだから面白い。
ソニア曰く『夢で見る』らしい。予知夢というやつだろうか、おれにはよくわからない。
分からないと言えばソニアの姿は人間には見えていないようだ。
ソニアが何かしても、何を言っても周りの奴らは全く意に介さない。
一度、幽霊なのかと問うてみたら、ちゃんと生きていると怒られてしまった。
じゃあ生霊なのかと訊いたら、そういういわれ方は気持ちよくない。
でもやっぱりこの状態って生霊になるのかしら。いや、でも。あ・・・。だけど。
等と一人でぶつぶつやりはじめたからその時はなんだかうやむやになった。
そういうワケでオレはソニアが何者なのかよくわかっていない。
まぁ、いい退屈しのぎになっているから何者でも構いはしないが興味はある。
そのうち正体をつきとめてやろうと思っているが今は“金の眼”を探すのが先だ。
ソニアが示した西の町カトプールは森を抜けた処にある小さな町で、港があり漁業が盛んだ。
きっと旨い魚が味わえるに違いない。
オレはカトプールに早く着きたくなって林道をそれて森の中へ入った。
林道に沿って歩くより森を横切った方が近道だ。
あじか吉次か。やっぱり鯛かそれとも・・・。
?!!!!
「フギャッ!!!」
ガサッという音とほぼ同時にオレの情けない泣き声が森にこだまする。
一瞬何が起こったのか分からなかった。
辺りを見回すと視点が高くなっている。宙吊りになっている様だ。更に身体が網に包まれていて身動きも思うように出来ない。
罠だ。ウサギか何かを捕まえるための罠に掛かったらしい。
木の枝に吊り下げられた網に、くるまれたオレがプラーンとしている状態。
なんとも情けない。
魚のことばかり考えてたのがいけなかったのか、それとも前回運命を廻す猫だなんて調子に乗ったのが悪かったのか。
うっそうとした森の中で助けを呼んでみる。
「ニャーーーン。」
・・・。
誰も、何も現れず細い鳴き声が響いただけだった。
どうなるの?オレ。
読んでくださって有難うございました。